爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

歴史

「奪われた『三種の神器』」渡邊大門著

「三種の神器」というと現代でもとても大切な宝物という比喩で使われます。 しかし、よく知られているように元々はこれは天皇家の累代の宝器であり、それを持っているということが天皇位にあることの象徴のように扱われてきたものです。 著者の渡邊さんは中…

「わさびの日本史」山根京子著

わさび(山葵)と言えば刺身や寿司には欠かすことのできないものであり、いわば和食というものを支えているかのような存在です。 しかし、わさびがいつ頃から日本人の食に彩を添えるようになったのか、よく分かっていないようです。 そのような「わさびの歴…

佐渡金山の世界遺産登録問題。

ユネスコの世界遺産に佐渡の金山を登録するよう申請するかどうかについて、いったんは見送りとしたものが安倍元首相らの反発を受けて方針を変更し申請することとしたそうです。 関係国の異議があった場合はその調整を行ってからということが昨年決まったばか…

「機能獲得の進化史」土屋健著

生物というものは「機能」の獲得によって大きく変化していきました。 新たに獲得した機能によって、その生活自体が大きく変わるということも起きました。 そのような「機能獲得」について、化石などに見られる進化の歩みからその最初の頃の様子を語る本です…

「戦国『おんな家長』の群像」黒田基樹著

「家長」とはその家で一番偉くて決定権を持つ人のことです。 家制度が強固で、家全体として外敵に立ち向かわなければならなかった戦国時代ですが、そのような時代だからこそ、女性が家長を務めなければならないということがよくあったようです。 数年前にNHK…

「漢字とは何か 日本とモンゴルから見る」岡田英弘著、宮脇淳子編・序

中国を中心としたアジアの歴史から、世界史までを見据える歴史観を持ち、これまでの概念を覆すような著書を数多く著した岡田英弘さんですが、2017年にお亡くなりになりました。 岡田さんの著作の中には、特に「漢字」というものに着目しそこから様々なことを…

「日本の街道 ハンドブック」竹内誠監修

道というものは古代から存在していたのでしょうが、「街道」となると特に江戸時代になって大きく発展しました。 古代ローマのようにすべてを石畳にしてしまうということはなかったものの、各地に宿場町を作るなど整備されました。 そのような街道について、…

「三国志名臣列伝 魏篇」宮城谷昌光著

後漢末からの乱世から魏呉蜀の三国が並び立ち抗争を続けた三国時代については、正史三国志、そしてそれを通俗化した三国志演義、さらにそれらを基に書かれた多くの小説などが親しまれています。 中国古代を舞台とした歴史小説で多くの著作がある宮城谷さんも…

「英仏百年戦争」佐藤賢一著

フランス中世などを題材とした小説を多数発表されている佐藤さんですが、もともとはヨーロッパ中世史を専攻して学位を取られたということです。 この本ではその知識をそのまま本として、いわゆる「英仏百年戦争」を描いていきます。 英仏の百年戦争といえば…

「言いなりにならない江戸の百姓たち」渡辺尚志著

江戸時代の百姓(農民)と言えば「無学で読み書きができなかった」「村は閉鎖的な社会で村外のよそ者とは付き合わなかった」「武士に対しては服従するだけだった」「農業は自給自足だった」というイメージがあるようですが、古文書から現れてくる実像という…

太平洋戦争開戦から80年

12月8日は太平洋戦争開戦から80年になるということで、新聞やテレビなどでは特集も組まれているようです。 80年ともなればそれを実際に見聞きして覚えているという人ももうほとんど残ってはいないでしょう。 開戦とは言え、それは満州事変から日中戦…

「皇室がなくなる日」笠原英彦著

平成天皇が「生前譲位」を行い天皇位を譲ったのですが、これは大政奉還で天皇に名目上の統治権が移った明治初年以降初めてのことでした。 そのこと自体、天皇制というものに深く影響を及ぼすことなのですが、それ以上に大きな問題は男性皇族が減り続け皇位継…

「マネーの魔術史」野口悠紀雄著

経済学者野口悠紀雄さんの著書は何冊か読ませて頂き、また色々なところに発表された文章には目を開かされることが多いと感じています。 今回読んだ本は、「マネー」というものに関してかなり本質的なところから、現在の政策についての部分まで、何となくおか…

「江戸移住のすすめ」富岡一成著

江戸時代の江戸での生活などは数々の書物でも描かれており、それをもとにした小説も書かれ、また映画やドラマにもなっているため、現代人にも身近に感じられるものとなっています。 ただし、実際にそこで暮らすということがどういうことなのか、そう言われる…

「物語 韓国史」金両基著

「韓国史」とありますが、現在の韓国’(大韓民国)の領域のみを扱ったものではなく、半島全体を対象としています。 また、「史」といっても歴史的事実のみを扱うものではなく、神話的な内容も対象としており、そのために扱う年月も5000年という長いものとな…

「九州考古学の現在」西谷正著

九州は近畿と並んで日本の考古学では最も活動が盛んな地域でしょう。 著者は、関西出身で奈良国立文化財研究所を経たのちに、九州大学に赴任、考古学研究をやってきたと言う方で、九州の考古学研究の中心的な役割をされてきた方です。 九州の考古学というも…

「マリー・アントワネットは何を食べていたのか」ピエール=イブ・ボルペール著

フランスブルボン王朝のルイ16世の王妃で、フランス革命の際に処刑された王妃マリー・アントワネットはその境遇から贅沢の化身のように言われていますが、実際のところはどうだったのか。 彼女が何を食べていたのかということも、当時の王族の公開正餐(食事…

「赤米のたどった道 もうひとつの日本のコメ」福嶋紀子著

コメと言えば白米というのが現代の普通の感覚でしょうが、かつては「赤米」というものがありました。 古代に「黒米」というのがあったということですが、黒米は内部まで色が着いていたのに対し、赤米は内部は白いものでした。 しかし、味が悪く様々な欠点が…

「資源争奪の世界史」平沼光著

世界の歴史を見ていくと、戦いというものが資源を奪い合ってのことだということが判ります。 この本ではそういった資源の争奪という点について描かれています。 ただし、「歴史」という意味が出ているのは前半部分であり、後半では現在そして将来についてま…

「一冊でわかる トルコ史」関眞興著

色々なところで日本と関わりはあるものの、その歴史についてはほとんど知られていないのがトルコでしょう。 この本では、その世界でも有数の古さを持つその歴史について、ごく初歩的なことを説明しています。 ただし、現在の「トルコ共和国」の範囲であるア…

「日本外食全史」阿古真理著

外食、すなわち家の中ではなく、外の店に行って食事をすること。 と言っても、特別な時に服装も上等なものに代えて出かけるようなものもあり、また普段の食事をそれで済ませるような安価なものもあり、様々です。 それでは、外食というものはいつ頃から始ま…

「絵で見る 十字軍物語」塩野七生著

著者の塩野さんは古代ローマやルネサンス期の小説を数々発表されていますが、十字軍に関する物語も書かれています。 この「絵で見る」というものもその一環として書かれたかというとそうではなく、実は十字軍に興味を覚えて調べ出すよりはるか以前、30年も前…

「『大日本帝国』崩壊」加藤聖文著

第二次世界大戦終戦までの日本は大日本帝国として、内地に加え朝鮮、台湾の植民地、樺太千島、南洋群島の領土、勢力下においた満州国、軍事的占領下の中国や東南アジアを勢力下においていました。 しかし、それが1945年8月のポツダム宣言受諾からの敗戦で一…

「歴史を変えた自然災害 ポンペイから東日本大震災まで」ルーシー・ジョーンズ著

地震・津波、火山噴火、水害など自然災害というものは人間の営みなどはあっという間に崩してしまいます。 そのような自然災害を歴史にたどるとその傷跡の大きさに驚きます。 日本は特に自然災害の多い地域ではありますが、世界のその他の地域でも決して災害…

「おやじの国史とむすこの日本史」福田紀一著

「国史」といってももうほとんど分かる人はいないかもしれませんが、戦前の学校での日本史授業のことを国史と呼んでいました。 ということで、この本の題名は「おやじ」世代が学校で国史を習い、「むすこ」世代は日本史を習っていたということを示しています…

「熱風の日本史」井上亮著

歴史には「清らかな神話」と「暗黒の恥部」が必ずセットで存在します。 明治以降の日本史を見ても「坂の上の雲を目指した清く美しい時代」と「愚昧な指導者によって無謀な戦争に突き進んだ暗黒の時代」とがきれいに区別できるわけではありません。 そのよう…

「三国志 外伝」宮城谷昌光著

宮城谷さんは「三国志 全12巻」を刊行していますが、その時代の重要人物でありながらその本の中にはあまり取り上げられなかった人々について、三国志の特別付録やオール讀物誌に読み切りの形で掲載しました。 三国志シリーズが完成後にその外伝として一冊の…

「世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史」スティーブン・ジョンソン著

人類の文明がどのように進化してきたか。 そこにはそれが無ければ現代文明が無かった、あるいはかなり違ったものになったような重要な発明と発見があります。 そのような6つのもの、「ガラス」「冷たさ」「音」「清潔」「時間」「光」と取り上げそれらがど…

「中国義士伝」冨谷至著

義士とは何か。 節義と言うものを貫き通し、過酷な運命によって非業の死を遂げてもそれを貫き通す人です。 中国の漢、唐、南宋の時代に節義を貫いた3人の義士の伝記が書かれています。 漢の蘇武、唐の顔真卿、南宋の文天祥は極めて困難な状況にも関わらず、…

「司馬遷の旅」藤田勝久著

中国の前漢の時代の司馬遷は、「史記」と呼ばれる歴史書を中国で初めて執筆し、中国の歴史の父とも言える人です。 史記の中には、司馬遷が各地を旅し、そこで様々な逸話を聞いたという表現も見られます。 しかし、それが事実なのか、あるいは既に書かれてい…