爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

歴史

「現代日本の歴史認識 その自覚せざる欠落を問う」中塚明著

1931年(昭和6年)の満州事変から日中戦争の深みにはまり、さらに各国との戦争に陥って敗戦したという、昭和の前半に時代はよほどの国家主義者でなければ「誤った時代」「軍部の暴走を招き無謀な戦争をした時代」というのが通常の認識でしょう。 しかし…

「医学探偵の歴史事件簿」小長谷正明著

神経内科医で病院長も勤められているという、小長谷さんの本は前にも1冊読んでいますが、中々の筆力と感じました。 sohujojo.hatenablog.com 前の本は病気について正面から説明するものでしたが、本書は様々な歴史上の人物の健康と病気、死についてエッセイ…

「高校紛争 1969-1970」小林哲夫著

学生運動が激しく燃え上がった1960年代の最後、大学ばかりでなく高校でもバリケード封鎖などの紛争が起こりました。 その記憶は強いものがあるものの、正確な経緯はすでに風化しているようです。 それを、少し年下の世代ですが多くの人々に取材して教育…

「ことばでたどる日本の歴史」今野真二著

日本語学を専攻し、日本語と歴史について研究されている今野さんの本はこれまでも3冊読んでいますが、今回も歴史と日本語について古い時代から近代まで広く取り上げています。 歴史というものは、文字以外の考古学史料でも補強されますが、やはり文字で書か…

「いかさま、騙しの技法 詐欺賭博の研究」井上馨著

この本はかなりの珍品と言えます。 著者はあの幕末から明治にかけて活躍し政府の要職も務めた井上馨と同姓同名ですが、別人で昭和初期に検事を務め、詐欺賭博について裁判記録や犯人からの直接の聞き取りを重ね、詐欺賭博というものの解明をしたという人です…

「家永日本史の検定」遠山茂樹、大江志乃夫編

もうすっかり忘れられているのかもしれませんが、元東京教育大学教授の家永三郎さんが執筆した歴史教科書が当時の文部省による教科書検定で不合格とされ、それに対して家永さんが提訴したという、家永教科書裁判ということがありました。 第3次訴訟まで行な…

「BC級戦犯裁判」林博史著

第二次世界大戦後に、戦勝国が敗戦国の戦争犯罪を裁くという戦犯裁判を実施しました。 A級戦犯(平和に対する罪)、B級戦犯(通例の戦争犯罪)、C級戦犯(人道に対する罪)の3種に分けられ、日本では政府や軍部の指導者などのA級戦犯を裁いた東京裁判が有名…

「内田樹の研究室」より「憲法について」

昨年のことになりますが、内田さんが日仏会館で開かれた「憲法講演会」で、なぜ日本国憲法の護憲派と言う人々は「弱い」のかということを話されたそうです。 聴衆の中に憲法学の泰斗、樋口陽一さんがいらしたので、内田さんも相当緊張されたということですが…

「日米開戦の真実」佐藤優著

大川周明という思想家が戦前活躍したそうです。 そのことについてはほとんど知りませんでしたが、民間人としてただ一人A級戦犯として逮捕され、極東軍事裁判(東京裁判)で公判中に前に座った東条英機のハゲ頭をペンペンと叩いたというエピソードには聞いた…

「内田樹の研究室」より、「比較敗戦論のために」

内田樹さんは、「寺子屋ゼミ」という活動をやってらっしゃるということですが、今年は「比較敗戦論」というテーマを扱われるそうです。 これについて、姜尚中さんと対談したものが掲載されています。 blog.tatsuru.com このテーマを取り上げようとしたのは、…

「なぜアメリカは日本に二発の原爆を落としたのか」日高義樹著

広島の原爆死没者慰霊碑の碑文に「安らかに眠ってください 過ちは繰り返しませんから」と書かれているのに違和感を持った人は多いと思います。 原爆の投下とその被害に対して、誰の「過ち」なのか。 原爆を市民が暮らす都市に投下するということはどういう意…

「ヒト 異端のサルの1億年」島泰三著

新人類、ホモ・サピエンスの誕生から今までの20万年については、色々な本を読んできましたが、それに先立つ霊長類はどのように進化してきたかということについては、あまり知ろうという思いが湧きませんでした。 様々な霊長類の研究をされてこられた著者の…

「歴史は実験できるのか」ジャレド・ダイアモンド、ジェイムズ・A・ロビンソン編著

科学の多くの分野では「実験」というものが重要です。 物理学や分子生物学では、これが最大の課題解決の手法でありそれ以外の方法がない分野も存在します。 しかし、多くの科学の分野では「実験」が不可能と考えられています。 とくに、「過去」に関わる科学…

「逆転の大中国史 ユーラシアの視点から」楊海英著

著者の楊さんは、中国内モンゴル自治区のオルドスの出身、モンゴル民族の血を引くということですが、北京で日本語を学んだ後、日本に留学、そして歴史を学びそのまま日本で研究を続けます。 中国国内ではできない歴史研究を日本から行なうということで、本当…

「会津落城 戊辰戦争最大の悲劇」星亮一著

一般に、戊辰戦争時の会津での戦いといえば、少年兵たちが自害した白虎隊の悲劇や、城下の戦いとなったときの婦女子の自害が有名で、会津を悲劇のヒーローと見る見方が多いようです。 しかし、歴史の動きをしっかりと見ていくと、幕府瓦解の時にあたり奥羽越…

「球技の誕生」松井良明著

球技と呼ばれるスポーツ、サッカーやテニス、野球といったものは、多くの人に好まれ、実施され、また観客を集めての試合が行われています。 その多くはヨーロッパ、特にイギリスで発祥したと考えられています。 サッカーとラグビーの起源についてはいろいろ…

「岡田英弘著作集Ⅶ 歴史家のまなざし」岡田英弘著

歴史家の岡田英弘さんの著作集を何冊も読んできましたが、その第7巻、歴史関係を対象としたものではなく、それ以外の文章を集めたものです。 歴史家として多くの文章を発表し、世の中に知られるようになると、あちこちから様々な題で文を書くことを求められ…

「岡田英弘著作集Ⅳ シナ(チャイナ)とは何か」岡田英弘著

歴史家岡田英弘さんの著作を集めた著作集の第4巻、シナに関する部分です。 最初の本の時に紹介してますが、岡田さんは中国という名称はごく最近の近代になって使われるようになった言葉であり、あの地域を歴史的に呼ぶにはふさわしくなく、諸外国でも用いら…

「奴国がわかれば『邪馬台国』が見える」中村通敏著

著者の中村さんは大学工学部を卒業した後、ゼネコンに定年まで勤めましたが、その後古代史を趣味として研究してきたそうです。 そのように、「古代史学会」外部の目から見るとその中では権威とされる大学者でもかなり疑いを持たざるを得ないような手法で結論…

「楔形文字を書いてみよう 読んでみよう」池田潤著

「書いてみよう読んでみよう」などと言われると、まるでハウツーものの本のようですが、これは「まったく実用とは縁のない」内容です。 なにしろ、人類最古の文字と言われるメソポタミア文明が生み出した楔形文字の使い方というものです。 楔形文字は、メソ…

「論語」貝塚茂樹訳注

「論語」は名前だけは誰でも知っているでしょうし、その中の文章はいくつも通用しており、それを会話の中にちりばめることは、教養を示すことになっています。 儒学の創始者である、中国春秋時代の孔子(孔丘)がその弟子などと語り合った内容を、おそらく弟…

「合理主義 ヨーロッパと日本」会田雄次著

著者の会田さんはかなり以前に亡くなってしまっていますが、かつては保守派の論客として有名な方でした。 太平洋戦争に従軍し、連合軍の捕虜となって収容所で過ごし、帰還してからその経験を「アーロン収容所」という本に書いたそうですが、読んだことはあり…

「OL誕生物語 タイピストたちの憂愁」原克著

著者の原さんの本は、以前に「サラリーマン誕生物語」というものを読んだことがあります。 sohujojo.hatenablog.com 大正から昭和の初期にかけて、サラリーマンと呼ばれるホワイトカラー事務職員という職業が始まって、現代に通じるその歴史が始まったのです…

「読み替えられた日本神話」斎藤英喜著

日本神話を利用したと言えばもちろん、国家神道として強制的に信じ込ませた戦前の体制なのですが、昔から類することはあったようです。 古事記・日本書紀に代表される日本神話は8世紀に成立しましたが、その後そのままの形で影響を及ぼしてきたわけではあり…

「九州王権と大和王権 中小路駿逸遺稿集」中小路駿逸著

古代から中世までの文学史が専門であった中小路さんですが、中国唐代の詩人が日本からの留学生などに送った詩の言葉の意味などを考えるうちにおかしなことに気づきます。 さらに、「九州王朝説」を唱えた古田武彦氏の主張に触れ、それまでの疑問が氷解します…

「水を石油に変える人 山本五十六、不覚の一瞬」山本一生著

戦争中に、海軍を舞台に詐欺事件があったということは聞いていましたが、その詳細は知りませんでした。 著者は東大の国史を卒業したものの、石油会社に就職した経歴を持つ山本さんです。 その後大学に戻り個人の伝記などの研究に携わったものの、かつての経…

阪神淡路大震災より24年 何を教訓とするか

1月17日で神戸を中心に大きな被害を出した阪神淡路大震災より24年が経ち、様々な行事が行われたという報道もありました。 その当時、神戸気象台の予報課長をされていた饒村曜(にょうむら・よう)さんがYAHOOニュースに記事を書かれていました。 news.y…

「英国メイドの日常」村上リコ著

「メイド喫茶」なるものが、とある場所では流行っているようで、黒いドレスに白いエプロンを着け、白い帽子をかぶった女性が出没するようです。 このスタイルのメイドなるものは、実は100年ちょっと前にイギリスで活躍していました。 他人の家の家事を行…

「奥州藤原氏五代」大矢邦宣著

平安時代末期に奥州平泉を中心に華やかな文化を誇った藤原氏が勢力を持ちました。 当時は大量に産出した金と、軍馬の供給で経済力を付け、平泉の中尊寺に残る金色堂はその当時の面影をわずかながらも見せてくれます。 この本では、その藤原氏の五代の歴史に…

「唐宋伝奇集(上)」今村与志雄訳

「伝奇小説」とは、少々不思議な感を抱かされるような状況を描かれるものということで、現代でも書かれることがあるのですが、実は中国の唐宋の時代に大きく発展した様式のようです。 その前の時代の六朝時代には「六朝志怪」と呼ばれる小説の形式が流行しま…