爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「世界を変えた100のシンボル 上」コリン・ソルター著

いろいろなところで使われているシンボル、それを見ただけでその意味が分かるものとなっていますが、言語や文字ができる前から使われていたものもあったようです。

そのようなシンボルの歴史などを解説しています。

 

アスクレピオスの杖というシンボルがあり、杖に1匹の蛇が絡みついています。

これは太陽神アポロンの息子アスクレピオスが蛇に医術の秘密を教えてもらったというギリシア神話の中の話に由来します。

そこから、世界保健機関(WHO)などの医療機関のシンボルマークにも使われています。

なお、アメリカ軍の医療部隊の記章は「2匹の蛇がからみついた翼のある杖」になっています。

これは「使者の杖」と言われ、ギリシア神話のヘルメス(ローマ神話のメルクリウス)のシンボルです。

医療とは本来関係がないのですが、1902年にアメリカ軍医療部隊の記章デザインを任された将校が、アスクレピオスの杖とヘルメスの杖を間違えてしまい、2匹の蛇をデザインしてしまったのですが、そのまま使っているそうです。

 

キリスト教のシンボルとしてはもっとも有名なのは十字架でしょうが、ごく初期から使われていたシンボルがイクトゥスというものでした。

これは魚を単純化した図案です。

ギリシア語で魚のことをイクトゥスと呼んだのですが、それがキリスト教を表す意味で使われたのは紀元1世紀の例が最も古いものです。

古代ギリシア語でイクトゥスは5文字でつづられました。

ι(イオタ)、χ(キー)、Θ(シータ)、Υ(ユプシロン)、Σ(シグマ)がそれですが、これらはその頃のギリシア語で、イエスキリスト、神の子、救世主という意味の言葉の頭文字でもあったそうです。

いまだ迫害されていた当時のキリスト教徒が暗号として使っていたものです。

 

フルール・ド・リスとは、フランス王家やフランスの国家の紋章として使われています。

最初に使ったのは12世紀のルイ6世でしたが、その後の伝説では5世紀にフランク王国を統一したクローヴィス1世と結び付けられました。

その伝説の中ではクローヴィスがフランク族を率いてフランスに侵入したときに川の岸辺に咲いていたのが百合の花だったとされています。

しかし紋章学の専門家はそれはflower of lily ではなく flower of the River Lys すなわち「リス川の花」であろうとしています。

そしてリス川のほとりに多く咲いているのは百合ではなく黄菖蒲です。

紋章の図柄も百合というよりは菖蒲の類に似ているようで、どうやら途中で混乱してしまったようです。

 

男性と女性を表すシンボル、はそれぞれ円に矢印と十字が付いたようなものになっていますが、これはもともと火星と金星を表すものでした。

それを男性と女性を表すとしたのが、博物学者で近代の分類学を打ち立てたカール・フォン・リンネでした。

どこから発想を得たのかは分かりませんが、男性に火星のシンボル、女性に金星のシンボルをあてはめました。

さらにリンネは両性具有の動物のシンボルとして水星のシンボルをあてはめています。

これは現代のジェンダー問題の表現にも使われているということです。

 

シンボル一つにもなかなか奥深いものが在ると感じられました。