爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ヴェルサイユの宮廷生活」ダリア・ガラテリア著

フランスの王制も頂点に達したと言える、ルイ14世の時代、ヴェルサイユ宮殿で繰り広げられた宮廷生活は華やかであった一方、宮廷作法(エチケット)というものが非常に強く意識されていました。

エチケットとはいえ、現在の日本におけるような言葉の使い方とは少し違うようで、宮廷人の身分と職種によって非常に細かく定められた規範のことであり、それを少しでも違えると周囲の人々を巻き込んでの大問題となるような状況でした。

 

そのため、本書副題にもあるように「マリー・アントワネットも困惑した159の儀礼と作法」に見える、他国からやってきた王妃や外交使節、宮廷外の人々にとっては困ったものだったのかもしれません。

 

なお、その記述から見えてくるものは、身分と序列というものを誰もが強く意識して、それを違えたり、あえて崩そうとしたり、自らの身分の序列を高めようとする動きについて反発する貴族たちの行動というものです。

そこに当時の婚姻外の私生児誕生などといった問題も絡み、まあ死闘を繰り広げるわけです。

 

そういった問題に強く関わろうというのは日本でいえばうるさ型の家老たちといったイメージですが、フランスのブルボン王朝ではどうやら王様が一番気にしていたようです。

本書の記述の中でも、ルイ14世は率先してその作法の順守を臣下たちに強く押し付けているようで、間違いがあると不快感をあらわにして退席するといったことも見えます。

 

なお、この本は当時のうるさがた、サン・シモン公爵の「回想録」とダンジョー侯爵の記録などをもとに書かれています。

こういった回想録集には誰が何を間違え、どんな権限を主張し、誰と争ったかということを細々とつづられています。

 

しかし、国王や王妃の前で誰が座ることができるか、それもまともな椅子か折りたたみ椅子か、そういったことが記録され、それを間違えると宮廷から追放されるとか、とても今からは想像もできない社会だったようです。

 

他の方面からも有名な人々の出てくるエピソードですが、

楽家リュリはオペラ上演権を手に入れました。

その上演のためにパレ・ロワイヤルの使用を認めるようにコルベールに依頼するために、舞台装置担当のカルロ・ヴィガラニを当時国王建築物部総監だったシャルル・ペロー(”赤ずきん”や”長靴をはいた猫”を書いたことで知られる)に会わせます。

ペローはコルベールに巧みに説いて王の許可を取ったそうです。

 

身分の序列というのは複雑だったようです。

親王(Princes du sang)というのはもともとはユーグカペーの直系子孫すべてを指していたのですが、サンシモンの時代にはフランス王アンリ4世の叔父にあたるコンデ公ルイ1世の末裔とブルボン家の分家の者だけに限られるようになりました。

その人々と公爵家のどちらが優先されるか、それをめぐって両派が対立ということにもなります。

そこにさらにルイ14世の数多い私生児たちが絡みます。

ルイ14世は子供たちを何とか高位につけようとしたのですが、古い家柄の人々は反撃しました。

ルイ14世の死後には元に戻したようです。