爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

歴史

「戦争というもの」半藤一利著

半藤一利さんは昭和の歴史、特に戦争史を長く書き続けてきましたが昨年1月に亡くなりました。 この本はその前年、戦時中の軍人の言葉や流行したスローガンなど「戦時中の名言」とされる言葉についての随想を綴るという構想でまとめられたものですが、これが…

「歎異抄」梅原真隆訳注

高校の日本史では必ず習ったはずの「歎異抄」ですが、短い文章とは言えその全文を読んだという人はほとんど居ないでしょう。 この本は原文とその解説、さらに現代語訳を付すというものですが、昭和29年に初版発行という本ですので、「現代語訳」といってもか…

「戦国時代は何を残したか」笹本正治著

歴史好きな人にどの時代が一番かと問うとかなりの比率で「戦国時代」と答える人がいるようです。 しかし、その頃の民衆の生活を長く研究してきた歴史学者の著者から見ると、多くの人々が殺されたりひどい目にあっていた時代を単に英雄が活躍したというだけで…

高野茂さんの講演会、聞いてきました。

「古文書に見える中世の八代」という本を読みましたが、その著者の高野茂さんの講演会が開かれたので出席してきました。 古代から様々な歴史が繰り広げられた八代地方ですが、それに関連する文書資料を丹念に調査研究してきた高野さんの話は興味深いものでし…

「古文書に見える 中世の八代」高野茂著

著者の高野さんは熊本県の高校教諭を長く勤めましたが、そのかたわら古文書の調査研究を行ってきたそうです。 30年前に八代市立博物館が開設され、その友の会が結成されたのですが、その会報「松籟」にずっと「古文書に見える八代」と題した連載記事を書いて…

「源頼朝 武家政治の創始者」元木泰雄著

ちょうど今ドラマで源頼朝の時代を放映していますが、そのあまりにも若者向けを意識しすぎたような描写に少し辟易するものの、それでは自分はその時代の何を知っているのだろうかと自省しても、実際にはほとんど知らないということに驚きます。 だからという…

「諡おくりな 天皇の呼び名」野村朋弘著

諡号(しごう)は「おくりな」とも呼ばれ、天皇の死後に付けられる呼び名です。 現在の天皇は「今上天皇」ですが、明治以降一世一元ということになり、その元号が諡号とされるのは間違いありませんので、死後には「令和天皇」と呼ばれるのでしょうが、現在は…

「歴史屋のたわごと1 海の国の記憶 五島列島」杉山正明著

著者の杉山さんはモンゴル史・中央ユーラシア史が専門の歴史学者ですが、一般向けの本も書かれています。 この本はこれまでの経験で歴史にまつわる事について感じたことをエッセー風に書いてみるようで、シリーズで出版されるものと思います。 その第1巻で九…

「孔子さまへの進言 中国歴史人物月旦」楊逸著

「人物月旦」とは中国後漢の許劭が毎月1日(月旦)に当時の人物の評価を著したことで有名になった「月旦評」を指します。 曹操もその対象としたことで知られています。 この本は中国出身で現在は日本で大学で教鞭をとる傍ら様々な著作を著している楊逸さんが…

「刀伊の入寇」関幸彦著

平安時代に大陸から刀伊という異民族が攻め込んできたということは、確か高校の歴史の教科書にも載っていた覚えがありますが、それについての詳しい説明も何もなかったようです。 同様に来襲してきた元寇は大きな扱いであったのですが、それほどまでの被害は…

「英国王室の食卓史」スーザン・グルーム著

王様の食事という印象は豪勢な料理が溢れるほど食卓に並べられているというものですが、これはフランス王室のルイ14世頃のイメージでしょうか。 イギリス王室も同様なのかどうか。 それは時代によってもかなり違うものでしょう。 そういったところまで、かな…

「ここまでわかった! 縄文人の植物利用」工藤雄一郎、国立歴史民俗博物館編

縄文時代と言えば人々は狩猟採集の生活を送っていたというイメージがあります。 しかしどうやらかなり早期から植物の栽培などは行っていたようです。 これまでは縄文遺跡からはなかなか植物自体の遺物は発見されず、よく分かっていなかったことが多かったの…

「世界最古の物語 バビロニア・ハッティ・カナアン」H・ガスター著

古代のメソポタミア文明では楔形文字が発明され、それを書いた粘土板が数多く発掘されました。 その多くは実用的な文書だったのですが、中には物語を描き残したものもありました。 この本はそういった物語をできるだけ復元し意味の通る形にしたものです。 書…

八代城築城400年で盛り上がるのかな。

現在の八代城(松江城)が築城されたのが1622年ということで、今年が400年にあたるため、それを期に盛り上がろうという思いが市内ごく一部に出ているようです。 昨日も式典があったとか。 しかし市内であってもまったくその雰囲気は伝わってきませんでした。…

「幕臣たちは明治維新をどう生きたのか」樋口雄彦著

明治維新によりそれまでの支配階層であった武士はその職を失いわずかな手切れ金で放り出されたも同然でした。 特にこれは幕府の家臣であった人々では激しい変動であったようです。 この本は日本近代史の研究者である著者が、多くの元幕臣たちのその後をたど…

「知識ゼロからの 国宝入門」小和田哲男監修

国宝と言われるものがあるということは知ってはいますが、実際に何が国宝なのかということはそれほどはっきり認識しているわけではありません。 観光などの折りに出会ったものの説明に「国宝」と書いてあると、そうなんだと驚くと言った程度のものです。 そ…

「民衆暴力 一揆・暴動・虐殺の日本近代」藤野裕子著

暴力はすべて国家権力に取り上げられた近代ですが、それでも時折爆発的に民衆が暴力をふるうということが起きます。 この本では日本の近代においてそういった民衆暴力というものがどのように起きたかということを振り返ります。 取り上げられている4つは、…

「地図と写真から見える! 京の都 歴史を歩く!」川端洋之著

平安遷都から明治になり東京に都が遷るまで、京都は日本の政治の一つの中心でした。 そこで起きた歴史的事件も非常に多いものですが、さてそれが今の京都のどこで起きたのかと考えてみると、それほど判り易いものではありません。 京都の盆地の中にできた都…

「地図で読む日本の歴史」「歴史ミステリー」倶楽部著

歴史上の出来事を年表と名前だけで見ていくと地域的な広がりが分からず感覚的につかめないことがあります。 そのためにも地図上でそれを確かめておくということは重要な事かもしれません。 しかし、教科書や参考書ではスペースの関係ですべてを地図で示すこ…

「半藤一利 語りつくした戦争と平和」保阪正康監修

太平洋戦争の経緯を中心に様々な証人と資料にあたってその真相を明らかにしてきた半藤一利さんは昨年亡くなられました。 半藤さんの語った言葉、そして数々の論客との対談の様子をまとめたもので、晩年の半藤さんの言い残したかったことが語り尽くされている…

「天皇の装束」近藤好和著

現在の天皇や皇族は通常は洋服を着ていますが、即位式などの特別な時には伝統的な衣装を着ています。 そういった天皇や公卿などの衣装のことを「装束」と言ったのですが、この本では摂関時代からの中世に確立された天皇の装束について詳述しています。 当時…

「図説 古代文字入門」大城道則編著

多くの古代文明で独自の文字が使われていたと言うことが判っています。 「図説」シリーズでは多くの歴史的な事柄について数多くの絵画や写真、地図などで判り易く解説されていますが、これらの古代文字についても同様に図版で見せてくれます。 編著者は古代…

「シンポジウム 日本国家の起源」討論者 石田英一郎、伊藤信夫、井上光貞、江上波夫、小林行雄、関晃

太平洋戦争終了まで続いていた国家からの皇国史観による日本歴史の強制という状況が敗戦によって終了したのですが、それに代わる史観というものも確立できないままであった時期に江上波夫氏により提唱された「騎馬民族征服王朝説」というものは日本歴史学界…

「戦国大名の戦さ事情」渡邊大門著

歴史を扱う映画やドラマでは相変わらず一番の人気が戦国時代のようです。 その中でのクライマックスは何と言っても戦さのシーン。 甲冑に身を包んだ騎馬武者が駆け回ります。 しかしどうやらその実像というものは、普通にドラマで見ることができるものとはか…

「平成史 昨日の世界のすべて」與那覇潤著

3年前に終わった平成の時代、まだ記憶に新しいものも多いのですが、その初期の頃はさすがにそろそろ遠くなっています。 そのような平成の時代を「平成史」として振り返る。 それを「歴史学者」與那覇潤さんが克明に描いています。 ただし、「歴史学者」と名…

「言論統制というビジネス」里見脩著

現代はすでに「自主規制」という名の統制状態であるという気もしていますが、この本の「言論統制」は現代を直接には扱っておらず、その描いている時代は太平洋戦争に至る頃と戦争中、そして戦後すぐの頃までの話です。 その当時の「言論」のほぼすべては新聞…

「イタリア遺聞」塩野七生著

古代ローマや中世のイタリア諸都市などを舞台にした長編小説の数々を書かれている塩野さんですが、この本はヴェネツィアの外交官の報告書についてあれこれ書かれた随筆をまとめたものです。 ヴェネツィアは中世から近世に至るまで地中海周辺の貿易で栄えた都…

日本古代の歴史の認識、今までに得た知識での構築。

実は現在、かなり古い本で江上波夫氏の騎馬民族王朝説について歴史学界でシンポジウムを行ったという記録を読んでいるのですが、(なかなか読み終わりませんが終わったら読了読書記録は書くつもりです)そこでおそらく歴史学界の主流派とおぼしき人々が主張…

「〈どんでん返し〉の科学史」小山慶太著

昔は迷信のような旧説がはびこっていたのが、徐々に科学的な新説が現れて取って代わり、今のような現代科学が成り立ってきたと言うのが一般的なイメージでしょう。 これは、特に子供向けの科学史解説などではすっきりとした説明をするためにあえて強く採用さ…

「奪われた『三種の神器』」渡邊大門著

「三種の神器」というと現代でもとても大切な宝物という比喩で使われます。 しかし、よく知られているように元々はこれは天皇家の累代の宝器であり、それを持っているということが天皇位にあることの象徴のように扱われてきたものです。 著者の渡邊さんは中…