爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

科学全般

「星屑から生まれた世界」ベンジャミン・マクファーランド著

何か文学的な題名ですが、中身はかなり専門的な化学と進化の話です。 副題が的確にその内容を示しており「進化と元素をめぐる生命38億年史」というものです。 地球上に生命が生まれ、それが進化を続けて現在に至っているのですが、そこには地球に存在してい…

「台風についてわかっていることいないこと」筆保弘徳編著、山田広幸・宮本佳明・伊藤耕介・山口宗彦・金田幸恵著

台風のシーズンになると気象庁などの発表でかなり先の進路や強度まで予測されているため、もう台風については何でも分かっているかのように考えがちです。 しかし、この本の著者に名を連ねる台風の一線級研究者によれば、まだまだ分からないことだらけという…

リスク学者永井孝志さんのブログより「若者でもコロナで重症化することがある、死ぬ可能性はゼロではない」という論法はなぜダメなのか?

永井孝志さんのブログから最近の報道姿勢についての問題点が指摘されています。 nagaitakashi.net ニュースなどでよく目にする「10代の若者が基礎疾患が無いのにコロナ感染で重症化して死亡」という記事ですが、それの何が問題なのかということです。 それは…

「SNSなどのプラットフォームはトンデモ科学発言にどこまで責任をもつべきか」永井孝志さんのブログより。

リスク学者の永井孝志さんのブログはよく参考にさせていただいていますが、今回の「SNSの責任とトンデモ科学」は直接リスク学に関係するものではないにしても、現状のネットの問題点について触れられたものでした。 nagaitakashi.net どうもこういった現状に…

「ヘンな科学 イグノーベル賞研究40講」五十嵐杏南著

本家ノーベル賞に対し、人々を笑わせしかしちょっと考えさせられるものに対して贈られるイグノーベル賞というものがあります。 受賞の時期には話題となることもあるのですが、日本人がけっこう受賞しているということでも知られています。 そのようなイグノ…

「ダムと緑のダム」虫明功臣、太田猛彦監修

山に樹木を植えることで「森のダム」を作ると言ったことが言われます。 それで豪雨の際も山に水を貯え、下流の増水の被害が軽減されるといった印象があります。 しかし一方では最近の豪雨災害では、山の樹木が土砂崩れと共に流されて流木となり、洪水の被害…

「化石燃料不使用認証制度」の創設のススメ

EUが「グリーンな投資先」として原子力や天然ガスを認定するなど、「グリーン」すなわち持続可能性というものの解釈には混乱(というよりは欺瞞)が溢れているようです。 またその目的は怪しいものではあるものの「石油などの化石燃料を使わない」ということ…

持続可能性を妨げるものは何か その2 エネルギー

持続可能性を妨げるものは何かということで、その1では「資源の持続を考えていない」ことについて書きました。 そういう意味では最も大きな問題がエネルギーです。 完全に持続できないものの代表のような化石燃料エネルギーに依存しているのが現代の文明で…

「おもしろくても理科」清水義範著、え・西原理恵子

小説家で多くの作品を書いている清水さんですが、エッセイも多く、この学科シリーズも何冊も発行しています。 この「おもしろくても理科」は、おそらくは大多数を占めるであろう文系と言われる人々に理科(物理・化学・生物など)を面白おかしく解説しようと…

「結婚の遺伝学」田中克己著

「結婚の遺伝学」と題されていますが、内容はほぼ遺伝する病気に関するものです。 本書はかなり古い本で、昭和43年(1968年)初版発行です。 著者の田中さんは当時東京医科歯科大学医学部教授で、遺伝学が専門であった方です。 現在も続いているようで…

「〈どんでん返し〉の科学史」小山慶太著

昔は迷信のような旧説がはびこっていたのが、徐々に科学的な新説が現れて取って代わり、今のような現代科学が成り立ってきたと言うのが一般的なイメージでしょう。 これは、特に子供向けの科学史解説などではすっきりとした説明をするためにあえて強く採用さ…

「わさびの日本史」山根京子著

わさび(山葵)と言えば刺身や寿司には欠かすことのできないものであり、いわば和食というものを支えているかのような存在です。 しかし、わさびがいつ頃から日本人の食に彩を添えるようになったのか、よく分かっていないようです。 そのような「わさびの歴…

「言葉はいかに人を欺くか」ジェニファー・M・ソール著

本書副題に「嘘、ミスリード、犬笛を読み解く」とありますが、「嘘、ミスリード」が本書大部分の主題となっています。 ただし、著者のソールさんは「言語哲学者」であるということで、その論理はあくまでも厳正で緩みはなく、細かい点まで検討し尽くすかのよ…

南海トラフの海底に摂氏120度でも生育している微生物

南海トラフの海底を掘削する研究が行われたそうですが、そこから多数の微生物が検出されたそうです。 www.gizmodo.jp そこの温度は120℃以上、非常な高温でありそのような環境に生物が生育できるというのは驚きです。 これまでも高温細菌や超高温細菌といった…

「リスク評価はファクトではない その2」リスク学者永井孝志さんのブログより。

永井孝志さんのリスク学に関するブログでは、リスク学というものについての基本的な概念についても繰り返し解説されています。 「リスク評価はファクトではない」その1については紹介しましたが、続いてその2が公開されました。 nagaitakashi.net ここでは…

「栄養を科学するブログ」より「食を測ることの難しさ」

栄養疫学研究者の村上健太郎さんたちが書かれているブログ、「栄養を科学するブログ」で「食を測ることの難しさ」という記事が出ていました。 kmnutri.com 人間は食物を食べることで生きているのですが、その食べ方の状況によって健康を損なったりすることも…

生物多様性を守ろうなどと簡単に言うけれど、その覚悟は大変なものだということ。

SDGsの中でもうたわれている、「生物多様性」ですが、それがどういったものか、認識は進んでいないものと思われます。 sdgs.media SDGsの17の目標の中で、生物多様性に関係するのは主に14、15の「海・陸の豊かさを守ろう」というところでしょう。 これ…

「地球科学者と巡る ジオパーク日本列島」神沼克伊著

ジオパークは世界遺産と同様にユネスコによって推進されている運動ですが、世界遺産ほどの知名度は無いようです。 しかし、日本列島というのは地学的な眼から見るとその様々な現象が集まっているかのような場所であり、2021年の時点で世界遺産認定が23である…

「人口減少社会のデザイン」広井良典著

千葉大学から現在は京都大学に移られている広井さんは科学哲学、公共政策といった分野の研究者ですが、「定常社会」というものについて書かれているものがあり注目しています。 この本では「人口減少社会」というものをどういう風に考えていくかということを…

「言語学バーリ・トゥード」川添愛著

「バーリ・トゥード」とはポルトガル語で「なんでもあり」を意味するそうで、ブラジルで流行していた格闘技の名前だそうです。 この本は言語学者の著者が、言語学についてユーモアたっぷりのエッセーを書くというもので、東大出版会の月刊冊子「UP」に連載さ…

「GIS 地理情報システム」矢野桂司著

かつては地図といえば紙のものだったのですが、今ではデジタル地図が便利に使えるようになってきました。 このようなデジタル地図を支えている技術がGIS、地理情報システムというものです。 これを駆使することで、ビジネスや行政も効率的に運用できるように…

富士山周辺でやや大きい地震発生、「富士山噴火と直接の関係はない」とは言うけれど。

富士山周辺でやや大きい地震が発生、気象庁は「富士山噴火と直接の関係はない」と会見で発表しました。 www.nikkansports.com しかし、政府や行政、いわゆる専門家などの言うことは「疑ってかかる」という美徳?を持つ私ですので、本当かどうか調べてみまし…

「美しすぎる地学事典」渡邉克晃著

地球では地底のマグマの動きと豊富な水の循環によって多くの風景が作られています。 非常に美しい風景というものの作られた成因は実は地学的な動きによって出来上がっているということでしょう。 この本ではそういった美しい風景写真を並べ、それがどういっ…

リスク学者永井孝志さんが「予防原則」について解説

いつも参考にさせていただいている、「リスク学」の永井孝志さんのブログで、「予防原則」について解説されていました。 nagaitakashi.net 私もこの「予防原則」という言葉が非常に安易に使われていることにはこれまでも何度も取り上げています。 「何らかの…

「絵と図でわかる データサイエンス」上藤一郎著

ビッグデータなどと言う言葉がニュースを飛び回るようになっていますが、内容についてはそれほど広くは理解されていないようです。 データを扱う「データサイエンス」という分野もそれが何であるかということはあまり考えられていません。 多くの人はデータ…

「トンデモ科学を撲滅せねばと思う前に考えること」リスク学者永井孝志さんのブログより。

リスク学者永井孝志さんのブログのリスク論は非常に興味深いもので、毎回参考にさせていただいていますが、今回は少しリスクとは離れて「トンデモ科学」論です。 nagaitakashi.net まだかなり大きな問題となっていますが、「反ワクチン論」というものがあり…

結婚はリスクなのか、リスクを下げるのか、リスク学者永井孝志さんのブログより。

リスク学者永井孝志さんが書いているブログで、興味深いことが書かれていました。 「結婚とリスク・幸福」ということです。 結婚がリスクなのか、幸福なのか、あまりそういったことは考えたこともないので、意外な気もします。 nagaitakashi.net結婚も含め、…

新型コロナウイルスの飲み薬、パクスロビドの解説

ファイザー社が開発中の新型コロナウイルス感染症の治療薬、パクスロビドが中間解析結果で有効性ありということで、この後アメリカで緊急使用申請が行われるそうです。 この薬について、また忽那賢志さんが解説記事を書いています。 news.yahoo.co.jpすでにM…

厚労省が「エアロゾル感染」認めるって、何を今さら。

新型コロナウイルスの感染は専門家は「エアロゾル感染」すなわち、いわゆる「空気感染」であると繰り返し主張していたにもかかわらず、厚労省はかたくなに「飛沫感染」と「接触感染」だと言い張ってきました。 しかし、ようやく「エアロゾル感染」もあるとい…

「核のゴミ 『地層処分』は10万年の安全を保証できるのか?!」古儀君男著

原子力発電所から出る強い放射線を出す「核のゴミ」はその処分方法がきちんと固まっておらず、論議を呼んでいます。 この廃棄物は10万年以上は強い放射線を出すため、その期間は地中深くに埋めるという、「地層処分」を目指していますが、その候補地はまった…