最近「毒親」という言葉がよく使われています。
子供に肉体的、精神的、経済的な苦痛を与える親のことという意味で使われるようです。
言葉が流行っているから、その発生も最近のものかと思われるかもしれませんが、本書著者の大塚さんのように歴史を研究してきた人から見れば昔の方がよほど毒親だらけだったと言えそうです。
それは当然の話かもしれず、昔のエラい人、皇族、豪族、貴族、大名などなどは子供の数も現代とは比べ物にならず、数十人も子があるという例も珍しくありませんでした。
しかもその中には身分の低い下女などに産ませた子もいるとなれば、そのような子などはとても可愛がるということもありません。
さらに、子どもを自分や一族の繁栄の手段として使うということも普通に行われており、そのためには子どもの気持ちなど全く配慮もしません。
この本ではそういった実例を嫌というほど挙げています。
そこに出てくる人々は、別の歴史書では偉人伝、名君伝といった調子で出現する人たちも多く、歴史的、社会的に大きな業績を上げたりするためには子どもなどは利用するだけ利用するということが必要だったのかもしれません。
たとえば、仁徳天皇、持統天皇、藤原不比等、光明皇后、藤原道綱の母、後白河院、北条氏歴代、信長、秀吉、等々です。
実在の人物ではありませんが、源氏物語の光源氏などは相当ひどいことを実子・養子問わず行っており、現代であれば犯罪者となりかねません。
これにはどうやらモデルがあったようですので、そのモデルの行状だったのかも。
これは当時の社会というものが天皇に娘を嫁がせて子供を産ませるということが一族繁栄の基であるということであれば、子どもの気持ちも何もあったものじゃないということでしょう。
戦国時代は武力で一族挙げて戦っていましたが、平安時代は娘の受胎を武器に戦っていたということなのでしょう。
今の時代の多くの子どもたちは本当に幸せな育ち方をしているのかもしれません。