爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「鬼平犯科帳(十二)」池波正太郎著

火付け盗賊改め方を目の敵とする盗賊たちは与力同心たちも付け狙います。

当時非常に殉職の例が多かったそうです。

 

「いろおとこ」火盗改同心の寺田金三郎は、兄の又太郎が同心在職中に兇賊の襲撃を受け殺されたために家督を継いで同心となりました。しかし兄を殺した賊を何とか見つけ出し捕らえようとしますが逆に襲われてしまいます。

「高杉道場・三羽烏」若い頃にぐれていた平蔵ですが剣術の稽古だけは怠らず、高杉道場では最も腕が立つと言われていました。その頃に同じほどの腕前だったのがその後火盗改の手伝いもするようになる岸井左馬之助ですが、もう一人長沼又兵衛というものがいました。

しかし密偵の小房の粂八の営む料理屋にやってきた二人連れの客の話を盗み聞いた粂八はその盗賊らしい二人の会話の中で長沼又兵衛の名を聞き、それが盗賊の首領となっているらしいことも耳にします。

その盗賊一味が狙っているのが巣鴨の徳善寺という、金貸しでも稼いでいる寺らしいことを知った平蔵は身分を隠して寺内の小屋に過ごし、盗賊の打ち込みを防ぎます。

「見張りの見張り」密偵舟形の宗平は町でたまたま昔の盗賊仲間長久保の佐助と出会います。佐助は盗みではなく息子の仇を打ちに来たと話し宗平の助けを借りたいと求めます。その相手が杉谷の虎吉という盗人で、かつて大滝の五郎蔵の配下だった者でした。

五郎蔵は平蔵に報告することもなく虎吉を探りに行きますがそれを察した平蔵は密偵たちに五郎蔵や宗平を見張るように命じます。

結局は佐助に虎吉が息子の仇だと語った橋本の万造という者が息子を殺したのでした。

密偵たちの宴」火盗改の密偵として働いている、五郎蔵、粂八、宗平、伊三次、彦十とおまさといった面々はそれぞれかつては盗賊として多くの盗みをしてきたのでした。

それが火盗改に捕まり取り調べの中で平蔵の人間性に触れ回心しその密偵として働くようになったのですが、それでも盗みの快感は忘れられないようです。

押し入ったところの人々を皆殺しにするような畜生働きという兇賊がはびこる中、「盗みの手本」を見せてやりたいと思うようになります。

その目標は金貸しで有名な町医者竹村玄洞、しかしそこを探っている内にその医者の宅に女中として入り込んでいたのが盗賊の引き込みだということに気づき、なんとかその畜生働きは食い止めなければと平蔵に報告します。

「二つの顔」岸井左馬之助が病気をしたと聞いた平蔵がその見舞いに岸井の家を訪れた帰り道、歩いていた平蔵にある老人が声を掛けます。それは素人娘の売春を持ち掛ける「阿呆烏」というもので、その誘いを受けた平蔵は娘に会い話を聞きます。

しかしその場所となった料理屋の亭主は実は盗賊で、平蔵の顔も知っていた男でした。

下手に足がつくことを嫌った盗賊は阿呆烏の与平を殺害、娘おみよも殺そうとします。

それを察した平蔵はおみよを隠し、盗賊一味を暴きます。

「白蝮」平蔵の息子辰蔵は若い頃の平蔵同様に岡場所が大好き、金の続く限り通っています。辰蔵は他の男は目もくれないような変わった女が好みで、またも色も黒く顔は不細工、ただし肌だけはもち肌というお照という妓が気に入り通い詰めています。

そのお照の話で、女でありながら岡場所に来てお照を指名する客がいることを聞き、その女を辰蔵は付けるのですが、白扇を顔に命中させられあえなく撤退します。

それを辰蔵は平蔵に告げるのですが、平蔵はその話である盗賊のことを思い出します。

その白扇は有名な京都の逸品でそれを売る店が盗賊に襲われ白扇も奪われたことを記憶していたのでした。

その女盗賊の名が津山薫、その名を聞いた火盗改同心沢田小平次は顔色を変えます。

探索をすすめようやく津山薫を発見、その盗人宿も判明し火盗改が打ちこみます。

津山は沢田小平次が切り殺しますが、やはりかつて沢田が修行した松尾道場に居た娘で当時は沢田もかなわなかったほどの剣の腕でした。

「二人女房」本所弥勒寺前の茶店「笹や」のお熊ばあさんが昔から可愛がっていた高木軍兵衛は堂々たる体格でありながら剣の技や腕力はまったくだめだったのに、味噌問屋佐倉の用心棒として雇われ、平蔵の力を借りながらも盗賊の侵入を防いだ話は「用心棒」で語られました。

その後軍兵衛はそれなりに剣の腕も磨くようになっていましたが、町で偶然かつて悪の道に入りかけていた頃の知り合い、加賀屋佐吉と出会います。

佐吉から金で人殺しを依頼されますがすぐにその件を平蔵に報告、密偵たちの助けを借ります。

佐吉が殺そうとした相手は盗賊の首領、実はその彦島の仙右衛門は妾と江戸に来ておりそれを妬んだ女房から殺害を依頼されたのでした。

 

平蔵の息子辰蔵の変な?活躍ぶりは面白い話の構成となっており、作者はかなりそれを意識して組み立てているのではと思わせます。