爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「会社法入門 新版」神田秀樹著

会社勤めをしていた身としては労働法はまだ関心がありましたが、会社の基盤に関わる会社法というのはほとんど実感としては関係ないようなものでした。

退職してからは一応広く見渡せることとなりましたが、それでも会社法という法律が規定することというのは縁遠い感じがします。

それでも何となくこの本を手に取り読んでみようかという気になってしまいました。

しかしその中味はかなり高度なものでした。

おそらく法学や経済学を専門に勉強する大学生程度以上の人でなければ理解が進まないような内容かと感じられました。

 

会社法というものが制定されたのが2005年、その後リーマンショックを経て2014年に改正されたそうです。

会社法が制定される以前は、商法の会社関係の部分がその範囲を決めていたのですが、多くの問題点が明らかとなることで会社法として独立させることとなりました。

特に「株式会社」というものについて多くの規定を定めているようです。

ただしいまだに日本では株式会社以外の会社が多数を占めていますが、そちらの統制方法も徐々に近づけていこうとしているようです。(どうも”ようです”ばかりで申し訳ないのですが、はっきりと言い切る自信がありません)

 

会社法の内部は、ファイナンス分野とガバナンス分野に分れています。

株式会社といのは資金調達を株式によっていますが、そこが多くの問題の震源でもあります。

また世界的にコーポレートガバナンスが重要視され多くの議論がなされていますが、それについても法律で規定しようとしています。

 

株式会社の機関として、株主総会、取締役、取締役会、監査等々についても解説されています。

会社勤めの頃には関係はしていても遠い世界の話のように聞こえていましたが、ああそうだったのかと思わせるものでした。

 

そもそも株式会社の形態の特質は次の5つです。

1,出資者による所有、2,法人格の具備、3,出資者の有限責任、4,出資者と業務執行者の分離、5、出資持分の譲渡性

まあ言葉は難しいですが説明を見るとなるほどといったものです。

 

株主代表訴訟という言葉もよく聞くものでした。

役員等(これもちゃんとした術語です。役員【取締役・会計参与・監査役】、執行役、会計監査人をこう呼びます)が会社に対して善管注意義務や忠実義務に違反して損害を与えた場合には会社に賠償する責任があるのですが、これを立証するのも取締役会であるためにまともに機能することはありません。

そこで株主が法廷の場で役員等の責任を問い賠償させるように訴訟を起こすのがこれです。

この場合、株主は訴訟に勝訴したとしても会社への給付を要求できるだけであって自分には一円も要求できません。

株主代表訴訟は1990年代以前には実施されることはありませんでした。

しかしバブル経済崩壊以降この訴訟が多発することとなります。

大和銀行事件もうっすらと記憶にありますが、当時はほとんど理解もできませんでした。

 

法律はこうなっていますが、会社組織の実態や株式売買など現実はさらに先を行っているようです。