外食、すなわち家の中ではなく、外の店に行って食事をすること。
と言っても、特別な時に服装も上等なものに代えて出かけるようなものもあり、また普段の食事をそれで済ませるような安価なものもあり、様々です。
それでは、外食というものはいつ頃から始まったのか。
江戸時代に金と権力が集中した江戸や大阪で、高級なものから庶民のものまで生まれたようです。
そういった「外食の歴史」というものは本書では第2部に様々な料理を出す店の歴史の一環として、和食・日本料理の最初の所に書かれています。
それでは第1部には何が書かれているか。
最初は著者の阿古さんの故郷でもある大阪の飲食店を食べ歩く描写から始まっています。
ついで、グルメブームそしてミシュランやHanakoなどのメディアが貢献した各種ブームについて書かれます。
さらに、外食全体の歴史とは別に、現在の外食というものを考える上で非常に重要なこの50年間、つまり大阪万博を大きな契機として生まれ変わった外食というものを描いていきます。
この、「大阪万博」というものの与えた影響は非常に大きいものでした。
実はこの年1970年は、「外食元年」とも言われます。
それまでもレストランなどはあったものの、チェーンのレストランやファストフード店というものは、この大阪万博での体験から全国に広まったとも言えるものでした。
万博には日本人の二人に一人が訪れたとまで言われましたが、そこでの食事体験というものは、世界の本格的な味に触れたということや、新しい食べ物を味わったという、衝撃的なものだったようです。
その結果、それを追いかけるような店が各地に誕生し、それが流行して食文明というもの自体が変化していったと言えるようです。
第2部は各種料理の歴史について、非常に細かく紹介されています。
読むのが大変なほどで、これだけの資料を集めて読み込んだ著者の努力は相当なものだったと思います。
項目としては、和食(日本料理)、和食(肉料理)、洋食、西洋料理、中国料理、アジア料理などに分けられていますが、それがさらに細かく分けられ、たとえば定番洋食の中でも「ロイヤルホスト」というレストランが取り上げられ詳述されるという具合で、これが各項目で続きます。
これ1冊を持っておけば、日本の外食について相当知ったかぶりができそうです。
コロッケと言う料理は、フランス料理のクリームクロケットを日本でジャガイモを使うポテトコロッケに代えて作られたと言われていますが、実はポテトを使うコロッケというものもヨーロッパの各所で作られているようで、たとえばオランダやポルトガル、イギリスなどにもジャガイモを使ったこの種の料理はあるようです。
それが、日本に伝えられた可能性もありそうです。
なお、洋食を始めた頃にはいろいろな試行がされ、今から見るととんでもない料理もありました。
「マカロニとイカの炒め物」「豚肉の芋クリーム和え」「キュウリのコロッケ」など、ちょっと変な料理のレシピが残っています。
こういった中で、生き残ってきたのが今に残る「ハヤシライス」や「コロッケ」なのでしょう。
いやはや、大変な力作でした。
読むのも疲れました。