爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

読書記録

「城郭考古学の冒険」千田嘉博著

現在は城郭ファンとでも言うべき人々が増え、あちこちの城跡に多くの人が押し寄せるようになっています。 しかし千田さん(現在60歳)が大学生の頃に「城郭を考古学的に研究したい」と考えた頃はそのような研究者は居らず、周囲からも大反対をされたそうです…

「不良老人の文学論」筒井康隆著

筒井康隆さんも本書出版時の2018年で84歳、もはやSF小説だけにとどまらず文学界全体でも長老の域に達するようになりました。 いろいろな小説などについての書評を求められることも多く、また文学賞の選考委員としても活躍されていました。 そのような書評、…

「中国ナショナリズム 民族と愛国の近現代史」小野寺史郎著

中国では共産党政府に対する批判が強まると国民のナショナリズムを刺激して反日運動などで不満を解消させているようにも見えます。 そういった中国のナショナリズムはどのように形成されてきたのか、伝統的中国の世界観から説き起こし、清王朝末期から現在に…

「先生!」池上彰編

学校や教育についての問題は大きくなっており、教師や生徒、親たちだけでは抱えきれないほどになっています。 この本では池上彰さんが教育関係者だけでなく多くの人に「先生!」というキーワードで思うところを書いてもらおうと依頼した文章を集めています。…

「『幕府』とは何か 武家政権の正当性」東島誠著

幕府といえば、鎌倉幕府、室町幕府、江戸幕府があり、武家が政権を取った時の政府の名前だというのが何となく学校の歴史で習ったというのが普通の人の感覚でしょう。 しかし歴史の専門家たちにとっては結構議論のあるところのようで、様々な学説が飛び交って…

「ウクライナ侵攻までの3000日」大前仁著

2022年2月にロシアはウクライナに全面侵攻を仕掛けました。 世界は、特に日本ではそこからウクライナ情勢に注目するようになったようですが、実際にはそれ以前からロシアのウクライナへの働きかけは行われており、戦争状態にあったと言えます。 2014年にはウ…

「マナーの正体」さだまさし、酒井順子、綿矢りさ他著

様々な「マナー」について、13名の方々がエッセーを書いてまとめたというものです。 著者は、さだまさし、酒井順子、綿矢りさ、角田光代、逢坂剛、東直子、鎌田實、高野秀行、藤原正彦、乃南アサ、荻野アンナ、竹内久美子、福岡伸一という面々です。 お題も…

「公孫龍 巻三 白龍篇」宮城谷昌光著

中国戦国時代の思想家として有名な公孫龍の生涯を描く宮城谷さんの新刊です。 すでに巻一、二は読みましたが、月刊誌で連載中のものが溜まったら単行本とするようで、なかなか出てきません。 巻三では主人公公孫龍は三十代、燕の国で商人として活躍していま…

「会社法入門 新版」神田秀樹著

会社勤めをしていた身としては労働法はまだ関心がありましたが、会社の基盤に関わる会社法というのはほとんど実感としては関係ないようなものでした。 退職してからは一応広く見渡せることとなりましたが、それでも会社法という法律が規定することというのは…

「食文化からイギリスを知るための55章」石原孝哉、市川仁、宇野毅編著

イギリス料理と言えば不味いので有名などとも言われますが、実際にイギリスを知る人から見ればそうでもないという話もあります。 いろいろと食文化については興味ある点がありそうなイギリスですが、歴史から現状まで様々な面からそれを説明しています。 イ…

「ドードーをめぐる堂々めぐり」川端裕人著

ドードーといえば最も有名な絶滅鳥とも言われています。 インド洋の孤島モーリシャス島にのみ生息していたのですが、ヨーロッパ人が上陸し発見されてからわずか後には絶滅してしまいました。 その間、わずかな観察例がありまた数羽が捕獲されヨーロッパやイ…

「寝るまえ5分の外国語」黒田龍之助著

この本の副題にもなっているように「語学書書評集」というものだそうです。 出版された書籍には多くの書評というものが書かれており、それは多くの分野の書籍に及んでいるのですが、「語学書」の書評というものは見たことがないとか。 そこで、語学書などを…

「老骨の悠々閑々」半藤一利著

昭和史、太平洋戦争史についての著述が多い半藤さんですが、これは様々な事柄についての随想を綴ったものを合わせた本です。 最初の「老骨の手習い」では、会社勤め卒業の後から習い始めた木版画の作品とそれにまつわる話を並べたもので、中国の漢詩を題材と…

「桃太郎は嫁探しに行ったのか?」倉持よつば著

図書館でこの本を見て借りてきたのですが、よく見なければ分からなかったのが、著者の倉持さんが(出版当時)中学生だったということです。 一見したところ本の構成から字面を見た感じでもまったく普通の文系の学術研究の発表といったもの(ただしちょっとく…

「ぼくらの戦争なんだぜ」高橋源一郎著

(まえがき)「かめきちの目」のkame710さんには本ブログもたびたびご訪問頂き、私の読書記録などにも目を通していただいて「私も読んでみたくなりました」といったお言葉を頂くことが多いのですが、今度はびっくりしました。 ちょうど私が読んでいたこの本…

「毛の人類史」カート・ステン著

著者のステン博士は医学部で病理学や皮膚科学を研究してきて、特に毛包の研究を専門に行ってきました。 しかしこの本ではそういった方向だけでなく「毛」について社会的、文化的な方向からも考察を加えています。 最初はやはり生物学的、医学的にみた毛とい…

「女のことば男のことば」小林祥次郎著

本の題名から受けた印象では、ジェンダー論から見た言語といった内容かと思ったのですが、中味はかなり違うものでした。 本書著者は江戸時代など近世の言語に興味があるようで、当時の色々な集団の内部での「隠語」というものを詳しく調べています。 その使…

「楽毅1~4」宮城谷昌光著

中国古代の歴史上の人物では秦末漢初の時代と三国志の時代のものが日本では特に人気が高いようです。 本書主人公の楽毅はそれほど有名な方ではないのではないでしょうか。 しかし中国ではかなり有名な人物であり、漢の高祖劉邦が尊敬する人物として挙げてい…

「第一次世界大戦史」飯倉章著

第二次世界大戦はまだ実感として残像を記憶していますが、第一次世界大戦は完全に歴史教科書の中のものです。 それもいい加減にしか勉強していなかったので、オーストリア・ハンガリー帝国の皇太子の暗殺で始まりヨーロッパ全体を巻き込んだ大戦となり、長期…

「全国学力テストはなぜ失敗したのか」川口俊明著

小学6年と中学3年を対象としてすべての生徒が受験する全国学力テストはまだ実施されています。 どこが最高とか最低とか、事前の準備が過度に行われるとかいったニュースは断片的に流れることもあります。 しかし、教育社会学者の本書著者の川口さんから見れ…

「大人のソロキャンプ入門」ヒロシ著

キャンプが流行しているようですが、ソロキャンプ、すなわち一人でキャンプをするというのも人気のようです。 それを実践しSNSなどで発信してブームの火付け役にもなったのが、一時全国的にも有名だった芸人「ヒロシ」さんでした。 今では一人キャンプ関連で…

「反『ゆとり教育』奮戦記」芳沢光雄著

著者の芳沢さんは若い頃は数学の中でも群論の研究者だったということですが、その後数学・算数教育についての仕事を主にしてきています。 そういった著者からみればただ教える内容を削るだけだったような「ゆとり教育」などは最低限理解すべき数学の初歩すら…

「超耐性菌」マット・マッカーシー著

人類は長く苦しめられてきた微生物による感染症に対し効果のある抗生物質というものを手にして感染症には勝利したかのように見えました。 しかしすぐに抗生物質は効かなくなりました。 耐性菌というものが出現しいくら抗生物質の投与を続けても効果がありま…

「あなたを変える 行動経済学」大竹文雄著

経済学に心理学的な要素を盛り込んだ行動経済学というものは、はじめの頃は批判されたり無視されたりしたようですが、提唱者がノーベル経済学賞を取るなど着実に広がりを見せているようです。 従来の経済学のように素人をけむに巻くようなこともなく、自らの…

「とてつもない数学」永野裕之著

数学というものの重要性はますます増大している世の中ですが、いまだに数学嫌いという人間がかなりの割合を占めているようです。 本書著者の永野さんは数学を愛しているとまで書いていますが、多くの若い人に数学の面白さを感じてもらいたいという思いが伝わ…

「笑犬楼VS.偽伯爵」筒井康隆、蓮實重彦著

まえがきは筒井さんが書いていますが、蓮實さんとはほとんど接点がなく、数回しか会ったことがなかったそうです。 しかしその二人が対談をし、往復書簡を交わして一冊の本を作ってしまいました。 よく聞いてみると、年齢がほとんど同じだけでなくかつては演…

「これが九州方言の底力!」九州方言研究会編

福岡や鹿児島出身の芸能人などが方言をネタにすることもあり、九州方言というものはテレビなどでも聞くことがありますが、その独特の語彙は古語の名残が残っているとか、アクセントも独特といったことが言われます。 この本ではそういった九州各地の方言を紹…

「サイエンス・ネクスト 科学者たちの未来予測」ジム・アル=カリーリ編

編者のカリーリさんはイギリスの物理学者にして作家やテレビキャスターなどもやっているそうです。 科学者たちが未来をどう見ているか。 それを色々な分野の専門家に対して質問し答えてもらったということです。 その分野というのが、人口・環境・気候、医学…

「会話の科学 あなたななぜ『え?』と言ってしまうのか」ニック・エンフィールド著

言語学という分野では、各種の言語を主に「書いて」研究していきますが、どうやら「会話」というのはまた別の科学が隠れているようです。 会話の途中で必ず入るのが「え?」といったものです。 英語で言えば「Huh」や「Uh」 こういった言葉は辞書には載って…

「セレンゲティ・ルール 生命はいかに調節されるか」ショーン・B・キャロル著

セレンゲティとはタンザニアの国立公園で、火山のカルデラの中にあるために他との行き来が難しくそこの独自の生態系が維持されています。 そこでは食物連鎖の系統が形成され有機物を分解する菌類や昆虫、日光で光合成する植物、植物を食べる草食動物、草食動…