爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「教養としての 日本列島の地形と地質」橋本純著

プレートテクトニクスの理論によれば、日本列島はプレートが4枚押し合っているという世界的に見ても稀な特徴を持っており、そのために地震が非常に多くまた火山も集中しています。

また雨量も多く温帯でこれだけ降水量の多いところは珍しいほどです。

そのために洪水や崖崩れ、地震津波、火山噴火などの自然災害に多く見舞われるという点でも特徴的な地域です。

 

そういった日本列島に住んでいくためには、地形と地質について知識を持っておくということが必要と言えるほどです。

本書最初に紹介されていますが、「スーパー地形」というアプリがあり、それを操作すると手軽に地形の特徴などを見ることができます。

この本の後半部、各地域の目を見張るような地形などもそのアプリの画面がそのまま引用されています。

 

最初に日本列島の特徴が記されていますが、そこで言われているのが「日本には安全な場所はない」です。

 

水害などの被害が多いことは言うまでもありませんが、その要因が「プレート」の押し合いによって山地が列島の真ん中に盛り上がっているため、川も急流となります。

さらに地震だけでなく火山噴火も巨大なものとなれば一瞬で多くの地域が全滅するほどですがそれが絶対にないという地域もありません。

 

可住地と非可住地を分類した図が出ています。

この場合「可住地」とは標高500m以下で市街地、畑地、水田等の土地利用地域を指しますが、これを色分けして示すと日本列島のほとんどが非可住地となります。

イギリスやフランスなどでは大半が可住地であるのと見比べても日本が住みにくいことは歴然です。

しかも「沖積層」すなわち約2万年前以降に河川が運んだ礫や砂、泥でできた土地の分布を見てみると、日本の場合は見事に上記の「可住地」と重なります。

沖積層は軟弱地盤であり地震に弱く、またその成因から考えても水害の被害を受けやすいのですが、それが日本の場合は完全に可住地と重なります。

これもドイツの例を見ると、沖積層は西北部の海岸沿いにわずかにあるだけでほとんどが固い岩盤であることが分かります。

 

後半部の各都道府県の特徴的な地形を見ていく部分では、「地すべり地形」というものが頻繁に出てくるのには驚くというか、嫌になるほどです。

もちろん地すべり地形だからといって必ず危険ということではなく、過去に少なくとも1回は地すべりが起きたことがあるということなのですが、こういった地形の場所は将来的に発生する可能性はあります。

それをそこに住む人が知っているかどうかは起きた場合の被害の大きさを防ぐ上でも重要なことでしょう。

 

宮城県仙台市の北部の例として掲載されているのもそのような巨大地すべり地形です。

これについては仙台市ハザードマップにも取り上げられているのですが、ハザードマップでは地形情報が乏しいために少し分かりにくいということです。

その点、この本で紹介されている「スーパー地形」というアプリで見ると立体的に印象的に掴むことができるということです。

 

ただし、「そんな地すべりの多い土地になぜ人が多く住むのか」と思うかもしれませんが、それは逆です。

実は地すべりで地面が動くとそれによって土地が動かされて柔らかくなり、耕作しやすくなりますし、水も豊富ですので、居住と農耕に適した土地です。

そのため、たまに大きな地すべり被害があったとしても、そこは人が住むに良い土地だと見られるということです。

 

熊本県で取り上げられていたのは、やはり阿蘇山でした。

巨大カルデラを形成したカルデラ噴火の最後のものは9万年前ですが、阿蘇カルデラ内の小さな火山はそのあとに噴火してできています。

今盛んに噴火している中岳も2万2千年前頃から噴火し始め続いています。

高岳も中岳と同じ時期に噴火したのですが、その後は噴火することないために既に崩れ始めているそうです。

阿蘇カルデラの真ん中にポッコリとある米塚は印象的ですが、その噴火は西暦1700年頃でした。

本体はスコリアというマグマのしぶきが固まったものなのですが、それ以外に大量の溶岩も流していて、とても可愛らしいなどというものではなかったようです。

 

非常に面白い内容のもので、「スーパー地形」というアプリもスマホに入れてみました。

しかし、高度な使い方をするにはやはり有料となるようです。