爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ケルトの解剖図鑑」原聖著

ケルト人といえばヨーロッパの広い範囲に住んでいたものの、ローマ人やゲルマン人に追い払われ、アイルランドウェールズにわずかに残っているといったイメージです。

しかし、その姿は研究が進むにつれてこれまでのものとは変わってきているようです。

 

この本ではそういった最新の研究成果を分かりやすくイラストや図にして示しており、頭に入りやすいものとなっています。

 

これまではケルト人は大陸のアルプスのふもとから西方に下りさらにブリテン諸島に渡ったと考えられていましたが、むしろ大西洋沿岸地域におそらく海洋文化として広がっていたケルト文化がヨーロッパの内陸にも広がっていったとみられます。

そうであれば、これまではあまり関係しないと考えられていた、イギリスやフランスに広がる巨石文化とケルトというものが実際にはつながっていたとも考えられます。

 

ドルイドは原始宗教として人身御供を行っていたというのが通説でした。

これはカエサルガリア戦記に記述があるためそう信じられていたのですが、これまでの考古学的な証拠からはその痕跡は見られません。

どうやら敵として戦っていたカエサルから見た偏見であったようです。

 

ピクト人の扱いも変わってきました。

これまではケルト語とは異なる先住民の言葉とされてきましたが、2000年代以降の学説ではケルト語に含まれ、カムリ語(ウェールズ)やブレイズ語(ブルターニュ)と近縁であると考えられるようになりました。

そのため、ブリテン島の先住民であるブリトン人と同族だったと言えるようです。

 

なお地域の名称もケルト語によるものが復活するようになっています。

それを覚えておいた方がよさそうです。

アイルランドはエール、ブルターニュはブレイス、スコットランドはアルバ、ウェールズはカムリー、マン島はエラン・ヴァニン、コーンウォールはケルノウ、といった具合です。

 

一時は忘れかけられたケルト文化ですが、それに注目し研究が進められるようになっています。

復活していくものもあるのでしょう。