中国戦国時代の思想家として有名な公孫龍の生涯を描く宮城谷さんの新刊です。
すでに巻一、二は読みましたが、月刊誌で連載中のものが溜まったら単行本とするようで、なかなか出てきません。
巻三では主人公公孫龍は三十代、燕の国で商人として活躍していますが、実際には燕の昭王や趙の恵文王に深く信頼され様々な国の大事に当たります。
時代はちょうど燕の昭王がその大望、国の仇の斉国に報いるという計画を果たそうとする頃です。
この時期のことについては、宮城谷さんの別の小説「楽毅」に非常に詳しく描かれています。
もちろん楽毅の方では公孫龍の名前もまったく出てきませんが、こちらでは公孫龍は表には出ないものの楽毅の後ろ盾として活躍することとしています。
描かれる時代は燕の斉国征討戦の始めまで。
これから楽毅は斉の城を次々と落としていくものの、その途中で昭王が亡くなるということになるのですが、この小説の方ではそこまで至りませんでした。
さらに次巻に続くのでしょう。
なお、中ほどでなんと「名家の公孫龍」が現れるという驚いた事態となりました。
戦国の諸子百家の中でも哲学的議論に特化した「名家」の中でも「白馬は馬にあらず」の議論で有名な公孫龍で、この小説の主人公とも同じ名前ですが、これが別人だったということです。
確かに燕や趙の王家の賓客となった公孫龍という人物がいたという歴史的記録は残っており、また諸子百家の一つ名家の公孫龍という人物も活躍したのですが、それが別人だったというのは驚きの説です。
さて、どうなりますやら。
まだ小説新潮での連載は続いているでしょうから、謎解きはまだかなり先の話になりそうです。