地震・津波、火山噴火、水害など自然災害というものは人間の営みなどはあっという間に崩してしまいます。
そのような自然災害を歴史にたどるとその傷跡の大きさに驚きます。
日本は特に自然災害の多い地域ではありますが、世界のその他の地域でも決して災害と無縁ではありません。
そしてその災害の発生により大きく歴史が変わったということもありそうです。
それでも自然災害の起きやすさは場所によって異なり、特に危ない地域、さほどでもない地域というのはあるのですが、では少ない地域に住めば良いのかと言うとそう簡単な話ではありません。
断層によって作られた地形は水の供給が良いため農業に向いています。
また、火山の噴出物は植物にとって栄養が多いために農作物の生育が良く人が集まりやすいところです。
もちろん、水の豊富な地形はまた水害の危険性も高いところです。
そのようなわけで、人の集まりやすい所では自然災害も起きやすく、長い歴史の中で常にその被害を受け続けて来たとも言えます。
この本では、そのような災害の歴史を古代ローマのポンペイ、1755年のリスボンの地震、1783年のアイスランドロキ山の噴火などから、東日本大震災に至るまで詳述しています。
著者のジョーンズさんは地震学者ということですが、地震災害だけに止まらず火山噴火や水害、台風まで幅広く記述しています。
また、大きな自然災害が起きた時には人々の意識も異常事態となることがあり、とんでもない愚行を繰り返しています。
そのような中から、日本の関東大震災の際に朝鮮人虐殺、1927年アメリカミシシッピ川大水害の際の黒人被害者の差別など、災害時だからと見過ごすことのできない問題についても言及されています。
火山活動には地域によって大きな違いがあるということはあまり知られていないかもしれません。
日本は世界の中でも非常に火山の多い地域ですが、その火山はどれもプレート同士がぶつかり合い沈み込む「沈み込み帯」に形成されるものであり、プレートが擦れ合うことでマグマを形成して噴火します。
しかし、アイスランドの火山は原理が異なり、ホットスポットという、地中のマントルが上昇してくるところで地上にあふれ出す形式のものです。
このような形式の火山はアイスランドの他に、ハワイ、イエローストーン、ガラパゴス、レユニオン島があります。
そのアイスランドにあるラキ山は1783年に噴火を始め、8か月の間溶岩を流しだし、1500平方キロの土地を15m以上覆い隠しました。
これで当時のアイスランドの人々の5分の1以上を死亡させたのですが、同時に大量の有毒ガスを噴出し、特にフッ化水素と二酸化硫黄は人々を殺害しただけでなく大気圏内に広がって太陽光を遮り寒冷化を世界中にもたらしました。
農作物の収穫が減少し世界的な飢饉の蔓延につながり、社会不安を引き起こしました。
中国で1975年に起きた海城地震は予知に成功したために多くの人々の命を救ったと共産党により宣伝されました。
しかしその翌年の唐山地震では予知は失敗し数十万人の命が奪われました。
現在の地震学では日時を指定した予知というものは不可能と思われていますが、当時の中国で地震予知を重視したのは、その直前に起きた文化大革命で学者たちもひどい迫害にさらされたことを深い関係があったようです。
関連する学界などで研究していた人々も、地震予知を口実にして何とか紅衛兵の追求を逃れるということがありました。
日本でも自然災害に対する姿勢と言うものはまだまだ不十分なところがあるのかもしれません。
関東大震災の時のような蛮行とは完全に無縁になったと言えるのか。
それも怪しいものなのかもしれません。
何時かは大変な災害に直面するかもしれないというのは宿命のようなものでしょう。
その時に、せめて理性的な対応をできるようにしたいものです。