爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「〈どんでん返し〉の科学史」小山慶太著

昔は迷信のような旧説がはびこっていたのが、徐々に科学的な新説が現れて取って代わり、今のような現代科学が成り立ってきたと言うのが一般的なイメージでしょう。

これは、特に子供向けの科学史解説などではすっきりとした説明をするためにあえて強く採用されている印象かもしれません。

そういった、旧説と言われる、錬金術や天動説、カロリック、エーテル、自然発生説などはすべて葬り去られ、忘れられてしまったのでしょうか。

そう簡単な説明では済ませることはできないようです。

 

そのような科学史について、物理学が専門の早稲田大学教授の小山さんが解説をしています。

そのためか、はやり物理学分野の記述が多いようで、生物の自然発生説は最後に少し触れられているだけでした。

 

錬金術といえば卑金属から金を取り出すという、夢物語のような話ですが、それに対しては非常に多くの人々が関わっており、中には詐欺師が王侯貴族から多額の資金を騙し取るなどという事件も頻発しています。

またニュートン錬金術には大きな興味を示しており、残された遺品の中の原稿には物理学の問題よりはるかに多くの錬金術の記述があり、彼の主要な興味はこちらにあったということが判ってきました。

 

しかし科学技術が進歩してくるとそのように元素の種が変わるような化学反応というものは不可能だと言うことが理解されてきます。

ところが、さらに物理学が進歩してくると元素種の変換ということが起こりうるということが判ってきました。

核融合核分裂というものです。

化学反応というものは原子の中でも最外殻の電子が動くというもので、比較的低エネルギーで起こりうるものです。

しかし、核反応は原子の中心の原子核に働きかけるものであり、比べ物にならないほどの高エネルギーを必要とします。

そのためにかつては全くそれを調べることも不可能だったのですが、核反応の研究が進みそれを利用することができるようになれば、元素の変換ということも見ることができるようになりました。

これはまさに錬金術の実現とも言えるものかもしれません。

 

地球が宇宙の中心であるという天動説は、その後太陽が中心だという地動説に取って代わられました。

しかし、宇宙の概念がどんどんと拡張してくると「太陽が中心」などではないということも分かってきます。

太陽は宇宙の中心で決して動かないなどと言うことはなく、銀河系の中で他の恒星たちと共に動き回る一つの星に過ぎないということが判ってきました。

さらに銀河系も固定した中心の回りを廻っているわけではなく銀河系すべてが動いているということも判りました。

そこまで考えると天動説というのもローカルな宇宙の一部を考える上では有効な手段であったとも言えるものでした。

 

生物は自然に発生するというかつての定説は、多くの生物学者が努力して実験を繰り返し、生物には必ず親があるということが示されました。

しかし、根源的には必ずどこかに「生物の始まり」があったはずです。

その生物は「自然に発生した」と考えなければなりません。

それは「自然発生説」ではないのか。

最初だけの例外として見るということで良いのか。

答えはそれほど簡単には出せないようです。