日本の古典文学は1300年にわたり書き続けられてきました。
その幾分かは見聞きしていますが、詳細まではまるで頭に入っていません。
この本ではその文学史というものを時代を追ってみていきます。
分かったようなつもりでいたものでも、知らなかったことが多いものです。
なお、この本では時代の区切りを西暦の世紀にしています。
もちろん世紀と文学の動きは何の関係もありませんが、だからといって平安時代とか鎌倉時代と区切ったところでそれで文学史がきちんと区切られるというものでもなく、かえって世紀で分けた方が適度な長さで均等になり良いようです。
第一章は「七世紀とそれ以前」から始まります。
文学というものがその時代から始まるというのは日本文学の歴史の古さを表しているのでしょう。
最初は「万葉集」です。
編集されたのは8世紀になってからですが、それ以前に作られたとされる歌も数多く収められています。
もっとも古いとされているのは仁徳天皇妃の磐姫が作ったとされるものですが、仁徳天皇自体が存在も不明ですから文字通りの歴史を表しているものではないのでしょう。
九世紀の項はその直前の平安京遷都(794)により平安時代の初期となりました。
その時代は「国風暗黒」と言われた時です。
国風が暗黒ということは「唐風謳歌」だったということです。
特に嵯峨天皇の時代には天皇自ら漢詩を作り、勅撰の漢詩集を作りました。
宮中の儀礼や服飾も唐風に揃えられました。
その反動からか、十世紀には勅撰和歌集である古今和歌集が作られ、他にも和風の文学がどんどんと世に出るようになります。
土佐日記、竹取物語、宇津保物語、枕草子等々、ようやく耳慣れた書名が出てきます。
源氏物語は十一世紀の項に記されていました。
当然のことながら、紫式部が書き記したものは残っていません。
しかし書いたものを誰かがどんどんと写し、それを広めていったものでしょう。
現在なんとかたどることができる最も古い写本が藤原定家によるものだそうです。
もちろんこれも紫式部の原本を写したものではなく、それまでに数多くの人々により写し伝えられたものを書き写したのでしょう。
定家自身もその内容に疑問を持ちながらもその通りに写したものと思われます。
その系統により異本というものも何種類かあり、定家の青表紙本以外にも河内本などが残っているようです。
各世紀の項目の最後にはいろいろなトピックも記されています。
文学史全般を通観してざっと概要を掴むには適当な本だと思います。