爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「マナーの正体」さだまさし、酒井順子、綿矢りさ他著

様々な「マナー」について、13名の方々がエッセーを書いてまとめたというものです。

著者は、さだまさし酒井順子綿矢りさ角田光代逢坂剛東直子、鎌田實、高野秀行藤原正彦乃南アサ荻野アンナ竹内久美子福岡伸一という面々です。

 

お題もそれほど行儀作法に関わるといったものではなく、「愛を温めるマナー」とか「忘れん坊とマナー」など、日常生活のあれこれについてというもので、各題について著者が2ページ内で思う所を書いていくという体裁でした。

 

ダイエットのマナーという題で酒井順子さんが書いていたのが、「成功者はあまり成功したことを自慢しすぎないのが成功しない大多数の人たちにとって思いやりとなる」ということでした。

たしかにそうでしょうね。

多くの人がダイエットをすると言いながら、成功したと言えるのは何割いるのでしょうか。

 

平服のマナーで竹内久美子さんが書いていたのが、日本の動物行動学の草分けであった日高敬隆さんが亡くなった時のお別れの会についてでした。

会は亡くなってから3か月ほどたって開かれたのですが、案内状には「平服で」とあったそうです。

もちろん「平服」といっても普段着であるはずもなく、ホテルでのお別れの会ともなれば普通は男性はダークスーツ、女性もダークのスーツ系でアクセサリーは控えるといったのが常識とされています。

しかし日高さんという方は生前から「絶対に型にはまるな」というのが口癖だったということで、お弟子さんたちはそれぞれ凝った服装で現れたそうです。

もちろんそれ以外の出版社関係やお偉いさんたちはルール通りの服装だったとか。

 

追憶のマナーとして乃南アサさんは「子どもの頃に住んでいた場所を訪れた話」を書いていました。

20歳頃まで住んでいたのですがその後はまったく行くこともなかったそうです。

しかしたまたま近くに行って次の約束まで数時間空きができたので訪ねることとしました。

以前は田舎っぽい小さな駅を降りると柿畑や雑木林、竹藪が点在する家々の間にあるようなところだったのですが、新しい建物が無秩序・無計画・無節操に立ち並んでしまいました。

住んでいた家があったところに行くと、今度は昔の自分の感覚と今との差が大きくすごくヘンな気持ちになりました。

行かなければ良かったのか、いや見ておくべきだったのか。何日たってもずっと考え込んだそうです。

 

昔住んでいたところを後から訪ねたということは私も何度かやりました。

小学2-4年に住んでいた福岡を40年後に訪ねた時はあまりの変容ぶりに驚くばかりでしたが一応記憶とのつながりは取れました。

しかしその後の小学5-6年に住んでいた東京三鷹に行った時は町はそれほど変わったとも思えないのですが(駅前は除く)住んでいた家がどこだかまったく分かりませんでした。

生まれた時に住んでいた浦和に50年ぶりに行ったときは町の変貌は激しかったものの、これも何とか家の跡(今はガソリンスタンド)は分かりました。