内田樹さんがブログで書いたのが「東京ミドル期シングルの衝撃」という本の書評です。
blog.tatsuru.comこの本について詳しく書かれていませんが、守山みち子さん丸山洋平さんの編集で多くの著者の方が執筆したもののようです。
まず最初に書かれているように、人口減の問題についてはマンパワー不足やマーケットのシュリンク、年金や医療制度などについて語られることが多いのですが、最も深刻なのが「高齢化するシングルのアンダークラス化」だということです。
アンダークラスとは生活保護なしには暮らしていけない最貧困層のことですが、現在の「ミドル期シングル」すなわち中年の独身者たちが高齢化するとかなりの割合でそうなる恐れがあるということです。
その後に書かれているのはこの本で説かれていることではなく内田さんの持論のようですが、「でも、ミドル期シングルについては、行政もメディアもまるで無関心だった。
いや、無関心というのではない。むしろ、日本社会では久しく「家族を作るな」というイデオロギーが支配的だった。本書には言及されていないが、私の知る限り少なくとも1980~90年代においてはシングルであることは、都市生活者につよく勧奨された生き方だった。」
つまり一般に考えられているように、結婚して家庭を持つことが社会的にも政治的にも推奨されているように思われがちですが、実際には都市生活者はシングルであれと「つよく勧奨されている」ようだったということです。
たしかに制度的にはどうであれ、雰囲気としては「シングルであること」が快適でカッコいいことのように描かれているということがあったのでしょう。
家族を持ち汗水たらして働くことなど、どこかみじめに感じさせるような。
それに乗せられてしまったのが現在のミドル期シングル。
社会とのつながりはせいぜい職場だけとなれば、そこから引退すればもう社会とは無縁の存在になってしまう。
十分な年金収入があれば良いがそれも不十分な場合、多くは苦境に立たされます。
内田さんもあまりの衝撃にこの本の要約の部分が多すぎて肝心の書評があまり書けなかったようです。
付け加えとして、このような状況は中国の方がはるかにひどいことになるということ。
あちらではこれまでの親族の付き合いというものも崩壊し、年金もほとんどないということになりそうです。
そして、自身の活動として凱風館という武道塾について挙げ、このような地域のコミュニティとしても使える場を繰り広げる必要性について挙げています。
政治に期待することができないのは明らかですが、個人として何ができるか。
難しいのは明らかです。