爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

歴史

「日本語の発音はどう変わってきたか」釘貫亨著

日本語の発音はかなり変化してきたということは断片的には聞いたことがあり、「ハ行」の子音は古代には「パ」、中世には「ファ」と発音したなどといったことは知ってはいましたが、それ以外の多くの事実には本書で初めて触れることができました。 そして、発…

「人体ヒストリア」キャスリン・ペトラス、ロス・ペトラス著

人間が作り上げてきたのが歴史ですが、中には「人体の一部」が作り上げてしまったような場合もあります。 もちろんその人物全体が関わってきたのですが、あまりにもその「一部」が印象的であったためにそこに興味が集中するという心理は分かる気がします。 …

「リスボン大地震」ニコラス・シュラディ著

1755年11月1日万聖節の朝にポルトガル王国の首都リスボンを襲った大地震はこの都市を一瞬のうちに壊滅させ、2万5千人もの犠牲者を出しました。 大航海時代以降ヨーロッパの列強の一国として栄えていた街の破壊はヨーロッパ社会にとっては大きな衝撃…

「大獄 西郷青嵐賦」葉室麟著

小説はあまり読まないのですが、先日久しぶりに会った旧友がえらく推薦していたので試しに読んでみました。 葉室麟さんの大獄は西郷隆盛の前半生をかなり史実に忠実に書いているものと見受けました。 こういった時代小説では歴史の真実がある一方で劇的なと…

「オスマン帝国 繁栄と衰亡の600年史」小笠原弘幸著

オスマン帝国、オスマントルコという名称の方がなじみがありますが、どうやらトルコと限定はできないようです。 どうしても西洋からの歴史観に影響されますので、それにのしかかってきたようなイメージが強いのですが、近代に入ってからは逆転を果たしたとい…

「新版 日本人になった祖先たち」篠田謙一著

日本人がどうやって成立してきたか、それを扱った篠田さんの前著は読んで書評も書いていますが、この分野でのDNA解析技術の進歩は甚だしいもので、どんとんと新たな知見が得られているような状況です。 それを基に現状での知見をまとめてみようということで…

「『歴史』の意外な結末」日本博学倶楽部編

歴史上有名な人物や事件などいろいろとありますが、「その後」どうなったのかということが知られていない場合もよくあります。 「大阪城落城で死んだ淀君」など最後がはっきりしていますが(それでも異論はありますが)分からないものも数多いものです。 こ…

「ローマ帝国一五〇〇年史 絵で見るローマ人の物語」坂本浩著

古代ローマは国を建てた当初は王制、それから共和制へと移行し、カエサルの跡を継いだオクタウィアヌスがアウグストゥスとして皇帝位についたとされるのが紀元前27年で、それから東ローマ帝国が滅亡する1453年まで、約1500年がローマ帝国として続…

「物語 京都の歴史」脇田修、脇田晴子著

京都は長い日本の歴史の中で大半と言えるほどの期間、日本の中心であり続けました。 そういった京都の歴史を最初から最後までたどってやろうという本です。 とはいえ、その多くの期間ではほとんど京都の歴史が日本全体の歴史ともいえる状態であり、日本の歴…

日本人の祖先は3重構造、全ゲノム解析から。

理化学研究所、静岡県立大学、東京大学の共同研究で大規模な全ゲノム解析を行ったところ、日本人の起源が三重構造と言えることが分かったということです。 univ-journal.jp全国7地域の3000人以上のゲノムデータを解析したところ、三種に大別されるとい…

「古代北東アジアの中の日本」西谷正著

古代日本の歴史を見ていくには北東アジアすなわち朝鮮半島や中国大陸との関係を見ていくのは必須と言えます。 しかしこれまでは日本史と世界史(中国史・朝鮮史)とに分かれてしまい相互の連絡が悪かっただけでなく、研究者も双方をまんべんなく見ていくとい…

「始皇帝の愛読書」鶴間和幸著

秦の始皇帝といえば「焚書坑儒」という言葉でも有名であり、書物などは燃やしてしまえとばかりの反教養主義的な人物かという印象が強いのではないでしょうか。 しかし、中国でも西の辺境から国を強化し全中国を統一するという偉業を成し遂げたのですから、そ…

「鳥獣戯画のヒミツ」宮川禎一著

京都の高山寺に伝わった鳥獣戯画は日本漫画の祖とも言われており、教科書にも掲載されているため誰でも一度は目にしたことがあるでしょう。 ウサギやカエルが相撲をとったりする絵で有名です。 これがどのように描かれたか、鳥羽僧正が作者という伝説もあり…

「中華を生んだ遊牧民」松下憲一著

中国には中華思想というものがあります。 しかしその「中華」という言葉が表すものは変化してきました。 漢代の「中華」と唐代の「中華」とはかなり異なるものです。 本書冒頭に掲載された、唐代の女楽士の練習風景を描いた「宮楽図」という絵は今は台北の故…

「美の考古学」松木武彦著

これまでの考古学、歴史学では発見された遺物の利用法とか製造法、そしてその発展といった方向ばかりが重視されてきました。 そこに欠けていたのが「美」という概念です。 縄文式土器、弥生式土器といったものを見て、それを古代人はどのように感じていたの…

「ヴェルサイユの宮廷生活」ダリア・ガラテリア著

フランスの王制も頂点に達したと言える、ルイ14世の時代、ヴェルサイユ宮殿で繰り広げられた宮廷生活は華やかであった一方、宮廷作法(エチケット)というものが非常に強く意識されていました。 エチケットとはいえ、現在の日本におけるような言葉の使い方と…

「物語 アラビアの歴史」蔀勇造著

現在はサウジアラビアや湾岸諸国、イエメンなどの国々があるアラビア半島ですが、人類文明発祥の地ともいえるメソポタミアとエジプトに挟まれた地でありながらその大部分が砂漠であるために文明の中心地とはなりませんでした。 しかしその後イスラム教を興し…

「テオティワカンを掘る」杉山三郎著

テオティワカンとはメキシコシティの北東60㎞に位置する、紀元前後から600年頃まで栄えた古代都市ですが、ほとんど解明されていないということです。 その遺跡を若い頃から掘り続けたというのが著者の杉山さんです。 大きな「太陽のピラミッド」などが…

「ガリツィアのユダヤ人」野村真理著

ガリツィアというのは現在はポーランド南部とウクライナ西部を含む地域を指します。 その中心都市リヴィウの名はよほどの専門家でなければ知らなかったのですが、ロシアによるウクライナ侵攻では何度もニュースに登場するようになりました。 この地域にはか…

「古代東アジアの女帝」入江曜子著

東アジアでは男尊女卑の傾向が強かったのですが、それでも古代には女帝が出現した時がありました。 特に7世紀には日本、中国、朝鮮で女帝が君臨した時代でした。 それはどういった様相だったのか、日本の推古、持統など、朝鮮(新羅)の善徳、真徳、そして中…

「教養としての 日本古典文学史」村尾誠一著

日本の古典文学は1300年にわたり書き続けられてきました。 その幾分かは見聞きしていますが、詳細まではまるで頭に入っていません。 この本ではその文学史というものを時代を追ってみていきます。 分かったようなつもりでいたものでも、知らなかったこと…

「どんマイナー武将伝説」長谷川ヨシテル著

戦国時代の歴史好きという人はたくさんいますが、それでもその興味の対象は非常に限られた範囲に留まることが多いようです。 しかし、戦国の世では多くの人々が文字通り死力を尽くして戦い、その才能を使って生き延びようとしていました。 あまり歴史の表舞…

「古代中国 説話と真相」落合淳思著

説話とは神話や伝説、民話などを指しますが、その中に自分の思想を伝えるためという意思を持つものです。 古代中国には古くから多くの文書が残っており、その中には司馬遷の史記に始まる歴史書も含まれますが、その他にも様々な書があります。 史書として扱…

「ケルトの解剖図鑑」原聖著

ケルト人といえばヨーロッパの広い範囲に住んでいたものの、ローマ人やゲルマン人に追い払われ、アイルランドやウェールズにわずかに残っているといったイメージです。 しかし、その姿は研究が進むにつれてこれまでのものとは変わってきているようです。 こ…

「王の綽名」佐藤賢一著

ヨーロッパの王たちは「綽名」というものが広く用いられていました。 「太陽王ルイ」とか「獅子心王リチャード」といったものですが、他にも多くのものがあったようです。 これは、ヨーロッパの風習として同じ名前を持つ場合が多く、ルイ13世、ルイ14世など…

「絵画と写真で掘り起こす『オトナの日本史講座』」河合敦著

学校で習う歴史の教科書にはいろいろな写真や絵画が挿絵として使われており、そのイメージは今でも残っているという人も多いでしょう。 しかしそれらの絵画や写真の意味というものは正確には知らないのではないのでしょうか。 その中に含まれている意味を知…

「名画のコスチューム」内村理奈著

現代でもそうですが、中世から近世にかけての時代には職業特有の服装などがありました。 それには理由があることが多いのですが、今では忘れられていることもあります。 この本の著者の内村さんは西洋服飾史が専門ということです。 多くの絵画に様々な職業の…

「毒親の日本史」大塚ひかり著

最近「毒親」という言葉がよく使われています。 子供に肉体的、精神的、経済的な苦痛を与える親のことという意味で使われるようです。 言葉が流行っているから、その発生も最近のものかと思われるかもしれませんが、本書著者の大塚さんのように歴史を研究し…

「世界を変えた100のシンボル 上」コリン・ソルター著

いろいろなところで使われているシンボル、それを見ただけでその意味が分かるものとなっていますが、言語や文字ができる前から使われていたものもあったようです。 そのようなシンボルの歴史などを解説しています。 アスクレピオスの杖というシンボルがあり…

「女たちの本能寺」楠戸義昭著

本能寺の変では織田信長が明智光秀に殺害されました。 そしてそれは信長、光秀の周囲の女性たちにも大きな影響を及ぼしました。 織田家の人々は明智軍により殺された人も多かったのですが、そのわずか後には秀吉軍によって光秀は殺され、明智家の女性たちも…