爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

歴史

「石と人間の歴史」蟹澤聰史著

著者の蟹澤さんは地質学、岩石学が専門の学者ですが、その調査のために世界各地を訪れるとそこで石や岩を用いた人間の営みに出会ってきたそうです。 人類の文化を石との関わりから見ていこうという本です。 世界各地には古代から作られてきた岩石を用いた建…

「古代ワインの謎を追う」ケヴィン・ペゴス著

著者のペゴスさんは特派員などを務めてきたジャーナリストで、特にワイン専門ではなかったのですが、ヨルダンに滞在していた時にたまたまホテルの部屋の冷蔵庫に備え付けられていたワインを飲む機会がありました。 普通はそのようなホテルに置いてあるワイン…

「空と宇宙の食事の歴史物語」リチャード・フォス著

本書は「旅の食事シリーズ」の1冊であり、「船の食事」「鉄道の食事」は読みましたが、その最後に「空と宇宙」をまとめたものを読みました。 空の旅としては先駆的に気球で飛んだということはあるものの、定期的に旅客を乗せて運行したとなると20世紀初頭か…

「晏子 1-4」宮城谷昌光著

晏子といえば中国春秋時代の斉の国の宰相で、多くの人の尊敬を集めた人です。 その名は晏嬰、尊称として晏子と言われます。 ところが、この宮城谷さんの本では晏嬰だけでなくその父親晏弱についてもかなりのページを割いて描いています。 宮城谷さんは中国古…

「アイヌの歴史 日本の先住民族を理解するための160話」平山裕人著

アイヌと呼ばれる人々は、今では北海道にわずかながらに残っていると言われていますが、かつては東北から関東地方までも住んでいた形跡があります。 地名からアイヌ語の痕跡が見られるということもかなり広い範囲にあります。 その人々を追い払い、また同化…

「世界史の叡智」本村凌二著

著者は古代ローマ史が専門の歴史学者ですが、その時代にとどまらず古今東西の歴史上の人物で勇気、寛容、先見性が優れていたと感じる51人を選び、その事績と優れた面を紹介しようという本です。 選ばれているのはギリシャローマ、西欧だけに止まらないため、…

「古代エジプト全史」河合望著

ピラミッドやスフィンクスを作ったことや、ミイラの発掘、「エジプトはナイルの賜物」という言葉、クレオパトラで終わった古代エジプト、そういった断片的な知識しかない古代エジプトですが、それをざっと通して見ればどうなるか。 それを一冊の本にしてしま…

「和歌史 なぜ千年を越えて続いたか」渡部泰明著

和歌(短歌)という文学は遠く万葉の時代に生まれ1000年以上も続き、現代でも多くの人が作り続けています。 そのような和歌の歴史を、その重要な人物を取り上げながらまとめてしまおうという、非常に大それた?本です。 登場人物としては、 万葉の時代では、…

「日本の伝統とは何か」梅原猛著

日本の政界の中心部で右傾化が進み、日本の伝統ということが声高に言われるようになりましたが、梅原さんにとっては彼らの言う日本の伝統なるものなどは、高々明治時代以来むりやり作り上げてきた天皇中心の観点に過ぎず、日本の伝統などとは言えないものだ…

「ルールの世界史」伊藤毅著

ルールというものはこの社会のどこに行っても存在し、社会生活の隅々にまで関与してきます。 ルールと言ってすぐに思い出すスポーツもそうですし、社会生活のルールとしてはゴミ出しのルール、交通ルール、家庭の中では家事の分担ルール、法律の世界でのルー…

「蒙古襲来と神風」服部英雄著

鎌倉時代にモンゴルが攻めてきた二回の元寇では嵐に襲われて元の艦隊は全滅したと言われ、その嵐を「神風」だったとされたのが太平洋戦争での神風特攻隊にまでつながることになっています。 しかし実際にそのような状況があったのかどうか。 中世史が専門の…

「韓非子 悪とは何か」加地伸行著

韓非子は中国の戦国時代末期の思想家で法家に分類されます。 その伝記は司馬遷の史記に詳しく、韓の国の公族として生まれたものの学問で頭角を表わしその著作を読んだ秦の王、後の始皇帝が彼を迎え重用しようとしたものの、李斯という重臣に嫉妬されて讒言で…

「池波正太郎を”江戸地図”で歩く」壬生篤著

池波正太郎の小説の中でも、「三大江戸シリーズ」と著者が呼ぶのが、「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人梅安」です。 その中では現実の江戸の町の中で話が進行しているかのように詳細に描かれています。 池波自身が江戸時代の古地図を詳細に検討していたの…

吉野ケ里遺跡の発掘調査で石棺墓発見。しかし「邪馬台国」から離れられない報道。

佐賀県にある弥生時代の大規模遺跡の吉野ケ里遺跡で、これまで神社が建っていたために手が付けられなかった地域の神社移転が完了したため初めて発掘調査が行われ、首長クラスの墓と思われる大きいな石棺が発見され内部の調査が始まりました。 news.tv-asahi.…

熊本城石垣研究の専門家、下高大輔さんの講演を聞いてきました。

八代市立博物館友の会の総会が開かれ、その後に続けて講演会が開かれたのですが、今年の講師は熊本城の復旧工事事業にも関わる城郭石垣の専門家、下高大輔さん(熊本博物館学芸員)でした。 下高さんは近世城郭の研究者で石垣が専門と言うことで、元は滋賀県…

「女帝の歴史を裏返す」永井路子著

天皇の位には女性でもつけなかったというわけではありません。 大和時代から奈良時代にかけては多くの女帝が誕生しました。 しかし現代の感覚からは女帝の存在は「緊急登板」だとか「中継ぎ」であったという見方が支配的でした。 そのような風潮(学界も含め…

「太古の奇想と超絶技巧 中国青銅器入門」山本堯著

中国古代の殷や周の時代には青銅器が作られていました。 それは容器のようですが、日用品として使われたのではなく、祭祀に用いられたと見られています。 青銅器は錆びて崩れるということがないためか多く発掘されてはいますが、それでも限られた数しか存在…

「北条氏の時代」本郷和人著

NHKの大河ドラマで久しぶりに源平から鎌倉時代を扱いましたが、それは鎌倉時代を中心として日本中世史が専門の歴史家の著者にとっても関心が高いことだったようです。 とはいえ、歴史学も日々進歩しており、かつての通俗小説のような見方をそのままドラマに…

「一冊でわかる タイ史」柿崎一郎著

タイは「微笑みの国」などと呼ばれることもありますが、その割には反政府運動が起きているという話も聞きます。 また植民地化を免れた国であり国王が尊敬を集めているということも聞いたことがあります。 しかしその歴史といったことはあまり知られていない…

「日本の先史時代 旧石器・縄文・弥生・古墳時代を読みなおす」藤尾慎一郎著

日本列島にヒトが現れたのは今から約37000年前と考えられていますが、それからの時代区分はおおよそ旧石器時代、縄文時代、弥生時代、古墳時代と分けられます。 これは多くの考古学者たちでは共通した概念となっていますが、しかしそれらの時代の境界はどこ…

「『おくのほそ道』と綱吉サロン」岡本聡著

松尾芭蕉は忍者であり、あの「おくのほそみち」の旅行は隠密の偵察であったとする説があります。 芭蕉が伊賀の出身であることからそう考えられたとされ、他愛もない俗説と片付けられているようですが、実はそうではなく真実が隠されているというのがこの本の…

「ここまで変わった 日本史教科書」高橋秀樹、三谷芳幸、村瀬信一著

あまり変化のありそうもない歴史上の出来事ですが、それでも色々な史料が発見されたり解釈が変わったりということで思ったより変わっているようです。 歴史の教科書でも何十年も経てばガラリと書かれていることが変わっているということがあるようです。 こ…

再読「戦国武将の戦術論」榎本秋著

私の読む本の大部分は近くの市立図書館で借りてくるものですが、以前に読んだものをまた借りて来てしまうということが時々あります。 去年読んだものをまたということもあり、がっかりしますが、この本も以前に読んだことがありました。 まあ、10年近く前に…

「歴史の鑑定人」ネイサン・ラーブ著

日本でも骨董商とか古美術商といった人たちが「鑑定」ということを行なっていますが、アメリカでもそういった需要があるようで、この本の著者のラーブさんは「史料文書鑑定家」であり、その売買も行なっていてその業界ではアメリカでもトップクラスだという…

「はじめての西洋ジェンダー史」弓削尚子著

ジェンダーという考え方が大きく取り扱われるようになっていますが、その先進地域と言える西洋でもその歴史をたどると今の像とは違うものが見えてきます。 ただし、本書は「はじめに」でも記されているように、そのようなジェンダー史を通史として見ていくと…

「江戸の大名屋敷を歩く」黒田涼著

「江戸」すなわち現在の東京の江戸時代の姿ですが、時代劇などでよく出てくる江戸の町というのは下町の町人の住むところが舞台ということが多いようです。 しかし、実際には中央部の江戸城そしてその周辺の武家地が非常に大きな面積を占めており、中でも大名…

「税金の世界史」ドミニク・フリスビー著

税金というものは国家そのもののようでもあります。 この本では税金を通し、歴史の最初から現代まで、そして将来どうなるかといったことまで述べていきますが、「税金の世界史」というよりは、人類の歴史というものは税金がその本体だったのではないかと思わ…

「古代風土記の事典」瀧音能之、鈴木織恵、佐藤雄一編

風土記といえば現代でも各地の風物を記したものという意味で使われることもありますが、もちろんその発祥は奈良時代に朝廷の命令で各国に作成させた地域の文物や地誌をまとめたものです。 和銅6年(723年)に各国に風土記編纂の命が下されましたが、その後数…

「『オピニオン』の政治思想史」堤林剣、堤林恵著

オピニオンといえば意見とか世論といった意味の言葉だと思っていましたが、どうやら政治思想の専門用語として特別な意味があるようです。 この本はそのオピニオンに即して千年に渡る政治思想を論じるといったもので、題名から想像していた内容とは全く違った…

「中世イングランドの日常生活」トニ・マウント著

歴史小説などで読んだことがあっても、実際に昔の生活というものがどういうものかということは、なかなか想像しにくいものです。 この本では一応の導入として、「もしもタイムマシンで現代人が中世のイングランドに行ったら」という設定で書かれていますが、…