爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

科学全般

「偏見や差別はなぜ起こる?」北村英哉、唐沢穣編

偏見や差別といったものは、社会の中で無くなることはなくあちこちに顔を出します。 それはいけないことだと思っている人にもその種は心の奥底に潜んでいるということは普通です。 その原因や対策についての研究ということは様々な方向から行われてきました…

「おバカな答えもAIしてる」ジャネル・シェイン著

AI、人工知能の進歩はすばらしく、人間の仕事の大半を奪うとか、AIが自動的に発達していくとか、バラ色?の未来予想が出てきます。 ただし、どうやらそういった予想をしているのは、AI関係者といっても経済的に関係のある人々のようで、AI技術を直接担当して…

機能性表示食品の臨床試験について、児林聡美さんが研究論文紹介

FOOCOM.NETで児林聡美さんが機能性表示食品の臨床試験実施の状況について調査した研究論文を紹介していました。 foocom.net機能性表示食品では実際に臨床試験を自分で行わなくても届け出だけで表示可能ですが、試験を実施してその結果を出すこともできます。…

「プルーストとイカ」メアリアン・ウルフ著

本書の題名を見ても何のことかほとんど分からないと思いますが、副題を見れば少しは想像できるかもしれません。 それが「読書は脳をどのように変えるのか?」 つまり言語の伝達の手段として文字を発明して以来、どのように脳が改変されたかということを論じ…

「デジタル馬鹿」ミシェル・デミュルジェ著

今の若年層は「デジタル・ネイティブ」だなどと言う浮かれた言説が為されることがあります。 つまり、生まれた時からデジタル機器でネット接続が当たり前で、その環境からデジタルへの適合性が高く、プログラミングなども得意といったイメージでしょう。 し…

「人口知能プロジェクト 『ロボットは東大に入れるか』第三次AIブームの到達点と限界」新井紀子、東中竜一郎編

本書編者でもある新井紀子さんの本はなかなか興味深く衝撃的な内容でした。 sohujojo.hatenablog.comそこで扱われていた「東大入学ロボット」のプロジェクトと「全国読解力調査」プロジェクトの、詳細な技術的背景を説明したのが本書です。 その内容はかなり…

「調べるチカラ 『情報洪水』を泳ぎ切る技術」野崎篤志著

インターネット接続が当たり前となり、様々な情報に触れることができるようになりましたが、その情報というものが実際にはどういうものなのか、それがはっきりとはしていないようです。 そのような「情報過多時代」の中で、 「検索エンジンで色々なキーワー…

「読解力」とは何か。

新井紀子さんなどが中心となって進められた「東大入試をロボットに受けさせる」プロジェクトから派生した「読解力調査」というものが非常に興味深い結果を出しました。 それによると現在のAIもまだ複雑な文章を読むこともできず、「AIが人間の仕事を奪う」な…

「まじめにエイリアンの姿を想像してみた」アリク・カーシェンバウム著

地球外生命体というものはいるのかどうか、まだ分かりませんが、地球と同じような環境といえる惑星が無数に存在しそうだということが分かってきており、その中には生命を育んだところもあるかもしれません。 そういったエイリアンというものは、SFの中では以…

「津波災害 増補版」河田惠昭著

本書初版が出版されたのは東日本大震災の3か月前、それに書いたことが現実となったことに大きなショックを受けたそうです。 それからは政府の会議や調査会に参加しました。 今後も南海トラフ地震などで大きな津波被害が起きる危険性が強いため、初版に大き…

「新版 日本人になった祖先たち」篠田謙一著

日本人がどうやって成立してきたか、それを扱った篠田さんの前著は読んで書評も書いていますが、この分野でのDNA解析技術の進歩は甚だしいもので、どんとんと新たな知見が得られているような状況です。 それを基に現状での知見をまとめてみようということで…

「分水嶺の謎」高橋雅紀著

分水嶺とはその山を境に別々の方向へ降った雨が流れていくというもので、その印象から一般でも使われることのある言葉です。 しかし地形学上は厳密に定義されているもので、また明確に見分けのつくものですから全国でその存在もはっきりしています。 この本…

読解力というものは教育できるのか、打開策はあるのか。

AI学者の新井紀子さんという方の書いた本は衝撃的な内容でした。 sohujojo.hatenablog.com新井さんはコンピュータが大学入試を突破できるかというプロジェクトを主宰しましたが、選択式の私立大学などの問題はある程度できるとしても記述式の国立大特に東京…

「ウイルス学者さん、うちの国ヤバいので来てください。」古瀬祐気著

著者の古瀬さんは新型コロナウイルスパンデミックの際にはクラスター対策班の一員として活躍したのですが、結構名前も売れたもののそのために誹謗中傷にもさらされたという経験をお持ちです。 医学部卒で医師でもあるのですが、いろいろと多彩な経験をしてい…

「遺伝子が語る 免疫学夜話」橋本求著

パンデミックの強烈な印象が強く、免疫というものに対する意識も広まっています。 そのためか、テレビCMなどでも「免疫力を強める」といった言葉を耳にすることが多いようです。 しかし実際に「免疫」というものについて知っているという人はほとんどいない…

いわゆる「脱炭素化」技術のどこがおかしいのか。 その3

ここがいわゆる「脱炭素化技術」の矛盾がもっとも激しいところです。 あまりにも二酸化炭素温暖化の危害を強調し過ぎたことにより、「二酸化炭素を排出しなければ良い」という方向に短絡してしまい、その裏でエネルギーや金属資源などを無駄使いすることにつ…

「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」新井紀子著

AIがもう人間を追い越すとか、AIが人間の仕事を奪うとか、そういった話が飛び交っています。 将棋ソフトがプロ棋士に勝つことができた、もうシンギュラリティ(技術的特異点)はすぐそこだ、などということが言われます。 しかし本書著者の新井紀子さんは数…

いわゆる「脱炭素化」技術のどこがおかしいのか。 その2

結局、連続した長編記事になってしまいそうです。 2,移動手段 2-1 電動自動車(蓄電池を積んだもの) いわゆるEVというのですね。ヨーロッパがお気に入りのようで内燃車を早く廃止し切り替えようとしていますが、そのほとんどの生産国は中国、アメリカ…

いわゆる「脱炭素化」技術のどこがおかしいのか。 その1

気候変動を引き起こす二酸化炭素温暖化を防ぐためと称して「脱炭素化技術」というものがあれこれと開発されています。 しかしそのほとんどは根本的な理屈が合わないものや、全く実用化不可能としか言えないものなどです。 このブログでは、そういったことを…

「なぜオスとメスは違うのか 性淘汰の科学」マーリーン・ズック、リー・W・シモンズ著

本書の原題は「Sexual Selection」で、そのまま訳せば「性淘汰」となります。 しかしselectionはふつうは選択と訳されることが多いようです。 ただし、生物学用語としてはchoiceも選択と訳されることがあります。 そのため、本書ではselectionの訳として「淘…

「きみに脳はなぜ『愚かな選択』をしてしまうのか 〈意思決定の進化論〉」ダグラス・T・ケンリック、ヴラダス・グリスケヴィシウス著

人は色々な局面で選択をしますが、その多くは「愚かな間違い」 なんでそんなことをしてしまうのか。 そこには人類進化の過程で身に着けてきた意思決定の機構が関わってきます。 そういったことを取り扱っているのが行動経済学の研究者ですが、本書著者のお二…

「人は簡単には騙されない」ヒューゴ・メルシエ著

頻発する詐欺事件、ネットのフェイクニュース、政治的・宗教的な扇動など、人は簡単に騙されるように感じます。 しかし認知科学の専門家である著者から見ると、そういうわけではなくやはり人間というものはそう簡単には騙されないようにできているということ…

「進化を超える進化」ガイア・ヴィンス著

生物は遺伝子の変化で進化しますが、人類はかつてホモサピエンスとして誕生して以来遺伝子自体はさほど変わっていないものと見られます。 しかしその生物としての様態は隔絶したと言えるほど変化しています。 これには「進化を超える進化」があったというの…

「科学的に考える子育て エビデンスに基づく10の真実」和久田学著

子育てというものはその真っただ中にある人もそれを終えてしまった人も、迷うばかりでどうすれば本当に良いのかということが分からないままということが多いのでしょう。 そういった疑問に「科学」で答えようというのが本書です。 本書著者の和久田さんは特…

二酸化炭素温暖化よりよほど起こりそうな「火山の冬」

インドネシアでまた火山噴火が起きましたが、このところかなり大きな噴火が相次いでいるようです。 このような火山の大噴火により世界の気温が低下する、「火山の冬」ということが起きるのは良く知らていることです。 しかも二酸化炭素温暖化のようにこのま…

火力発電所のエネルギー収支(EPR)

火力発電所などのエネルギー収支(EPR)について具体的なデータがないかと思い探しましたが、かなり古いものが見つかりました。 1990年に当時の電力中央研究所所属の内山さんという方が論文ではなく総説として おそらくエネルギー資源学会の会報に掲載し…

「海洋プラスチックごみ問題の真実」磯辺篤彦著

最近はナノプラスチックが海水中にも増加しているといった話が聞かれます。 しかしその研究はまだ確実なものではないようです。 これまでのところ正確な結果が出せる研究というものは、1㎜程度より大きいプラスチック片、マイクロプラスチックのもので、そ…

「死の虫 ツツガムシ病との闘い」小林照幸著

ツツガムシ病という病気の名前はかなり有名なものでしょう。 古代から知られており、遣隋使を派遣した聖徳太子が隋の皇帝に送った国書に「恙無きや」という言葉があったということは有名でしょう。 また「つつがない」という言葉も広く使われていたものでし…

「フリースタイル言語学」川原繁人著

川原さんは言語学その中でも音声学という分野の研究者です。 音声学などといってもほとんど分からない人がほとんどだと思いますが、言葉というものが母音と子音が組み合わさってできており(日本語以外の場合、子音ばかりがつながる言葉もあるようです)、さ…

「世界史を変えた金属」田中和明著

人類文明の始まりは石器などだったのかもしれませんが、ごく初期から金属の利用を始め、現在は各種金属が身の回りにあふれているようです。 そういった金属が「世界史を変えた」ということで、歴史に沿って金属との関りをたどっていきます。 なお、著者の田…