爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

生物

「プルーストとイカ」メアリアン・ウルフ著

本書の題名を見ても何のことかほとんど分からないと思いますが、副題を見れば少しは想像できるかもしれません。 それが「読書は脳をどのように変えるのか?」 つまり言語の伝達の手段として文字を発明して以来、どのように脳が改変されたかということを論じ…

「まじめにエイリアンの姿を想像してみた」アリク・カーシェンバウム著

地球外生命体というものはいるのかどうか、まだ分かりませんが、地球と同じような環境といえる惑星が無数に存在しそうだということが分かってきており、その中には生命を育んだところもあるかもしれません。 そういったエイリアンというものは、SFの中では以…

「新版 日本人になった祖先たち」篠田謙一著

日本人がどうやって成立してきたか、それを扱った篠田さんの前著は読んで書評も書いていますが、この分野でのDNA解析技術の進歩は甚だしいもので、どんとんと新たな知見が得られているような状況です。 それを基に現状での知見をまとめてみようということで…

「遺伝子が語る 免疫学夜話」橋本求著

パンデミックの強烈な印象が強く、免疫というものに対する意識も広まっています。 そのためか、テレビCMなどでも「免疫力を強める」といった言葉を耳にすることが多いようです。 しかし実際に「免疫」というものについて知っているという人はほとんどいない…

小林製薬紅麹事件は混入したアオカビのせいにしたいのか。

小林製薬による紅麹事件の原因究明が続いていますが、製造ラインからアオカビが検出されたとしています。 www.youtube.comアオカビの作るプベルル酸が腎障害を起こすということからそれで事態を収めたいとでも言うかのようです。 どうも紅麹培養の固体培養装…

「なぜオスとメスは違うのか 性淘汰の科学」マーリーン・ズック、リー・W・シモンズ著

本書の原題は「Sexual Selection」で、そのまま訳せば「性淘汰」となります。 しかしselectionはふつうは選択と訳されることが多いようです。 ただし、生物学用語としてはchoiceも選択と訳されることがあります。 そのため、本書ではselectionの訳として「淘…

「きみに脳はなぜ『愚かな選択』をしてしまうのか 〈意思決定の進化論〉」ダグラス・T・ケンリック、ヴラダス・グリスケヴィシウス著

人は色々な局面で選択をしますが、その多くは「愚かな間違い」 なんでそんなことをしてしまうのか。 そこには人類進化の過程で身に着けてきた意思決定の機構が関わってきます。 そういったことを取り扱っているのが行動経済学の研究者ですが、本書著者のお二…

「ねころんで読める ワクチン」笠井正志著

日本ではどうもワクチンというものが人気がないようですが、新型コロナウイルス感染ではそれが大きな存在となってしまいました。 しかしどうやらワクチンについて正確な知識がないという点では医療従事者の多くもそのようで、コロナワクチン接種に当たっては…

コロナ禍におけるリスク、世界と日本の比較、永井孝志さんのブログより

リスク学者永井孝志さんのブログはいつも興味深い内容ですが、今回は疾病のリスクというものがコロナ禍でどうなったのかということを扱っています。 nagaitakashi.netWHOを母体とする研究プロジェクトで、GBD研究というものがあります。 (世界疾病負荷(Glo…

日本人の祖先は3重構造、全ゲノム解析から。

理化学研究所、静岡県立大学、東京大学の共同研究で大規模な全ゲノム解析を行ったところ、日本人の起源が三重構造と言えることが分かったということです。 univ-journal.jp全国7地域の3000人以上のゲノムデータを解析したところ、三種に大別されるとい…

「進化を超える進化」ガイア・ヴィンス著

生物は遺伝子の変化で進化しますが、人類はかつてホモサピエンスとして誕生して以来遺伝子自体はさほど変わっていないものと見られます。 しかしその生物としての様態は隔絶したと言えるほど変化しています。 これには「進化を超える進化」があったというの…

「死の虫 ツツガムシ病との闘い」小林照幸著

ツツガムシ病という病気の名前はかなり有名なものでしょう。 古代から知られており、遣隋使を派遣した聖徳太子が隋の皇帝に送った国書に「恙無きや」という言葉があったということは有名でしょう。 また「つつがない」という言葉も広く使われていたものでし…

小林製薬の紅麹サプリ事件、原因は本当にプベルル酸なのか。

小林製薬の紅麹サプリを食べて腎臓疾患となり死亡者まで出たという事件で、その原因物質が青カビがつくる「プベルル酸」という物質ではないかという話が、やや唐突に出てきましたが、今のところそれを疑うといったものはあまり出てこないようです。 私も一応…

「進化が同性愛を用意した」坂口菊恵著

LGBTなどと言って同性愛者などを認める動きが強まっていますが、これはあくまでも人間の多様性を許容し人権を守るということから出てきたことでしょう。 しかし、どうやら同性愛というものは広く生物の中には分布しているもののようです。 そういった観点か…

「眠りがもたらす奇怪な出来事」ガイ・レシュジナー著

睡眠について悩みを持っている人はかなりの数になるかもしれません。 しかし、多少の不眠などはこの本の睡眠障害の実例を見ていくと些細な出来事のように思えてしまいます。 著者のガイ・レシュジナーさんはイギリスの神経科学者で、臨床医でもあります。 睡…

ナノプラスチックを血液の中から検出

我が家の購読新聞、熊本日日新聞で21日付けの紙面の1面に大きく掲載されていた記事が以下のものです。 news.yahoo.co.jpごく微量のようなので、問題は分析技術次第だと思います。 記事中にもあるようにオランダの研究グループの例がすでに発表されているよ…

フリーラジカルも悪いばかりではない。抗酸化物質の摂りすぎも悪影響。

「フリーラジカル」といえば体の中でガンの原因となったり老化を進めたりと悪いばかりのように言われています。 フリーラジカルを抑制する効果があるとされているのが、抗酸化性物質でこれを含むと言われるサプリメントを摂取することが健康のためのように言…

「ホルモン全史」R・H・エプスタイン著

今はホルモンという言葉は広く知られており、またオキシトシンだのテストステロンなどといったホルモンの名称も聞いたことがある人は多いと思います。 しかしそのようなホルモンという物質が人体の働きを左右するような重要な役割を果たしているということは…

「『協力』の生命全史」二コラ・ライハニ著

人類という生物は「協力」をするものであり、その度合いは近い種である類人猿と比べてもはるかに多いものです。 それが他の種をはるかに超えた人類の繁栄につながったとも言えます。 ただし、他の生物種を見てみるとさらに協力するものも見られます。 そうい…

「『人間とは何か』はすべて脳が教えてくれる」カーヤ・ノーデンゲン著

昔の人は人間の思考というものが心臓で行われていると考えていたようですが、現代ではそれが脳であることを疑うものはいません。 しかし脳の働きということはそれほど理解されていないことなのかもしれません。 この本ではノルウェーの神経科学者の著者が分…

「運動しても痩せないのはなぜか」ハーマン・ポンツァー著

太りすぎを何とかしようとして運動してもあまり効果が無いと言われます。 その理由がよく分からなかったのですが、この本では代謝学の最新の情報でそれを解説してくれます。 そこではこれまでの「運動すれば痩せる、食べ過ぎると太る」といった直感的な感覚…

「おとなのための動物行動学入門」今福道夫著

人間には知恵があり、それで行動していると考えられるかもしれませんが、実際には本能に左右されていることが多いのでしょう。 だからこそ動物の行動を調べる動物行動学の成果を見ていくと人間の行動が分かりやすいということがあるようです。 本書は動物行…

中国北部で増加の呼吸器疾患はインフルエンザか。

中国北部で呼吸器疾患の患者が急増しているということで、新たなコロナウイルスかともいわれていましたが、どうやらインフルエンザが多いようです。 www3.nhk.or.jpなお、インフルエンザ以外にもライノウイルス、マイコプラズマなどによる肺炎も増えていると…

「生き物たちよ、なんでそうなった!?」五十嵐杏南著

生物の中には「どうしてそんな恰好なの」と言いたくなるようなものがあります。 だいたい、そもそも人間というものが体毛がほとんどなくなり直立二足で歩き回るという変な動物ですし、やたら動きの遅いナマケモノ、卵で生まれるカモノハシ、首の長いキリンや…

「ドードーをめぐる堂々めぐり」川端裕人著

ドードーといえば最も有名な絶滅鳥とも言われています。 インド洋の孤島モーリシャス島にのみ生息していたのですが、ヨーロッパ人が上陸し発見されてからわずか後には絶滅してしまいました。 その間、わずかな観察例がありまた数羽が捕獲されヨーロッパやイ…

カマキリを操るハリガネムシの遺伝子の由来は、理化学研究所の発表より。

カマキリに寄生してその行動をコントロールするハリガネムシという寄生生物が知られています。 そのハリガネムシの遺伝子を解析したところ、寄生されるカマキリに由来する遺伝子が多く含まれていてそれで行動制御が可能となっているという話です。 www.riken…

「毛の人類史」カート・ステン著

著者のステン博士は医学部で病理学や皮膚科学を研究してきて、特に毛包の研究を専門に行ってきました。 しかしこの本ではそういった方向だけでなく「毛」について社会的、文化的な方向からも考察を加えています。 最初はやはり生物学的、医学的にみた毛とい…

「超耐性菌」マット・マッカーシー著

人類は長く苦しめられてきた微生物による感染症に対し効果のある抗生物質というものを手にして感染症には勝利したかのように見えました。 しかしすぐに抗生物質は効かなくなりました。 耐性菌というものが出現しいくら抗生物質の投与を続けても効果がありま…

線虫がん検査の疑惑、NATROMさんも言及

ごく小さい生物の線虫の一種が癌患者の尿の臭いを好むという話は前から聞いていました。 それを癌患者のスクリーニングに使おうという動きもあり、それを受注して実施するという会社もその研究を行なってきた人が中心となって作られ、業務を開始しています。…

「多様性の維持」は絶対正義なのか。

よく見ているテレビ番組に「所さんの目がテン」というものがあります。 日本テレビ系の日曜朝の番組で、科学というものを主題として様々なテーマを取り上げています。 その姿勢は中々しっかりとしたもので、少し前ですが「レタスの睡眠誘導効果」ということ…