爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「美しすぎる地学事典」渡邉克晃著

地球では地底のマグマの動きと豊富な水の循環によって多くの風景が作られています。

非常に美しい風景というものの作られた成因は実は地学的な動きによって出来上がっているということでしょう。

 

この本ではそういった美しい風景写真を並べ、それがどういった地学的要因によってできてきたのかを説明しています。

風景を楽しむには地学の知識は不要かもしれませんが、知っていればより楽しめるかもしれません。

 

50の光景が紹介されていますが、どれも驚くほど美しいものです。

中でも特に印象的なものを紹介しておきます。

 

アメリワイオミング州イエローストーン国立公園にある、グランド・プリズマティック・スプリングは熱水泉ですが、青、緑、黄色、オレンジ、赤と虹のような色で、その名もプリズムによって虹色ができているようだとしてつけられたものです。

このように様々な色に見えるのは、シリカの微粒子とバクテリアのせいです。

マグマの熱で加熱された熱水に含まれるシリカの微粒子が青色の光を散乱させるために青く見えます。

そして徐々に端の方に行くとシアノバクテリアが繁茂しその色素によって赤や黄色、オレンジなどの色に見えます。

色が違うのはシアノバクテリアの種類が異なるからだそうです。

 

アメリカのユタ州アリゾナ州の境界付近にあるモニュメントバレーにある岩山の風景はよく写真にも撮られていて見たことがある人も多いでしょう。

これは大きく分けて3つの地層からなっています。

一番下のスカートを広げたような地層は頁岩という泥が固まってできた地層で、およそ3億年前のものです。

その上にのっている垂直な崖の部分は砂岩で、およそ2億7000万年前のもので、鉄分を含んでいるために赤く見えます。

一番上に乗っている地層は礫岩で、2億4000万年前のものですが、これが浸食に強いために下の地層をも守る働きをしてこのような特異な光景を作り出したそうです。

 

アメリアリゾナ州のグランドキャニオンは有名な観光地ですが、「地球上でもっとも完全な地層の積み重ねが見られる」場所でもあります。

渓谷の一番下に見られるのは20億年前の地層であり、最上部は2億3000万年前のものです。

ただし、中間に不整合という地層の断絶があります。

下の層は20億年から15億年前までの部分で、その上には5億年前以降の地層があります。

ここには約10億年のギャップがあります。

このギャップがどうしてできたのか、まだ確定的な説は無いのですが、現在ではそれはおそらく「全地球凍結」(スノーボールアース)のためだろうと考えられています。

これまで3回起きた凍結は22億年前、7億年前、6億年前ですが、その時には地上すべてに氷が深く積み重なっていました。

それは全地球に氷河があったようなもので、その重量は大変なものでした。

そのためにそれが乗っていた地層は削り取られて無くなってしまったということです。

 

巨大隕石が落下したことによってクレーターができるのですが、それが南アフリカに現存しているそうです。

フレデフォート・ドームというのですが、直径が300㎞もあります。

ただし、隕石が落ちた直後のクレーターはそれよりもはるかに大きなものだったそうです。

現在見られるドームは深くえぐられた岩盤がリバウンドしてドーム状になったものです。

南アフリカは金の産地として有名ですが、その金もこの隕石落下の衝撃で生まれたと考えられているそうです。

 

自然の風景というものの奥にある地学というものの広がりを感じます。