爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

科学全般

「海洋プラスチックごみ問題の真実」磯辺篤彦著

最近はナノプラスチックが海水中にも増加しているといった話が聞かれます。 しかしその研究はまだ確実なものではないようです。 これまでのところ正確な結果が出せる研究というものは、1㎜程度より大きいプラスチック片、マイクロプラスチックのもので、そ…

「死の虫 ツツガムシ病との闘い」小林照幸著

ツツガムシ病という病気の名前はかなり有名なものでしょう。 古代から知られており、遣隋使を派遣した聖徳太子が隋の皇帝に送った国書に「恙無きや」という言葉があったということは有名でしょう。 また「つつがない」という言葉も広く使われていたものでし…

「フリースタイル言語学」川原繁人著

川原さんは言語学その中でも音声学という分野の研究者です。 音声学などといってもほとんど分からない人がほとんどだと思いますが、言葉というものが母音と子音が組み合わさってできており(日本語以外の場合、子音ばかりがつながる言葉もあるようです)、さ…

「世界史を変えた金属」田中和明著

人類文明の始まりは石器などだったのかもしれませんが、ごく初期から金属の利用を始め、現在は各種金属が身の回りにあふれているようです。 そういった金属が「世界史を変えた」ということで、歴史に沿って金属との関りをたどっていきます。 なお、著者の田…

太陽光発電の問題点はEPR計算の問題ではないかもしれないことに思い当たった。

最近、雑草Zさんと太陽光発電などのEPRについて議論をしていたのですが、どうも私の主張していた点にも穴があるように感じてきました。 それは「EPRの計算において数え落としが多すぎる」というもので、それを是正するためにも厳密な計算法の確立をすべきと…

紅麹サプリ事件、原因物質候補としてプベルル酸が浮上

小林製薬の紅麹サプリによる薬害(薬じゃないけど)事件の原因物質特定には長期間かかると言われてきましたが、突然「プベルル酸」という名前が上がってきました。 そんな化合物など聞いてこともないという人がほとんどでしょう。 もちろん、その化合物が腎…

「教養としての 日本列島の地形と地質」橋本純著

プレートテクトニクスの理論によれば、日本列島はプレートが4枚押し合っているという世界的に見ても稀な特徴を持っており、そのために地震が非常に多くまた火山も集中しています。 また雨量も多く温帯でこれだけ降水量の多いところは珍しいほどです。 そのた…

「力学入門」長谷川律雄著

力学とは物理学の一部門ですが、感覚としては物理の主要な部分であると感じます。 しかし中高でごく基礎を学び、大学でも教養でわずかに学んだだけでとても十分に理解できているとは言えませんでした。 それでこの本を読んでみたのですが、やはり理解しづら…

「ベニコウジ色素」と「小林製薬の食品原料紅麴」は別物。FOOCOM.NETで森田満樹さんが解説。

小林製薬の紅麴サプリによる健康被害はさらに広がりを見せていますが、案の定というかなんと言うか、食品添加物の「ベニコウジ色素」をも危険視する風潮が始まっており、それについて食生活アドバイザーの森田満樹さんがFOOCOM.NETで詳しく解説されていまし…

フリーラジカルも悪いばかりではない。抗酸化物質の摂りすぎも悪影響。

「フリーラジカル」といえば体の中でガンの原因となったり老化を進めたりと悪いばかりのように言われています。 フリーラジカルを抑制する効果があるとされているのが、抗酸化性物質でこれを含むと言われるサプリメントを摂取することが健康のためのように言…

NATROMさんのブログより、もしもHPVワクチンの副作用被害が大きいのならなぜWHOやCDCが問題化しないのか。

ニセ医学と戦う内科医、NATROMさんはブログで現在は「ワクチン有害視」派の平岡さんという方と論争を繰り広げていますが、その一環の記事です。 natrom.hatenablog.com 論争相手の平岡さんという方も医学関係のようですが、その主張に対しこれまでも「有害事…

「ホルモン全史」R・H・エプスタイン著

今はホルモンという言葉は広く知られており、またオキシトシンだのテストステロンなどといったホルモンの名称も聞いたことがある人は多いと思います。 しかしそのようなホルモンという物質が人体の働きを左右するような重要な役割を果たしているということは…

「『協力』の生命全史」二コラ・ライハニ著

人類という生物は「協力」をするものであり、その度合いは近い種である類人猿と比べてもはるかに多いものです。 それが他の種をはるかに超えた人類の繁栄につながったとも言えます。 ただし、他の生物種を見てみるとさらに協力するものも見られます。 そうい…

「疑似科学入門」池内了著

著者の池内さんは天文学者ですが、科学とは何かということについても何冊も本を書いています。 この本では科学とは言えない、「疑似科学」について詳しく説明しています。 疑似科学というものにはいくつかの種類があります。 それを三種に分けて論じています…

「『人間とは何か』はすべて脳が教えてくれる」カーヤ・ノーデンゲン著

昔の人は人間の思考というものが心臓で行われていると考えていたようですが、現代ではそれが脳であることを疑うものはいません。 しかし脳の働きということはそれほど理解されていないことなのかもしれません。 この本ではノルウェーの神経科学者の著者が分…

「認知バイアス事典」情報文化研究所著、高橋昌一郎監修

認知バイアスといえば行動経済学や統計の分野で人間の行動や認識に大きな影響を与えるものということで、よく目にすることが多くなっています。 そういったバイアスの事例を行動経済学、統計学、情報学の分野ごとに挙げて解説をしています。 なお、本書は「…

「内田樹の研究室」より「本の未来について」

韓国の朴先生という方からの質問に答えるシリーズが「内田樹の研究室」で続いていますが、その一つ「本の未来について」というものです。 blog.tatsuru.comこれはもちろん「紙の書籍」である「本」についてのことです。 内田さんは「本」は無くならないと見…

STAP細胞事件から10年、日本の研究不正は続く

世間の関心も集めたSTAP細胞事件のもととなった論文がNATURE誌に発表されてからちょうど10年が経ったそうです。 news.yahoo.co.jpそれについて医療ジャーナリストの榎木英介さんが研究不正の現状を書いていました。 この事件では当事者が若い女性であった…

「運動しても痩せないのはなぜか」ハーマン・ポンツァー著

太りすぎを何とかしようとして運動してもあまり効果が無いと言われます。 その理由がよく分からなかったのですが、この本では代謝学の最新の情報でそれを解説してくれます。 そこではこれまでの「運動すれば痩せる、食べ過ぎると太る」といった直感的な感覚…

寒いのと暑いのはどちらが危険か、リスク学的に永井孝志さんが見る。

永井孝志さんのブログ「リスクと共に生きるための基礎知識」で「暑さと寒さとどちらが危険か」という記事が掲載されていました。 温暖化が危険と言う声が高くなり、猛暑ともなれば毎日のように「熱中症で搬送された人が何人」といったニュースが流れます。 …

「それはあくまで偶然です。 運と迷信の統計学」ジェフリー・S・ローゼンタール著

社会の出来事というものはほとんどランダムなものであり、それでどのように影響を受けるかということは個人の運というものなのですが、人はそこに何らかの意味があると考えがちです。 本書著者のローゼンタールさんは統計学者ですが、一般向けにも発信を続け…

能登半島地震、建物倒壊はやはり耐震性次第か。

能登半島地震では建物の倒壊による犠牲者が多かったことが分かっていますが、それについて建物の耐震性の差が大きく影響したという調査結果が出たそうです。 www3.nhk.or.jp建物の耐震基準は大地震で被害が出るたびに強化されていますが、阪神淡路大震災の後…

「これからの時代を生き抜くための 文化人類学入門」奥野克己著

文化人類学というと未開の地に暮らす種族を調査し、文明社会と対比してこのような暮らし方をしている人たちもいるということを示すといった印象がこれまでのものだったようです。 しかし、様々な社会の様式を見ていくと現代の先進国社会というものの方がおか…

「文系のために東大の先生が教える バイアスの心理学」植田一弘監修

バイアスとは偏りや先入観という意味ですが、心理学的には「認知バイアス」というように使い認識のゆがみのために合理的な判断ができないことを指します。 この本ではあまり科学的な思考が得意ではない?文系の人のために分かりやすくバイアスというものを説…

「ウイルスVSヒト」」ジョン・S・トレゴニング著

新型コロナウイルスによる感染症流行COVID-19は世界的なパンデミックとなり人類社会に大きな影響を与えました。 しかし人類はこれまでもずっと様々な感染症にさらされ続けてきており、これまでの人類の多くは感染症で死亡したものと考えられます。 そのよう…

「日本人はなぜ科学より感情で動くのか」石浦章一著

科学に背を向けて精神だけで戦ったような第二次大戦に負けて日本は科学立国を目指さなければならないと悟ったはずなのに、科学がどんどんと進むと逆に一般の国民は科学が分からないという状況に陥ってしまいました。 本書著者の石浦さんは分子認知科学とサイ…

「地球に月が2つあったころ」エリック・アスフォーグ著

地球は、月は、そして火星や金星など他の惑星は、どのようにしてできたのか。 なんとなく、太陽系というものが数十億年かけてできてきたのだろうとは思いますが、詳しいことはあまり知りませんでした。 この本では惑星科学者のアスフォーグさんがかなり詳し…

「おとなのための動物行動学入門」今福道夫著

人間には知恵があり、それで行動していると考えられるかもしれませんが、実際には本能に左右されていることが多いのでしょう。 だからこそ動物の行動を調べる動物行動学の成果を見ていくと人間の行動が分かりやすいということがあるようです。 本書は動物行…

「『きめ方』の論理」佐伯胖著

著者の佐伯さんは東京大学名誉教授、認知心理学者ということですが、本書は佐伯さんとしてはかなり早い時期の著書であり1980年の出版です。 題名は平易な言葉を使っていますが、学者的な言葉でいえば「社会的決定理論」についての本であり、読むほうもそ…

「算数文章題が解けない子どもたち」今井むつみ他著

有名校進学の熱が加速する中、一方では落ちこぼれと言われる子どもたちが多く発生しています。 著者の今井さんたちは教育学者としてその問題と取り組んできましたが、広島の県教委からの依頼で小学校低学年の子どもたちの学習のつまづきの原因がどこにあるの…