爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ヘンな科学 イグノーベル賞研究40講」五十嵐杏南著

本家ノーベル賞に対し、人々を笑わせしかしちょっと考えさせられるものに対して贈られるイグノーベル賞というものがあります。

受賞の時期には話題となることもあるのですが、日本人がけっこう受賞しているということでも知られています。

そのようなイグノーベル賞について、受賞した研究や受賞者の話など40話をまとめて本としました。

 

イグノーベル賞を「研究をバカにしている」と怒る人もいるのかもしれませんが、その受賞研究を見てみると決して研究態度に問題があるというものは無く、ただその対象や方法が少し変わっていて面白いというものです。

 

本書冒頭にイグノーベル賞についての基礎知識がまとめてあります。

選考方法はこのイグノーベル賞を創設したマーク・エイブラハムズさんとその仲間たちのイグノーベル賞委員会が選定します。

授賞式は現在はハーバード大学のサンダーズシアターで開かれます。

1200人の観客が紙飛行機を舞台に飛ばすことで始まります。

受賞者がこの式に出席する場合は旅費は自費だそうです。

 

これまでの受賞研究のいくつかが紹介されています。

「ジェットコースターで尿路結石が通る」

「昇進させる従業員はランダムで選ぶと良い」

ハンマー投げ円盤投げ、目が回るのは円盤投げ」

などなど、研究の方法は極めてまともなものであり、ただしその目的がちょっと変わっているというものです。

 

テキーラから人工ダイヤモンドを作る」というのも面白い話でした。

人工ダイヤモンドの製造方法としては、原材料に高温高圧をかけて作るという方法が有名ですが、他にアルコール(炭素を含む)と水の混合物を280℃まで加熱し気体とし、さらに800℃まで上昇させ分子を分解して炭素原子を孤立させ、急激に温度を下げることでも作ることができます。

これは、宇宙空間での生成条件を再現したということで、粒状のダイヤではなく膜状のダイヤができるそうです。

これを実施して受賞したのがメキシコの大学のアパティガ博士で、その方法を思いついた時にすぐに手近にあったのがテキーラだったそうです。

 

イグノーベル賞と本家ノーベル賞を両方受賞した人がいます。

オランダ人物理学者のアンドレ・ガイム教授で、イグノーベル賞は2000年に「電磁石でカエルを浮かばせてみる」という研究に贈られました。

その10年後、炭素構造物のグラフェンの製造法で本家ノーベル賞も受賞することとなりました。

 

なかなか面白い内容の研究を真面目に実施しているものだと感心します。

日本人の受賞者が多いということも嬉しい話です。