台風のシーズンになると気象庁などの発表でかなり先の進路や強度まで予測されているため、もう台風については何でも分かっているかのように考えがちです。
しかし、この本の著者に名を連ねる台風の一線級研究者によれば、まだまだ分からないことだらけということです。
実は台風が南方海上にある時の気圧や風速というものは、直接は測っていないそうです。
それならなぜあのようにまことしやかな数字が出て来るのか。
それは気象衛星の画像を用いてその雲のパターンから中心気圧と最大風速を推定する「ドボラック法」という解析法を使っているからだそうです。
これはアメリカの気象学者ヴァ―ノン・ドボラックが1974年に考案したもので、過去のハリケーンについて航空機によって実際に測った気圧風速と、衛星画像の雲パターンの対応関係を調べてこの解析法を作りました。
それでまずまずの値が出るということになり、アメリカが軍用機を用いて行っていた台風の中へ飛行しての観測は1987年に終了しました。
それ以降は航空機を用いる測定はほとんど行われていないそうです。
ドボラック法以外にも台風の中心気圧や最大風速を推定する方法がいくつも考案されており、衛星からのマイクロ波センサーや気象用のドップラーレーダーを使う方法が研究されていますが、まだ決定版と言えるものはないようです。
台風の一生を見ると、最初は弱かった強度がグーっと強くなり、一定に達して数日間はその強度を保ち、その後弱まって消えていきます。
それぞれの台風にはその発生状況によりどこまで成長できるかという限界の強度が決まっているようです。
台風の強烈な風雨で海面が激しく波立ったり地上で森林や建物を揺らしたりするのですが、これらはすべて台風にとっては摩擦としてその勢力を弱める力になっています。
海から暖かい水蒸気が供給されることによって台風の勢力が強まっていくのですが、一方では摩擦力によって弱まっていき、それがバランスを取って一定の勢力に止まるようです。
温暖化により台風の強さも増してくるという予想もありますが、さらに研究が進み進路予想や強度の推定が精度を増すことを期待したいものです。