「韓国史」とありますが、現在の韓国’(大韓民国)の領域のみを扱ったものではなく、半島全体を対象としています。
また、「史」といっても歴史的事実のみを扱うものではなく、神話的な内容も対象としており、そのために扱う年月も5000年という長いものとなっています。
著者の金さんは日本生まれで、比較民俗学が専門と言うことで、歴史学というよりは民俗学的な描写となっているようにも思えます。
そのためか、全体としてのバランスもかなり神話・古代の方に重くなっており、他の歴史書であれば記述が多くなるはずの朝鮮王朝時代、そして日本併合以降の時代の記述はごく短いものとなっています。
檀君神話の建国当初の話は実話では無いとはすぐに分かりますが、朝鮮の場合はその後も多くの国が現れては消えということがありますので、その各国の建国神話についても触れられています。
このあたり、歴史と神話との関係はすぐには見分けにくいものとなっています。
本書の中で記述が多いと感じたのは、高句麗、新羅、百済のあたり、各国の盛衰・興亡が扱われているところが詳しく描かれており、著者の興味もそこに強く惹かれているのでしょう。
この辺には当時の倭の国も大きく関わっており、その後の日本の歴史も影響を受けているのは確かです。
それに対し、韓国ドラマでは扱われることの多い李氏朝鮮については34ページ、そして日本植民地時代以降はわずか5ページときわめて素っ気ない扱いとなっています。
これも、著者の考え方なのでしょう。
結局、「韓国史」を見るというよりは「韓国神話」を見るような本だと言えます。