ジェンダーの平等というものが日本ではかなり悪い状況で、世界的に見ても下位であるということは知られていることでしょう。
日本社会の至る所でそれが見られますが、特にひどいのが政界です。
女性議員の比率は世界的にも驚くほどの低さとなっています。
これにはいろいろな理由が考えられますが、中でももっとも大きいのが「政治は男のもの」という意識なのでしょう。
それが当の議員たちの頭も支配しているために世界からの要請があっても変えなければならないということになりません。
ということで、政治学者の三浦さんがその状況の分析と解説、さらにどうするべきかまで記し、「さらば、男性政治」と言っています。
ダボス会議で知られる世界経済フォーラムが2005年から公表している、ジェンダーギャップ指数という指標があります。
男女の格差を指標化しているということですが、その中で日本の順位は下がり続けています。
2020年版ではなんと世界153か国中121位ということになっています。
そしてその中でも大きく影響しているのが、政治と経済の分野での男女格差です。
議員の数であるとか、会社重役の数といった数字だけでなく、給料の額などの実質的な中身でも男女差が大きいことも特徴的です。
これには正規雇用と非正規雇用の待遇の格差が大きいことが左右し、現状では非正規雇用は女性が多いためにそういった数字が出てしまいます。
このような状況を改善していくには政治の力で法制化することが最も強く働くのですが、それをしようともしないのが男性社会そのものである政治の世界です。
そこから変えていかなければ社会全体も動きません。
それが端的に見えるのが選択的夫婦別姓制度などの制度改正を行うことに強く反対している勢力があることです。
保守派の中でも特に宗教右派という勢力がこれに特に反対しています。
この勢力が現状の政界でかなり大きな勢力となっていることが、女性の進出を推進するような法整備に反対することにつながっています。
ユニセフの調査によれば、日本は育児休業制度の充実度は41か国中1位なのですが、保育園の利用率は31位、保育の質は22位、保育料の額では26位です。
これは育児休業制度が少子化対策として整備されてきたためであり、ジェンダーギャップ解消という意味がなかったからでした。
しかも、育休取得率は女性ではかなり高いと言われていますが、そもそも雇用保険に入り出産後も雇用を継続する女性を母数としているためであり、実態では母親の3割弱しか育休を取得できていません。
日本の政治家がなぜ男性ばかりなのか。
そこには日本の選挙の様態が関わっています。
選挙民が候補者を選ぶのに、「地元にどれだけ貢献するか」が最大の要因となっています。
それを計る指標が「どれだけ顔を出すか」、地元の集会、祭り、入学式、卒業式、葬式などに顔を出すかどうかで地元への貢献度を計ります。
「うちの集まりに顔を出さないなら選挙支援しない」と公言する選挙民が多数です。
そして、それをするためには家庭でのケア(育児・家事他)に時間を取られる女性は極めて不利になるわけです。
つまり、そういったケアに全く時間を使わない男性しか政治家として当選できないわけです。
それがないのが参議院比例区などの議員であり、そこにはある程度の女性議員がいることがそれを示しています。
ジェンダー平等を政治の世界で進めるということは、多様性を広げるということです。
実は現状では男性の中でもごく限られた一団の男性だけが政治家となっており、とても多様性の低い集団です。
そのような議員から出る発想というのは限られたものでしかありません。
女性を数多く政治家とできるような社会であれば、男性もこれまで政治から距離を置いていた人が政治家となれるかもしれません。
男性政治というものから脱却するということは多くの人が納得できる政治に変わるということかもしれません。