爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

読書記録

「幻想の『技術一流国』ニッポン」内橋克人著

経済学者の内橋克人さんは昨年お亡くなりになりましたが、多くの著書を発表してきました。 その最も活躍された時期に「ニッポンの技術力」の問題点を厳しく指摘したのがこの1982年に刊行された本です。 当時は数多くの貿易摩擦を引き起こした対米輸出も繊維…

「宇土半島私記」久野啓介著

著者の久野さんは専門の著述業ではないのですが、熊本の地元新聞の熊本日日新聞に長く勤め最後は常務まで昇進され、退職後は熊本近代文学館長なども歴任されたという方です。 熊本市に産まれたものの家庭の事情で母上の出身地である宇土に幼児の頃に転居、そ…

「悲しい曲の何が悲しいのか 音楽美学と心の哲学」渡河亨著

題名の最初の文字だけで判断し、音楽の表現などについて書かれた本かと思って図書館から借りてきましたが、その後の「心の哲学」の言葉通り、非常に「哲学的」な本でした。 難解極まりないというものでした。 著者の渡河さんは美学や心の哲学が専門と言う哲…

「ハウ・トゥー バカバカしくて役に立たない暮らしの科学」ランドール・マンロー著

かつてはNASAのロボット技術者だったがその後著述業に転進したという著者が、暮らしの様々な要望に対し、非常に壮大で科学的な解決策を提示します。 ただし、そんな解決策はほぼ不可能ですしやったら大変なことになる場合も多そうです。 暮らしの要望自体は…

「気候変動と『日本人』20万年史」川幡穂高著

かつての歴史学界では気候変動のことを持ち出すと批判されていたということですが、最近の研究では明らかに気候変動により大きな社会変動が同調して起きていたことが分かってきています。 当然の話で、気候変動は食料生産に密接に関係するはずであり影響がな…

「宗教改革の真実」永田諒一著

キリスト教の宗教改革は1517年にドイツの修道士マルティン・ルターが、当時蔓延していたローマ・カトリック教会の贖宥状(免罪符)販売を糾弾する「論題」という書状をヴィッテンベルクの教会の扉に張り出したことで始まったと言われています。 そこから多く…

「粋を食す 江戸の蕎麦文化」花房孝典著

食べ物で江戸(東京)の名物とされてきたものには鮨、天婦羅、うなぎ蒲焼、そして蕎麦が挙げられます。 しかし先の3つはどれも江戸湾で上がった魚などが食材となっており、だからこそ「江戸前」と言われていました。 それに対し蕎麦は江戸時代であっても江戸…

「不良少年の映画史」筒井康隆著

筒井康隆さんはSF作家として名を成しましたが、演劇が非常に好きであり自らも映画俳優を目指して映画会社の募集に応じた経験もありました。 そのような映画好きというものは非常に幼い頃から築かれたものであり、幼児の頃から家族に連れられて見に行った経験…

「さすらいの仏教語」玄侑宗久著

仏教から出た言葉は今もかなり多く使われています。 しかし中には元の意味から遠く離れている言葉も多いようです。 そういった、原義とは大きく変わってしまった言葉を「さすらい」と表現し、解説しています。 退屈という言葉ももとは仏教からというのは知ら…

「音楽劇の歴史 オペラ・オペレッタ・ミュージカル」重木昭信著

音楽を劇の重要要素として取り入れている音楽劇というものは、現在でもオペラやミュージカルとして人気があります。 しかしオペラはクラシック音楽として扱われ、ミュージカルの多くはポピュラー音楽ですが、そこにや共通の性質があるようです。 そのような…

「無国籍と複数国籍」陳天璽著

著者の陳さん、名前は難しいですが愛称はララさんということですが、現在は大学教授の傍らNPO法人無国籍ネットワークというところの代表理事をなさっているそうです。 陳さん自身、中国出身のご両親が横浜中華街にやってきてから生まれた日本生まれですが、…

「歌う国民」渡辺裕著

「歌う国民」といっても、昨今のカラオケで老若男女問わずにマイクを握るという状況は触れていません。 本書副題にもあるように「唱歌、校歌、うたごえ」で表される、明治時代から昭和前期くらいまでの歌をめぐる状況について語っています。 本書冒頭に取り…

「深掘り!日本の地名」宇田川勝司著

著者の宇田川さんは長年中高で地理を教え、退職後は地理教育のコンサルタントをされているということです。 人の住むところ必ず地名というものがありますが、日本では定住して農耕をしてきたためか地名との関係が特に強いようです。 日本人の名字の多くは地…

「鉄道トリビア探訪記」野村正樹著

著者の野村さんは作家ですが、子どもの頃からの鉄道ファン。 それを口にしていたら民営鉄道協会というところから広報誌への執筆を依頼されてしまいました。 そういう事情なので普通では入ることのできない場所での取材もOKということになり、様々な状況を実…

「『人望』の研究」小和田哲男著

小和田さんは戦国時代が専門の歴史学者ですが、一般向けの本も多数書かれており、また歴史ドラマの時代考証を担当していることでも有名です。 この本では歴史上の人物の生き方を参考に、「人望」ということについてあれこれと記しています。 「あの人には人…

「オリンピック 反対する側の論理」ジュールズ・ボイコフ著

著者のボイコフさんは現在は大学の政治学教授ですが、もとはサッカー選手でバルセロナ五輪には米国代表として出場したこともあります。 しかしその後は反オリンピック運動に参加するようになりました。 2020東京オリンピックではちょうど蔓延していた新型コ…

「地図でたどる世界交易史」フィリップ・パーカー著

交易というものは人類が定住し文明を開いてきたかなり早くから行われてきたようです。 それはグローバル世界と言われるようになった最近ではさらに重要度を増しています。 そういった交易というものの歴史を目で見たらどう感じるか。 歴史上の人々もそれを思…

「模倣の罠 自由主義の没落」イワン・クラステフ、スティーヴン・ホームズ著

「模倣」とは何を示すのか。 それは1989年に冷戦が終了し、一見して欧米の自由主義と民主主義が世界を覆ったかのような時代となりましたが、その後の世界では旧共産圏などを中心にアメリカを「模倣」して自由民主主義を取り入れていくこととなりました。 し…

「悪あがきのすすめ」辛淑玉著

悪あがきというとあきらめが悪くじたばたとするというイメージもあります。 金も権力もある者が悪行がバレてもう衆目にも明らかなのに何のかのと言い逃れようとしているのも見苦しいものです。 しかしもちろん辛さんが言っているのはそういう連中の話ではあ…

「信長政権 本能寺の変にその正体を見る」渡邊大門著

渡邊さんの本は何冊か読んでいますが、室町時代から戦国時代を専門とし、あくまでも信頼のおける一次史料の記述を中心に考えるという原則を守っているようです。 この本では本能寺の変を起こした明智光秀について確実な情報のみを選び出し、一般に信じられて…

「ちいさい言語学者の冒険」広瀬友紀著

母語というものは乳児の頃に周囲の人々が話していたから身に付いたということでもないようです。 徐々に言葉を話すようになると、たいていの子どもでは「かわいい言い間違い」ということをするのは親なら経験があるでしょう。 それが実は、子どもが言葉を覚…

「東京鉄道遺産100選」内田宗治著

ユネスコの世界遺産というものが有名ですが、それに倣って色々な「○○遺産」というものが選定されています。 国が指定する国宝・有形文化財といったものも同様でしょう。 日本の鉄道も150年が経ち、まさに遺産というべきものもあります。 ただし、現在のとこ…

「現代に共鳴する昔話 異類婚・教科書・アジア」石井正己著

著者の石井さんは民話などを研究してきた民俗学・日本文学研究者です。 この本は昔話につながる色々な問題を詰め込んだようなもので、昔話とその研究者たちの抱えるものがあれこれと語られています。 副題にもなっている異類婚という言葉を聞くと何か恐ろし…

「ミャンマー『民主化』を問い直す」山口健介著

ミャンマーでは選挙によって選ばれたアウンサンスーチー率いる国民民主連盟(NPD)政府が国軍によるクーデターで倒されました。 それに抗議する市民に対する弾圧も激しく多くの人々が亡くなったということです。 しかし、それでは軍部の政権を倒してNPDによ…

「身近な漢語をめぐる」木村秀次著

現代の日本語では元来のヤマトコトバより漢字渡来以降の漢字を使った言葉(これを漢語としています)の方が数多く使われているようです。 そのような漢語について、漢文学、国文学が専門の著者があれこれと思い当たるところを綴っています。 なお、漢語とい…

「昭和三十年代演習」関川夏央著

少し前に「Always 三丁目の夕日」という映画が作られかなりヒットしました。 その客層には印象深い現象があり、20代と年配の客にはっきりと二分されその中間の年代がほとんどいないというものでした。 若い世代は自らはまったく知らない過去の物語で、何とな…

「検証 安倍イズム」柿崎明二著

最近狙撃され絶命、それからも色々ととりあげられることの多い安倍さんです。 それまでの自民党の総理と違い確かに非常に意志のはっきりした政策を打ち出してきたように見えます。 そのような安倍政治について、共同通信の論説委員の著者が2015年、安倍政治…

「酒池肉林 中国の贅沢三昧」井波律子著

酒池肉林といえば、中国古代の殷王朝の最後の王、紂王が池を掘って酒を満たし、木に肉を掛けて宴会をしたという、贅沢を表した言葉です。 そういった、王や皇帝の贅沢の他にも、貴族の贅沢、商人の贅沢など様々なものがあります。 ただし、中国の場合はその…

「道を見つける力 人類はナビゲーションで進化した」M・R・オコナ―著

最近はGPS機器の発達でスマホを手にすれば完璧なほどの道案内ができるようです。 しかしほんの少し前、人類が荒野を歩き回り獲物を探していた時代にはGPSなどなくても狩場から家族のもとに帰らなければならず、それを誰もがやっていたはずです。 本書著者の…

「免疫学の基本」松本健治監修

感染症流行が止まらないためか、テレビを見ても「菌が・菌が」の大合唱の次によく出てくるのが「免疫力を強めるために何々(健康食品など)を」といったコマーシャルが溢れています。 しかしその割に免疫というものについて、ちゃんと知っているという人はほ…