爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「琉球王国と倭寇」吉成直樹・福寛美著

琉球(沖縄)の歴史を見ると、15世紀に尚氏が統一王国を作り、さらにその後別の系統の尚氏が王朝を継いで明治時代に琉球処分沖縄県とされるまで続きます。

先の王朝を第一尚氏、次を第二尚氏と言います。

第一尚氏の王国ができる前は、北山、中山、南山の三国が鼎立した時代があり、それ以前には各地に豪族が割拠する時代があったと言われていますが、その頃のことは史料もほとんどなくよく分かっていません。

 

しかし目を東アジア全体に転じると別の事実が見えてきます。

日本で言えば室町時代以降、倭寇と呼ばれる人々が朝鮮から中国にかけての沿海地域に侵入するということがありました。

東シナ海などの海域を広く行き来した倭寇琉球には目もくれなかったとは考えられません。

 

そして、それら倭寇は初期の頃は確かに日本人が多かったものの、中期後期になるとそのほとんどが朝鮮人や中国人であったと言われています。

すると、琉球にやってきた倭寇も多くは朝鮮人などではなかったのか。

琉球王国の統一にもそういった人々が強く関与していたのではないかと本書著者は考えました。

 

ところが、日本でも沖縄でも歴史学界の人々は朝鮮の影響ということを忌避したがるようです。

沖縄の文化や遺物などを見ても明らかに朝鮮と共通のものがあっても、それを論じることはほとんどないようです。

 

そこを掘り下げて本書では琉球王国の歴史の中での倭寇、特に朝鮮の影響を見ていきます。

なお、琉球王国では成立当初から中国(明)に朝貢しその冊封体制のもとに中国からの影響が強かったといわれていますが、文化的な基調はヤマトとも中国とも違うものがあることは明白であり、独自の文化が流れていると考えます。

 

沖縄には王国時代に編纂されたという「おもろそうし」というものがあります。

一般的には祭祀に使われる言葉などをまとめたものとして文学的価値を言われることはあっても、それが王国の歴史を反映させているとは考えられていません。

しかし沖縄では神に仕える高位の巫女は王家と密接につながる存在であり、その唱える「おもろ」は王家の歴史を伝えるものであると考えました。

そしておもろそうしの言葉を解析していくとやはり朝鮮との関係が色濃く表れるということです。

 

おもろそうしの中では鷲を神聖化しその霊力を認めるものがあります。

鷲が王権の象徴であるという特徴は日本には見られないものですが、朝鮮では非常に色濃くみられるもので、新羅などの三国時代にすでに霊鷲寺といった仏教寺院が国家鎮護の役割を担っていたという事実があり、その影響が琉球にもあるという証拠となっています。

 

なかなか面白い着眼であり、真実を含むと感じさせるものでした。