これも特別長編として一冊が一つの話になっています。
この話もミステリー的要素が強く、謎を小出しにして読者も全く分からないままに話が進むというものですので、もしも読んでみようという方は以下の紹介文は読まない方が良いかもしれません。
平蔵がたまたま立ち寄った権兵衛酒屋ですが、その老夫婦が平蔵が出た後に浪人に襲われます。
それを助けた平蔵ですが、主人は自分も逃げ出して後をくらましてしまいます。
女房は浪人に切られてしまい、火盗改役宅に引き取って治療をするのですが、一言も口をききませんでした。
その女房お浜の身の上も分からないままで、調べていき過去を知る者に話を聞くとその者が襲われて殺されます。
さらに平蔵も浪人に襲われ辛くも切り抜けます。
権兵衛酒屋には五郎蔵おまさ夫婦などを詰めさせて主人たちを訪ねてくる者がいないか調べていたのですが、老年の武士がやってきました。
それを五郎蔵がつけて、六百石の旗本清水源兵衛と判明します。
しかしその帰途に五郎蔵はまた浪人に襲われますが、ちょうど居合わせた平蔵の旧友、乞食坊主の井関録之助に救われます。
実は録之助は清水源兵衛と青年時代に剣道場で一緒だった旧友でした。
火盗改めが探っていると悟った一味は平蔵暗殺を謀り腕利きの浪人高橋勇次郎を金で雇いますが、高橋は実は根は善良、廓で高橋の相手をしたおよねは火盗改に通報し平蔵が話をして味方につけます。
ちょうどその頃に薬種商中屋方に盗賊が押し込み家族奉公人すべてを殺して金を奪うという凶悪事件が発生します。
生存者はいなかったため手がかりがなかったのですが、調べていくと権兵衛酒屋の主人の前身、旗本永井家に中屋が出入りしていたことが分かります。
さらに永井家の現当主永井伊織の庇護者(実は実父)の大身旗本渡辺丹波守も中屋の薬を使っていたつながりがありました。
そこに火盗改めの捜査の手が絞られていきます。
危うくなったと悟った一味は平蔵暗殺を実行することとして高橋浪人を呼び出し、襲うこととなります。
すでに火盗改と打ち合わせていた高橋は迫真の演技で平蔵と渡り合い、平蔵を倒したかのように見せます。そしてとどめを刺そうというところで見張っていた同心が人殺しと大声を上げたため襲った一味は引き揚げますが高橋が間違いなく倒したと告げたため平蔵は亡き者としたと思わせることに成功します。
関係者を絞ることができ、盗賊一味の潜伏先も判明、次の襲撃先も見当をつけました。
その店に入り込ませていた引き込み役も分かり、それと盗賊一味のつなぎの連絡役が会っていたことから押し込み日時も判明、その場に出動して一網打尽とすることができました。