学校や教育についての問題は大きくなっており、教師や生徒、親たちだけでは抱えきれないほどになっています。
この本では池上彰さんが教育関係者だけでなく多くの人に「先生!」というキーワードで思うところを書いてもらおうと依頼した文章を集めています。
27名の方々ということですが、有名な人もそれほど知られていない人もあり様々です。
名前は知っていた人としては、押切もえ、パックン、安田菜津紀、乙武洋匡と言った人がいます。
教育現場でも特に「先生!」と呼びかける場面をメインにするということで、印象深いシーンもありました。
教育関係の話ではないですが、医師の田中茂樹さんという方の文章では大学病院の診療臨床センターに相談に来た人に対するカウンセラーが扱われていました。
田中さんがその仕事を始めたのはまだ若い頃で、問題を抱えた子どもたちやその親との面接でその子の症状が無くなればそれでOKと張り切っていたそうです。
しかし先輩の医師たちから「田中先生は少し早く治しすぎですね」と言われました。
その意味がすぐには分からなかったそうですが、「症状はその人にとって大切なもので、簡単にとってしまっていいはずはない」という言葉に考えさせられました。
カウンセリングというものの深さを感じさせます。
武富健治さんの文では、学校や学校教育を「消費者的」にあれこれ言う風潮が高まっていることが書かれていました。
「消費者」は「お客様」とも言われます。
しかし「消費者」と書いた場合、これは相当に凶悪な言葉ではないかと感じています。
「摂取する」でも「活用する」でもなく、ただ「消費する」
これは「独裁者」や「破壊者」などと並んでもおかしくない凶悪なものではないか。
この言葉の持つ凶悪さ、傲慢さを感じずに学校教育を批判する。
「文句を言う」「不満を訴える」「自分の立場から思い付きの意見を一方的に提出する」
このような「消費者感覚」の意見というものが寄せられる先生や教育関係者の苦労も大きなものでしょう。
「先生!がんばって」というのが武富さんの文の結びでした。
私も学校教育はほとんど関係しませんでしたが(一度だけ大学で教壇に立ちました)家庭教師は何度かやってきました。
とてもじゃないけれど人を指導するなどという柄でもなし能力も不足でしたが、いい経験にはなったかもしれません。(自分としてはであり、相手はどう思ったか知りませんが)