爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「GIS 地理情報システム」矢野桂司著

かつては地図といえば紙のものだったのですが、今ではデジタル地図が便利に使えるようになってきました。

このようなデジタル地図を支えている技術がGIS、地理情報システムというものです。

これを駆使することで、ビジネスや行政も効率的に運用できるようになっています。

 

この本では、GISの使い方というものを教えるのではなく、その原理や歴史、その応用といったことを説明してくれます。

 

グーグルマップやヤフー地図など、スマホやパソコンから読んで便利に使えるようになっていますが、これはどういった技術で支えられているのでしょうか。

 

まず、情報の元となった地図情報は国土地理院による日本全土の地図作成で蓄積されてきました。

1950年に国土全土の2万5千分の1の地図作成が開始され、1983年に完了しました。

そして、そのデータのデジタル化は1980年代に開始され2000年代には急激に利用者が増加していきます。

2009年からは従来の2万5千分の1の地形図や空中写真などをデジタルデータとした「電子国土基本図」を整備しています。

 

現在位置の特定という課題については、準天頂衛星システムによる全地球測位システムGPS)によって解決されています。

その精度はどんどんと上がり続け、やがて数cmにまで達するでしょう。

 

GISで使われるデータ構造というものには2つあります。

ベクター形式と呼ばれる、点・線・多角形で構成されるものと、ラスター形式と呼ばれる画素の数とそのデータで構成されるものです。

これは、画像ソフトでドロー系と言われるアドビの「イラストレータ」と、ペイント系の「フォトショップ」のデータの違いとほぼ同じものです。

両者には様々な違いがありますが、上手く組み合わせることで効率的な使い方ができるようです。

 

ビジネスや行政での使用例というのも興味深いものです。

コンビニの出店場所の調査といった問題に対して、地図とそれに関連した人口データなどを組み合わせることで、出店用地の候補が見やすくなります。

それを考えながら現実のコンビニ所在地を見ていくと、各社の考え方というものも透けて見えてくるようです。

 

災害に備える「ハザードマップ」というものが大きな話題となってきましたが、これについてもGIS技術というものが大きく役立っているようです。

これに限らず、今後の行政には地理情報システムの理解と言うものが不可欠のようで、行政担当者にも必須の知識のようです。

 

建物の3次元モデル作成の例も掲載されていました。

2005年にグーグルアースで最初に公開されて以降、何回か方式が変わってきたそうです。

当初はゼンリンの家屋形状データから単純に高さを計算するだけだったのですが、その後「スケッチアップ」という3次元モデリングソフトと連携し、建物の形状を細部まで作り込めるようになったそうです。

この立体化像を見た時の驚きは大きなものでした。

まるで実際に山の上から眺めているかのような感触だったのを覚えています。

 

大きな技術の発展なのですが、それに合わせなければならない人には大変なことでしょう。