爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「九州考古学の現在」西谷正著

九州は近畿と並んで日本の考古学では最も活動が盛んな地域でしょう。

著者は、関西出身で奈良国立文化財研究所を経たのちに、九州大学に赴任、考古学研究をやってきたと言う方で、九州の考古学研究の中心的な役割をされてきた方です。

 

九州の考古学というものを広い観点から概観してみようというまとめの本です

 

したがって、かなり大きく分けての記述となりました。

第1章 邪馬台国と東アジア

第2章 玄界灘の島々

第3章 古墳時代の諸相

第4章 大宰府をめぐって

第5章 筑紫・豊の山岳霊場と中・近世城館

第6章 水中考古学への取り組み

 

どの章をとっても非常に多くの知見があるもので、とても細かく記述するわけにもいかないでしょうが、できるだけの内容を入れ込もうという努力は感じられます。

 

1-5章は非常に大きな分野でもあり、また他書も数多くあるところですので、ここでの紹介は控えますが、第6章の水中考古学というものはまだあまり紹介されることが少ない所でしょうか。

 

外国では取り組みの進んでいるところもあるのですが、日本ではこれまではほとんど水中、というか実際は海底、の考古学というものは扱われていませんでした。

ともすれば、難破船のお宝さがしとも捉えられかねないものですが、特に九州北岸には古代から中世近世まで数多くの難破船が沈んでいるものと考えられます。

しかし、これまで調査された例と言うものはほとんどありません。

人が潜水して調べるというのも大変ですし、ソナーや超短波装置なども使用料が高額で、なかなか使えるものではないようです。

しかし乏しい研究費ながら徐々に進められ、元寇の際の沈没船が見つかった例もあり、元の兵器なども見つかっているようです。

今後は交易船の沈没船が見つかればかなりの成果が出ることが期待されます。

 

あとがきにもあるように「考古学の研究にとって、九州にその活動拠点を置くことは宝の山の中にいるようなものである」そうです。

今後もさらに多くの研究者によって様々な歴史が明らかにされていくことでしょう。