爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

田中宇さんの「国際ニュース解説」より「イランとイスラエルの冷たい和平」

イランとイスラエルの直接攻撃でどうなるかと思ったのですが、今のところ続いての戦闘はないようです。

田中宇さんの「国際ニュース解説」でその辺のところが説明されていました。

tanakanews.comイスラエルに対するイランの攻撃に反撃したイスラエルですが、あくまでも軍事施設に限定したものであったためイランもこの辺で収めることに合意?したようです。

 

この後はイスラエルはガザ難民をエジプトに追い出す作戦に出るということです。

ハマスが隠れているという口実で民間人のいるところを攻撃し、逃れるしかない状況にしてしまうのでしょう。

しかしそれをするとエジプトの政府が危うくなるということもあるのかもしれません。

 

一方でヨルダン川西岸地区パレスチナ人も追い出そうと図っているということですが、その逃れる先になるヨルダンでは王制の打倒の動きもありそうなればそちらもハマスのような集団の統治となるかもしれないとか。

 

まだまだ中東の動乱は続きそうです。

とりあえずはラファ地区への本格攻撃が始まるかどうかというところでしょうか。

「鬼平犯科帳(十九)」池波正太郎著

延々と続くように思えたのですが、あと数冊となりました。

 

「霧の朝」深川万年町の桶屋の富蔵は本業は女房のおろくに任せっぱなしで御用聞きの政吉の手先となって働くことがほとんどです。

その子の幸太郎は貰い子だったのですが、かどわかされてしまいます。

平蔵も捜索に当たりますが行方がしれません。

その頃、乞食坊主だった井関録之助は今では寺に住み込み和尚の手助けなどをするようになっていたのですが、思い立って昔住んでいた品川の小屋を訪ねてみます。

するとそこには乞食の夫婦が暮らしていたのでした。

そしてその夫婦が幸太郎の生みの親だったのです。

その女房のおきねが物貰いに歩いていた時にちょうど幸太郎がある家にいたのに気付いたのでした。

そしてその頃富蔵には幸太郎をかどわかした賊から脅迫状が届けられました。

乞食夫婦をたまたま訪れた井関が助け、幸太郎がいたという店に乗り込みます。

 

「妙義の團右衛門」上州を本拠に荒らしまわっている妙義の團右衛門が江戸にやってきて、たまたま馬蕗の利平治と出会います。利平治が火盗改の密偵となっていることに気が付かない團右衛門に利平治も話を合わせます。

しかし別れた利平治を万が一を疑い配下に付けさせ、利平治が火盗改役宅に入るのを見て驚きます。

團右衛門は計画していた盗みはあきらめますが、その代わりに利平治と平蔵に復讐をすることとします。

利平治を殺害しそのまま逃げ延びてしまいます。

まんまとしてやられた平蔵は一代のしくじりと悔やみます。

しかし大胆不敵な團右衛門は信濃で大きな盗みを済ませた後、また江戸に向かい利平治に会った時にお気に入りだった女の元を訪れます。

ところがそれまで数か月の間ずっとその女を見張っていた火盗改に捕まることとなります。

 

「おかね新五郎」平蔵が本所の鐵などと名乗り無頼の生活をしていた頃、付き合いのあった売春婦、おかねの年老いた姿に出会った平蔵はそのおかねが町人に包丁で襲い掛かるところに出くわし、助けます。

おかねは平蔵の道場の先輩、原口新五郎と共に行方をくらました過去がありましたが、その後新五郎との間の子どもをその町人弥助に殺されていたのでその仇を取ろうとしたのでした。

平蔵はおかねと新五郎の仇討ちを助け、見事弥助を討ち取ります。

 

「逃げた妻」同心木村忠吾が町の見回りの時に立ち寄る居酒屋治郎八でよく出会う浪人藤田彦七に久しぶりに出会い、かつて彦七と娘を置いて逃げた妻から手紙が届いたと打ち明けられます。その手紙には助けてくれと書いてありました。

彦七はその後再婚しており、現在は後妻と娘と暮らしているのですが、先妻の手紙も何やら危険な状況を示しておりやむにやまれず忠吾に相談したのでした。

忠吾から話を聞いた平蔵は忠吾と彦七が会って話をするという湯島天神の近くに赴きますがそこでかつて捕らえる寸前で逃げられた盗賊燕小僧を見つけ後をつけます。

すると小石川の先の雑木林の中の小屋に入るのですが、そこに浪人と共に居たのが藤田の先妻おりつでした。

燕小僧と浪人竹内重蔵のみと見た平蔵は一人で襲いかかり、竹内を切り燕小僧はお縄にします。

おりつはそのまま知り合いのところに置いておいたのですが、なんと藤田彦七は娘と後妻を捨てておりつと逃げてしまったのでした。

 

「雪の果て」先妻と一緒に逃げた藤田彦七は神田の大店の和泉屋万右衛門の使用人たちの手習いの教授をしていました。しかし逃げていたためにその手習いもできなかったのですが、それが戻ってきます。

実は先妻のおりつは盗賊の浪人渡辺八郎に拉致され、それで藤田を脅して和泉屋への押し込みの手引きをさせようとしていたのでした。

感づいた火盗改が探索を進め渡辺一味の隠れ家を突き止め見張りを始めるのですが、思い詰めた藤田は油を持ち隠れ家に入りそれに火をつけてしまいます。

慌てた火盗改は隠れ家の周りを固め逃れてくる盗賊たちを捕まえるのですが、藤田は盗賊と切り合い死亡、さらに地下牢に閉じ込められていたおりつも焼死してしまいます。

 

「引き込み女」火盗改に煮え湯を飲ませてきた磯部の万吉を築地で見かけたという情報が入り、密偵おまさもその捜索のために見回っていました。

そのさなかに旧知の女盗賊のお元を見つけます。しかしその様子が引き込み役の女とは思えないもので、昼日中の町でボーっと川面を見つめるというものでした。

それを平蔵に報告しますが、さしあたり急な盗みの様子もないためおまさに任せるという言葉を貰います。

しかし近所に見張り場所を設け何日も見張りを続けてもお元に仲間の連絡が入る様子もなく、盗みの仕掛けの疑いも薄くなったかと思い、おまさはもう直接お元に当たってみることとします。偶然出会ったかのように声をかけ、話をしてみました。

するとやはり駒止の喜太郎という盗賊の引き込み役として店に入り込んでいるものの、そこの養子の主人と深い仲になってしまったということでした。

主人とはいえまだ親は隠居と言いながらピンピンしていて店の仕切りもすべて行い、養子とバカにして何も言わせないという境遇で、それに同情したお元とそうなってしまいました。

その菱屋彦兵衛はもうお元と駆け落ちをするしかないと思い込みますが、もしもそうすれば盗賊の首領をお元は裏切ることとなり、必ず探し出されて殺されることになります。

ちょうど盗賊の押し込みの日時とも重なり、お元は駆け落ちも盗みの引き込みも放棄して一人で逃げてしまいます。

全てを見張っていた火盗改はお元の後もつけさせる一方、押し込みに入ろうとする盗賊一味の捕獲にも準備して待ち、やってきた盗賊を捕らえます。

しかし一味の中でただ一人、磯部の万吉だけは家の屋根に飛び移り逃げ延びます。

そして翌年になりお元を探し出して殺害するのでした。

 

盗賊一味であっても人生を感じさせる描写でその苦しみ、悲しみを描いているところが小説全体の深みを増しているのでしょう。

 

 

熊日新聞コラムより、江川紹子さんが「米司法の透明性」について書いていました。

我が家の購読新聞は地方紙の熊本日日新聞ですが、そのコラムの「江川紹子の視界良好」でジャーナリストの江川紹子さんが「米司法の透明性」を書いていました。(2024・4・25)

有料会員でないと読めないと思いますので概略を紹介しておきます。

 

米大リーグの大谷翔平選手が巻き込まれた違法賭博事件、その金額の大きさや信じ切っていた通訳の裏切り行為ということで大きな話題となりましたが、もう一つ江川さんが感じたのが「米司法の透明性・合理性」だったということです。

 

事実が明らかになりだした当初は大谷選手の関与があるかのように容疑者が語ったこともあり、いろいろな憶測が飛び交いましたが、アメリカの司法当局がすぐに調査資料などを公開し、「大谷は完全に被害者だ」と言明したことであっという間に収まりました。

捜査当局による書面の公表には、直接捜査にあたった捜査員の宣誓供述書も添えられ、まったく疑問の余地のないようなものとなっています。

さらに連邦検事がその書面をもとに記者会見を行い質問にも答える場を作りました。

 

翻って言うのも恥ずかしくなるほどなのが日本の検察の態度です。

個別の事件についての記者会見などはほとんどありません。

やったとしても記録や録音を許さず報道もできない状態です。

基礎根拠となる事実は「裁判で明らかにする」とだけ言うのが常態です。

不起訴の場合にはそれすらありません。

さらに起訴後、判決確定後でもその資料を閲覧するのは難しいようになっています。

 

日本の検察は何を守ろうとしているのでしょうか。

 

 

「プーチンの10年戦争」池上彰、佐藤優著

日本でも有数のロシア通と見られる佐藤さんなので、ロシアのウクライナ侵攻以来解説や対談でいろいろと忙しいのでしょうか。

この本では池上彰さんとの対談でロシア情勢や歴史などについて語っています。

なお、題名の「10年戦争」というのには2つの意味があり、一つはこの戦争はまだまだこれから10年も続くかもしれないということ、そしてもう一つは実は戦争が始まったのは2年前ではなく10年前からですでに10年経っているということを表しています。

 

この本の主要な部分は、プーチンが論文や演説で語ってきたことの全文を読み込みそこに込められている意味を見ていくというものです。

その論文・演説は7本あり最初は1999年の論文、以降は2021年からと最近のものになります。

なお本書巻末にはその7本に加えてウクライナのゼレンスキー大統領の演説も収められており、よく読んでいくことで見えるものが在るかもしれません。

佐藤さんが嘆いているのは、こういった重要な論文・演説について原文で読むのは難しいとしてもメディア各社がどうやら全文を読むこともなく、アメリカなどの通信社や新聞の抄訳だけを見ているようだということです。

その程度の勉強と取材の努力は必要でしょう。

 

日本の報道姿勢はほとんどが米欧のものと同一であり、それに沿ったニュースしか流れません。

ロシアは経済制裁で停滞し戦争が続けられないとか、多くのロシア人が徴兵逃れで海外逃亡し兵隊が不足とか、ウクライナの反転攻勢が効果を上げてロシア軍はまもなく撤退するとか。

いずれもどうやらはずれのようで、そういった状況にはならなかったようです。

ただし、ロシア側の情報を正確につかむということが非常に難しくなっているのも事実です。

 

プーチンの論文の中には「ウクライナ」という名称の意味が古代ルーシ語の「辺境(オクライナ)から来ているとしている部分があります。

ウクライナ側ではその「クライ」は「国」でありウクライナとは国民という意味だとしていますが、その正確なところは不明のようです。

 

このような歴史観の食い違いというものは多数あり、ウクライナ人はそもそもスラブ人ではないとか、逆にウクライナ人こそが真のスラブ人でありロシア人はそうではないといった主張が政治的な目的で発せられています。

ウクライナのそれがいわゆる「ガリツィア史観」と呼ばれるものですが、ロシア側はそれは虚構だと主張します。

 

ロシアは西側の経済制裁を受けていますが、ロシアは本来食料もエネルギーも自給し他へ輸出する力がある国ですので、ほとんど効果を上げていません。

ただし、最先端の半導体だけはまだ作ることができないため、ミサイルなどの誤爆が増えているということです。

2022年6月にウクライナのショッピングモールがロシアのミサイルの直撃を受けましたが、ゼレンスキーはテロ行為だと非難したものの、ロシア側はショッピングモールの近くの軍事工場を攻撃したとしています。

その距離は300mしか離れていなかったということで、十分に誤爆のあり得る程度だということです。

 

ウクライナの歴史では1000年前のキエフ・ルーシ(キエフ大公国)まで遡らなければなりません。

9世紀に北欧から流入したバイキング、ノルマン人が建国した国で現在のロシア・ベラルーシウクライナの源流とされています。

そこから先が双方で見解が違うところです。

13世紀にキエフ大公国はモンゴルの侵攻を受けて消滅します。

しかし一部はモスクワを拠点に勢力を拡大し15世紀にはキプチャクハン国に勝利し完全な独立を果たした。これがロシア側の歴史観です。

ウクライナ側ではキエフ大公国の伝統はウクライナ西部のガリツィア地方のリヴィウに誕生したガーリチ・ヴォルィニ公国に受け継がれ、これがウクライナとなったのでキエフ大公国の正統な継承者はウクライナだという解釈です。

 

プーチンの論文を見ていくと、自国の教育は西側の教育システムと切り離す「教育のデカップリング」を進めようとしています。

これは他国からの留学生を受け入れないということで、現地でのロシア語の習得ということができなくなります。

アメリカやイギリスには国内にロシア語を教育する養成機関を持つのですが、日本には全くないため、今後はロシア語話者が養成されなくなる危険性があります。

もはや佐藤さんの後輩が出ることも無くなるのかもしれません。

 

現在までのところはロシアに対する姿勢では日本は米欧ほど敵対していないため、ロシア側も対日姿勢が違うということです。

日本がアメリカ寄りに姿勢を変えていくのかどうか。

厳しい判断が必要なのでしょう。

 

 

まあ期待はしてなかったけど、思ったよりひどい政治資金規正法改革案

政治資金パーティーの裏金問題の対策として自民党が規正法改革案というのを出しました。

しかし野党の言葉を借りるまでもなく「国民にとってゼロ回答」でしょう。

www.tokyo-np.co.jp収支報告書を会計担当者に任せたという言い訳があったから、そこだけ変えましたというだけのものです。

一応、「連座制に近い」などと言うことは言われていますが、極めて限られた範囲内だけの話、結局は「収支報告書に書くかどうか」だけを決めましたという話のようです。

 

「やります、やってます」だけの政権ならではの結論のようで、実質は何もなし。

政治に期待を持つどころか、もう考えたくもないという状態に国民を落とし込み、選挙だけは固定客だけで圧勝し、やりたいことをやり続ける。

そういった構造の与党となり果てたということでしょう。

「鬼平犯科帳(十八)」池波正太郎著

まだまだ続きます。

 

「俄か雨」久しぶりに市中見回りに出た平蔵は、目黒の先で俄雨に見舞われ、百姓家に雨宿りに入りますが、そこは無人の空き家のようでした。

そこにちょうど他の雨宿りが入ってきたので身を隠しますが、それが火付け改め方同心細川峯太郎と女でした。細川は火盗改め同心でも会計係でいつも役宅でそろばんをはじいているのですが、その日は非番でした。

空き家のようであるのを良いことに二人はさっそく着物を脱いで事を始めます。

ところがその家に住み着いていた浪人が帰ってきていきなり細川の尻を蹴飛ばします。

細川が気絶させられ、女を犯そうとしたところで平蔵が飛び出し浪人を倒します。

家に戻ってみると細川は意識を取り戻したとみえ既に逃亡していました。

そして平蔵が買っていた黒飴と塗笠も持ち去っていました。

翌朝、何食わぬ顔で出勤してきた細川を平蔵は一喝、腹を切れと命じますが、腹を切れなければ妻をめとれと同僚伊藤清兵衛の娘を嫁に貰うことを承諾させるのでした。

 

「馴馬の三蔵」火盗改密偵の小房の粂八は普段は船宿の主人として働いていますが、その得意客と一緒に訪れた料理屋で昔の盗賊仲間の馴馬の三蔵を見かけます。

粂八はかつて三蔵に大変な迷惑をかけたと思い込んでいました。

江戸の香具師の元締めの女と深い仲になり、二人で逃げ出したのですがその女を駿河の岡部宿の三蔵の女房の家にかくまってもらいました。

しかしその家が襲撃され、粂八の女と共に三蔵の女房も惨殺されてしまいました。

そのため三蔵には大きな負い目があると思っていた粂八は三蔵がその料理屋の物置に隠れる場を見つけてもそれを火盗改めに報告することができませんでした。

しかし、なんということかちょうどその料理屋に長谷川平蔵本人がやってきてしまいました。

粂八の顔色が変わったことを平蔵は見逃さず、彦十に命じて調べさせます。

ところが粂八が料理屋を見張っていると大騒ぎとなり三蔵が逃れ出てきますが、用心棒の浪人に切られたところを何とか救い出します。

重傷を負った三蔵から粂八は話を聞くのですが、なんとその料理屋は盗賊瀬田の万右衛門のアジトであり、三蔵は盗みのためではなく万右衛門に敵討ちをするために忍び込んだのでした。

岡部宿で三蔵の女房を殺したのは実は万右衛門であり、粂八の女はその巻き添えとなったということを明かすのでした。

それを粂八は平蔵に報告、すぐさま配下を連れて料理屋に打ち込み、瀬田一味を捕縛したのでした。

 

「蛇苺」平蔵は久しぶりに亀戸天神の近辺の見回りに出ますが、夜になり辻斬りが町人を襲うところに出会い助けに入ります。

平蔵一人だけのため、相手を脅すつもりで名を大声で名乗りますが、それで辻斬りは逃げたものの切られて傷を負った被害者も姿を隠してしまいました。

その被害者はそのすぐ前に平蔵も食事をした料理屋の客であったことを思い出し、料理屋に戻って店の者の話を聞きますが、当人は初めての客であったものの連れが何度か来店した「張替屋」であることを思い出したので同心密偵に探索を命じます。

張替屋は実は盗賊の針ヶ谷の宗助、そして宗助がつなぎをしていたのが料理屋川半に引き込みとして入っていた女賊おさわでした。

しかし宗助からおさわを寝取っていたやはり盗賊の首領沼目の太四郎が宗助とおさわ両方を殺しその持ち金を奪おうとしていたのでした。

そこまでも調べを進めた火盗改は一気に打ち込み盗賊たちすべてを捕らえました。

 

「一寸の虫」火盗改密偵の仁三郎は町で昔の知り合いの鹿谷の伴助と出会います。

しかし二人がうどん屋で話をしていたところを同心山崎庄五郎に見られていました。

山崎はそのことを平蔵に報告せずに自分だけで手柄にしようとします。

伴助と再び会った仁三郎は盗みの手伝いを持ち掛けられますが、その相手が二人が昔配下となっていた船影の忠兵衛という盗賊の娘の婚家でした。

忠兵衛は盗みはしても非道はしないという盗賊で、その掟を破った伴助と仁三郎を叩き出したのでしたが、その復讐をしてやろうというわけでした。

仁三郎はどうやってこの苦境に対するか苦悩するのでした。

一人だけなら伴助を殺してしまうことも考えたのですが、すでに山崎に知られているためそれができません。

困り果てていた仁三郎ですが、たまたま平蔵はその目標の菓子屋に買い物に入っておりそこで怪しい客を見つけて同心に調べさせていたのでした。

しかし伴助一味の盗みは進んでおり、実行の日となってしまいました。

仁三郎はしかし盗賊が勢ぞろいし店に押し入るというその場で伴助を一気に刺し殺し自分も胸を刺して自殺してしまいます。

 

「おれの弟」平蔵が久しぶりに立ち寄った料理屋橘屋忠兵衛でかつての剣術仲間の滝口丈助を見かけます。それも女連れでその女も平蔵が見知っていた、表具師今井宗仙の後妻お市でした。

丈助は貧しい御家人の息子で平蔵より年下とあり、平蔵は弟のように可愛がっていたものでした。

その後も剣の道一筋のはずでしたが、それが人妻との密会、さらに後をつけると刀の研師のところに寄るのですっかり平蔵は怪しみ探ってみることとします。

丈助の住まいを見張っていると朝早くにすっかりと身支度を整えて出かけました。

雑司が谷南蔵院の裏の空き地に来ると襷をかけ、すっかりと決闘の身支度となります。

しかしその時に彼方の木陰から矢が射かけられ丈助の胸を射抜きます。

さらに5人の侍が抜刀し駆け現れました。

平蔵や小柳たちも駆け寄り、激闘をして追い払います。

しかし丈助はすでに即死の状態でした。

その後丈助の住まいに行くと平蔵宛ての書状が残されていました。

滝口丈助が代稽古を務めていた高崎道場の当主高崎忠蔵が高齢となったため、丈助に後を譲りたいといったところ、門下であった七千石の大身旗石川筑後守の子息源三郎に反対され、源三郎は丈助に果し合いを申し入れたということです。

しかしその場に源三郎は配下を連れ、しかも弓矢も持ち込み丈助を討ちました。

その事実を知った平蔵は上司の京極備前守に訴え源三郎の処分を頼みましたが、石川筑後の幕閣での勢力からうやむやにされてしまいます。

後日、平蔵は源三郎を討ち果たし丈助の恨みを晴らします。

なお、丈助死亡の件はお市にも伝えますがその場にお市は夫を連れてやってきます。

お市が浮気の相手というのは平蔵の勘違いで、実はお市と丈助は腹違いの兄弟だったということで、平蔵が見かけた時は丈助が決闘に行くということを伝えた場だったということでした。

 

「草雲雀」同心細川峯太郎のかつての恋の相手、芝白金の茶屋の後家お長は隣の小間物屋の主人が旅商売から戻ったのに会いますが、そのあまりにも憔悴した様子にその女房の浮気を知ったと見ぬきます。

ちょうどその頃、当の細川は平蔵より会計係から探索方への配置替えを申し渡され、現在探索中の盗賊の人相書二十枚余りを暗記します。

翌日は非番とされたため、父母の墓にそのことを報告しようと墓参りに行くのですが、それがちょうどお長の茶屋の先にありました。

新妻には満足している細川ですが、かつてのお長にも未練を感じてしまいます。

ところがそのそばで話をしていた二人組の男の一人が昨日見せられた人相書そのままだったのです。

もう一人はお長の見かけた隣の男、そしてその話し相手が人相書通りの鳥羽の彦蔵でした。

隣の男もやはり盗賊で一人働きの瀬川の友次郎というものでした。

細川はその件を手紙に書き、近くの茶店の者にそれを火盗改役宅に届けさせます。

するとすぐに平蔵自らやってきて、さらに同心たちも呼び寄せますが、その時その家では異変が起こります。友次郎の女房おきぬと鳥羽の彦蔵が結託し友次郎を殺害してしまったのでした。

それに気づいた平蔵たちはすぐに討ち入り、彦蔵たちを捕らえます。

しかし、細川がかつての女を忘れられないことを見抜いた平蔵に後でこっぴどく叱れれることとなります。

 

この巻では木村忠吾の出番はほとんどなく、代わりに細川峯太郎が大活躍?でした。

 

 

家の周囲で宅地造成が続く

私の家は熊本県八代市の中心部から数Kmのところにあります。

これまではかなり広く水田が残っており、我が家のすぐ前も大きな水田だったのですが、その4分の1ほどが宅地造成されました。

このあたりでは続々とそういった場所が増えています。

 

とはいえ、八代市自体の人口が増えているということはありません。

合併して15万人となって以来でもほぼ横ばい、旧八代市域に限って言えば人口10万人でこれもほとんど変わりありません。

大工場がいくつかあり、また農業も盛んということですが、その業績は下がり気味で熊本県北の半導体ブームによる景気過熱などはどこの話かと思うような沈滞ぶりです。

 

それでも農地の宅地化が進むのはもちろん農業従事者の高齢化と農業継続断念でしょう。

我が家の前の水田も近くの農家がやっていたのですが、どう見ても私より年上の夫婦のみ、もう限界が近づいたということでしょう。

後継者などはあるはずもなく、売れる間に売ってしまおうということが明らかです。

 

とはいえ、そういった宅地は他にも多く、もう何年も造成したまま草が生えているという状態です。

交通至便なところはまだ売れることもあるようですが、ちょっと裏道に入り込んだりすると無理のようです。

 

それでも宅地造成だけならまだ傷が浅いとも言えます。

おそらく業者の甘言に乗せられてだと思いますが、賃貸アパートを建てる人も多いようで、こういったものも続々と建てられています。

これも「満室なら」建設費などの借入金を早々に完済しさらに収入もあるというものですが、空室だらけならすぐに赤字化するようなものです。

 

八代地域ではトマト栽培など話題になるものもありますが、そういった特産物生産以外の農家はかなり苦しい状態になっているようです。

苦しい経営をさらに悪化させるような情勢となっているのでしょう。