紙というものは日常の生活のあちこちで人間を取り巻いています。
それがもし無かったら、人々の暮らしは全く違ったものとなっていたでしょう。
本書では紙の歴史について様々な方向から見ていきます。
その発祥は中国であったのでしょうが、そこから東には朝鮮、日本。
そして西に向かえば中央アジアから中近東、ヨーロッパに至ります。
その各所について詳述しており、日本の和紙の伝統についても触れています。
また、そればかりでなくヨーロッパにおける製紙業の機械化、大規模化についてもかなりの章を割いています。
紙離れということが言われていますが、それは書物や紙幣についてだけのことであり、生活用品としての紙はますますその消費を増大させています。
トイレットペーパーや衛生用品など、特にアメリカでの消費量は膨大なものでありそれに費やされる資源量も大きなものです。
森林資源が貴重であるということは言うまでもなく今後の対応が必要となります。
日本においては和紙の原料としてコウゾ・ミツマタといった木の皮から作られていますが、ヨーロッパではかつては布の繊維から作られていたそうです。
布と言っても当時は綿や亜麻が用いられており、そのような布の使い古しを集めて細かい繊維としそれを漉きなおして紙としました。
木材のパルプを原料として工業化されるのは近代に入ってからのことでした。
ただしパルプ製の紙は品質が劣るため、布から作られた紙が高級品としては重宝されてきたようです。
アメリカでも紙幣は布起源の繊維が使われていました。
中国が近代化を始めた頃、その一番の弱点は紙の原料が簡単には入手できずあらゆる用途で紙の供給が難しかったことでした。
それに目を付けたのが張茵という女性で、1990年に台湾人の夫とともにアメリカで古紙の買い取りと中国への輸出の会社を設立し、大量のくず紙を中国に運び込み大儲けをしたそうです。
中国では近代化の進展とともに紙の需要が爆発的に高まったものの、パルプの国内生産はできず海外からの調達も困難だったために古紙が飛ぶように売れました。
折り紙についても1章を割いて記述しています。
折り紙という言葉自体は日本語のまま流通しているように、日本発祥のものですが、折り紙作家は海外にも多数出ており、特にアメリカでは数学者や工学者で折り紙作家を兼ねるという人も多いようです。
折り紙をコンピュータを用い解析するという技術も進歩しており目を見張るような作品も多いとか。
確かに紙というものは人類にとって非常に重要なものなのでしょう。
だからこそ今後の展開が気になるところです。