まえがきは筒井さんが書いていますが、蓮實さんとはほとんど接点がなく、数回しか会ったことがなかったそうです。
しかしその二人が対談をし、往復書簡を交わして一冊の本を作ってしまいました。
よく聞いてみると、年齢がほとんど同じだけでなくかつては演劇少年であり、その後も映画や演劇に興味を覚えていたり、文壇の主流とは少し距離を感じるような作風であったりという共通点も多かったようです。
対談では二人が共通して深く関わってきた大江健三郎氏について、そして互いの著書「時をかける少女」「伯爵夫人」についての相互批評。
さらには往復書簡では子どもの頃、青年の頃、映画や演劇への興味など多くのことについて話を進めてしまいます。
なお、はじめから話を出したわけでは無いのですが、ちょうど同じ頃にお二方共に一人息子を病で亡くすという体験をしています。
これは誰でもそうなってみれば心底厳しく身に応えるものだと思います。
筒井さんは若い頃からSF出身でそこからさらに本格化していきますが、蓮實さんは大学で研究を続けながらの作家生活、あまり交わることも無かった人生かもしれませんが、蓮實さんの最近の作品が意外に筒井さんの作風に近いのではと感じることがあったのでしょうか。
意外な取り合わせに見えて実は近いという、出版社の思惑がピッタリということだったのかもしれません。
私もこれまでは筒井さんの作品は読んだことがあったものの、蓮實さんは全く興味の対象外でした。
ちょっとかじってみようかと思わせられます。