爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

歴史

「美の考古学」松木武彦著

これまでの考古学、歴史学では発見された遺物の利用法とか製造法、そしてその発展といった方向ばかりが重視されてきました。 そこに欠けていたのが「美」という概念です。 縄文式土器、弥生式土器といったものを見て、それを古代人はどのように感じていたの…

「ヴェルサイユの宮廷生活」ダリア・ガラテリア著

フランスの王制も頂点に達したと言える、ルイ14世の時代、ヴェルサイユ宮殿で繰り広げられた宮廷生活は華やかであった一方、宮廷作法(エチケット)というものが非常に強く意識されていました。 エチケットとはいえ、現在の日本におけるような言葉の使い方と…

「物語 アラビアの歴史」蔀勇造著

現在はサウジアラビアや湾岸諸国、イエメンなどの国々があるアラビア半島ですが、人類文明発祥の地ともいえるメソポタミアとエジプトに挟まれた地でありながらその大部分が砂漠であるために文明の中心地とはなりませんでした。 しかしその後イスラム教を興し…

「テオティワカンを掘る」杉山三郎著

テオティワカンとはメキシコシティの北東60㎞に位置する、紀元前後から600年頃まで栄えた古代都市ですが、ほとんど解明されていないということです。 その遺跡を若い頃から掘り続けたというのが著者の杉山さんです。 大きな「太陽のピラミッド」などが…

「ガリツィアのユダヤ人」野村真理著

ガリツィアというのは現在はポーランド南部とウクライナ西部を含む地域を指します。 その中心都市リヴィウの名はよほどの専門家でなければ知らなかったのですが、ロシアによるウクライナ侵攻では何度もニュースに登場するようになりました。 この地域にはか…

「古代東アジアの女帝」入江曜子著

東アジアでは男尊女卑の傾向が強かったのですが、それでも古代には女帝が出現した時がありました。 特に7世紀には日本、中国、朝鮮で女帝が君臨した時代でした。 それはどういった様相だったのか、日本の推古、持統など、朝鮮(新羅)の善徳、真徳、そして中…

「教養としての 日本古典文学史」村尾誠一著

日本の古典文学は1300年にわたり書き続けられてきました。 その幾分かは見聞きしていますが、詳細まではまるで頭に入っていません。 この本ではその文学史というものを時代を追ってみていきます。 分かったようなつもりでいたものでも、知らなかったこと…

「どんマイナー武将伝説」長谷川ヨシテル著

戦国時代の歴史好きという人はたくさんいますが、それでもその興味の対象は非常に限られた範囲に留まることが多いようです。 しかし、戦国の世では多くの人々が文字通り死力を尽くして戦い、その才能を使って生き延びようとしていました。 あまり歴史の表舞…

「古代中国 説話と真相」落合淳思著

説話とは神話や伝説、民話などを指しますが、その中に自分の思想を伝えるためという意思を持つものです。 古代中国には古くから多くの文書が残っており、その中には司馬遷の史記に始まる歴史書も含まれますが、その他にも様々な書があります。 史書として扱…

「ケルトの解剖図鑑」原聖著

ケルト人といえばヨーロッパの広い範囲に住んでいたものの、ローマ人やゲルマン人に追い払われ、アイルランドやウェールズにわずかに残っているといったイメージです。 しかし、その姿は研究が進むにつれてこれまでのものとは変わってきているようです。 こ…

「王の綽名」佐藤賢一著

ヨーロッパの王たちは「綽名」というものが広く用いられていました。 「太陽王ルイ」とか「獅子心王リチャード」といったものですが、他にも多くのものがあったようです。 これは、ヨーロッパの風習として同じ名前を持つ場合が多く、ルイ13世、ルイ14世など…

「絵画と写真で掘り起こす『オトナの日本史講座』」河合敦著

学校で習う歴史の教科書にはいろいろな写真や絵画が挿絵として使われており、そのイメージは今でも残っているという人も多いでしょう。 しかしそれらの絵画や写真の意味というものは正確には知らないのではないのでしょうか。 その中に含まれている意味を知…

「名画のコスチューム」内村理奈著

現代でもそうですが、中世から近世にかけての時代には職業特有の服装などがありました。 それには理由があることが多いのですが、今では忘れられていることもあります。 この本の著者の内村さんは西洋服飾史が専門ということです。 多くの絵画に様々な職業の…

「毒親の日本史」大塚ひかり著

最近「毒親」という言葉がよく使われています。 子供に肉体的、精神的、経済的な苦痛を与える親のことという意味で使われるようです。 言葉が流行っているから、その発生も最近のものかと思われるかもしれませんが、本書著者の大塚さんのように歴史を研究し…

「世界を変えた100のシンボル 上」コリン・ソルター著

いろいろなところで使われているシンボル、それを見ただけでその意味が分かるものとなっていますが、言語や文字ができる前から使われていたものもあったようです。 そのようなシンボルの歴史などを解説しています。 アスクレピオスの杖というシンボルがあり…

「女たちの本能寺」楠戸義昭著

本能寺の変では織田信長が明智光秀に殺害されました。 そしてそれは信長、光秀の周囲の女性たちにも大きな影響を及ぼしました。 織田家の人々は明智軍により殺された人も多かったのですが、そのわずか後には秀吉軍によって光秀は殺され、明智家の女性たちも…

「紙 二千年の歴史」ニコラス・A・バスべインズ著

紙というものは日常の生活のあちこちで人間を取り巻いています。 それがもし無かったら、人々の暮らしは全く違ったものとなっていたでしょう。 本書では紙の歴史について様々な方向から見ていきます。 その発祥は中国であったのでしょうが、そこから東には朝…

「琉球王国と倭寇」吉成直樹・福寛美著

琉球(沖縄)の歴史を見ると、15世紀に尚氏が統一王国を作り、さらにその後別の系統の尚氏が王朝を継いで明治時代に琉球処分で沖縄県とされるまで続きます。 先の王朝を第一尚氏、次を第二尚氏と言います。 第一尚氏の王国ができる前は、北山、中山、南山の…

「世界遺産と天皇陵古墳を問う」今尾文昭、高木博志編

古墳の中には「天皇陵」などとして宮内庁が管轄し、研究者などの立ち入りも厳しく制限しているものがあります。 しかしその「天皇陵」としての認定には多くの疑問もあり、中には実在の疑わしい天皇の陵墓とされているものもありますが、その疑問を晴らすため…

「宣教のヨーロッパ」佐藤彰一著

副題の「大航海時代のイエズス会と托鉢修道会」を見ると本書の内容が想像できます。 16世紀に始まるキリスト教改革運動に対抗してカトリックでも改革が進められその一環として異教徒への宣教活動を行うこととなります。 それはスペインやポルトガルの植民地…

「レジリエンス人類史」稲村哲也、山極壽一、清水展、阿部健一編

「レジリエンス」とは「危機や逆境に対応して生き延びる力」のことを指します。 人類に限らず生物というものは常に危機や逆境にさらされ、その中で生き延びてきました。 生き延びることができた生物のみが子孫を残すことができたとも言えます。 そこで、レジ…

「民主主義全史」ジョン・キーン著

今の日本は民主主義であろうとは思います。 しかし民主主義とは、そしてその歴史とはと言われるとそれほどはっきりと認識してはいません。 そして今民主主義は独裁国家や全体主義国家により脅威を受けているとも考えられます。 そういった民主主義について、…

「城郭考古学の冒険」千田嘉博著

現在は城郭ファンとでも言うべき人々が増え、あちこちの城跡に多くの人が押し寄せるようになっています。 しかし千田さん(現在60歳)が大学生の頃に「城郭を考古学的に研究したい」と考えた頃はそのような研究者は居らず、周囲からも大反対をされたそうです…

「約束の地」と人類史

イスラエルとパレスチナ難民の衝突が激化し現在のガザ情勢となっています。 第二次大戦後にイスラエルを建国させたことが問題を大きくしましたがそれ以前のユダヤ人の受難ということも影響しました。 「約束の地」という言葉がユダヤ教の聖書にも書かれてお…

「中国ナショナリズム 民族と愛国の近現代史」小野寺史郎著

中国では共産党政府に対する批判が強まると国民のナショナリズムを刺激して反日運動などで不満を解消させているようにも見えます。 そういった中国のナショナリズムはどのように形成されてきたのか、伝統的中国の世界観から説き起こし、清王朝末期から現在に…

「『幕府』とは何か 武家政権の正当性」東島誠著

幕府といえば、鎌倉幕府、室町幕府、江戸幕府があり、武家が政権を取った時の政府の名前だというのが何となく学校の歴史で習ったというのが普通の人の感覚でしょう。 しかし歴史の専門家たちにとっては結構議論のあるところのようで、様々な学説が飛び交って…

「第一次世界大戦史」飯倉章著

第二次世界大戦はまだ実感として残像を記憶していますが、第一次世界大戦は完全に歴史教科書の中のものです。 それもいい加減にしか勉強していなかったので、オーストリア・ハンガリー帝国の皇太子の暗殺で始まりヨーロッパ全体を巻き込んだ大戦となり、長期…

「食糧と人類 飢餓を克服した大増産の文明史」ルース・ドフリース著

人類がたどってきた道はその根本に食糧をどうやって得てきたかということと関わっています。 この数百年に人口が爆発的に増加しているのもそれを支えるだけの食糧生産があってこそのことです。 しかし何を食べていくかということはそれをどうやって得るかと…

「石と人間の歴史」蟹澤聰史著

著者の蟹澤さんは地質学、岩石学が専門の学者ですが、その調査のために世界各地を訪れるとそこで石や岩を用いた人間の営みに出会ってきたそうです。 人類の文化を石との関わりから見ていこうという本です。 世界各地には古代から作られてきた岩石を用いた建…

「古代ワインの謎を追う」ケヴィン・ペゴス著

著者のペゴスさんは特派員などを務めてきたジャーナリストで、特にワイン専門ではなかったのですが、ヨルダンに滞在していた時にたまたまホテルの部屋の冷蔵庫に備え付けられていたワインを飲む機会がありました。 普通はそのようなホテルに置いてあるワイン…