爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「鬼平犯科帳(十八)」池波正太郎著

まだまだ続きます。

 

「俄か雨」久しぶりに市中見回りに出た平蔵は、目黒の先で俄雨に見舞われ、百姓家に雨宿りに入りますが、そこは無人の空き家のようでした。

そこにちょうど他の雨宿りが入ってきたので身を隠しますが、それが火付け改め方同心細川峯太郎と女でした。細川は火盗改め同心でも会計係でいつも役宅でそろばんをはじいているのですが、その日は非番でした。

空き家のようであるのを良いことに二人はさっそく着物を脱いで事を始めます。

ところがその家に住み着いていた浪人が帰ってきていきなり細川の尻を蹴飛ばします。

細川が気絶させられ、女を犯そうとしたところで平蔵が飛び出し浪人を倒します。

家に戻ってみると細川は意識を取り戻したとみえ既に逃亡していました。

そして平蔵が買っていた黒飴と塗笠も持ち去っていました。

翌朝、何食わぬ顔で出勤してきた細川を平蔵は一喝、腹を切れと命じますが、腹を切れなければ妻をめとれと同僚伊藤清兵衛の娘を嫁に貰うことを承諾させるのでした。

 

「馴馬の三蔵」火盗改密偵の小房の粂八は普段は船宿の主人として働いていますが、その得意客と一緒に訪れた料理屋で昔の盗賊仲間の馴馬の三蔵を見かけます。

粂八はかつて三蔵に大変な迷惑をかけたと思い込んでいました。

江戸の香具師の元締めの女と深い仲になり、二人で逃げ出したのですがその女を駿河の岡部宿の三蔵の女房の家にかくまってもらいました。

しかしその家が襲撃され、粂八の女と共に三蔵の女房も惨殺されてしまいました。

そのため三蔵には大きな負い目があると思っていた粂八は三蔵がその料理屋の物置に隠れる場を見つけてもそれを火盗改めに報告することができませんでした。

しかし、なんということかちょうどその料理屋に長谷川平蔵本人がやってきてしまいました。

粂八の顔色が変わったことを平蔵は見逃さず、彦十に命じて調べさせます。

ところが粂八が料理屋を見張っていると大騒ぎとなり三蔵が逃れ出てきますが、用心棒の浪人に切られたところを何とか救い出します。

重傷を負った三蔵から粂八は話を聞くのですが、なんとその料理屋は盗賊瀬田の万右衛門のアジトであり、三蔵は盗みのためではなく万右衛門に敵討ちをするために忍び込んだのでした。

岡部宿で三蔵の女房を殺したのは実は万右衛門であり、粂八の女はその巻き添えとなったということを明かすのでした。

それを粂八は平蔵に報告、すぐさま配下を連れて料理屋に打ち込み、瀬田一味を捕縛したのでした。

 

「蛇苺」平蔵は久しぶりに亀戸天神の近辺の見回りに出ますが、夜になり辻斬りが町人を襲うところに出会い助けに入ります。

平蔵一人だけのため、相手を脅すつもりで名を大声で名乗りますが、それで辻斬りは逃げたものの切られて傷を負った被害者も姿を隠してしまいました。

その被害者はそのすぐ前に平蔵も食事をした料理屋の客であったことを思い出し、料理屋に戻って店の者の話を聞きますが、当人は初めての客であったものの連れが何度か来店した「張替屋」であることを思い出したので同心密偵に探索を命じます。

張替屋は実は盗賊の針ヶ谷の宗助、そして宗助がつなぎをしていたのが料理屋川半に引き込みとして入っていた女賊おさわでした。

しかし宗助からおさわを寝取っていたやはり盗賊の首領沼目の太四郎が宗助とおさわ両方を殺しその持ち金を奪おうとしていたのでした。

そこまでも調べを進めた火盗改は一気に打ち込み盗賊たちすべてを捕らえました。

 

「一寸の虫」火盗改密偵の仁三郎は町で昔の知り合いの鹿谷の伴助と出会います。

しかし二人がうどん屋で話をしていたところを同心山崎庄五郎に見られていました。

山崎はそのことを平蔵に報告せずに自分だけで手柄にしようとします。

伴助と再び会った仁三郎は盗みの手伝いを持ち掛けられますが、その相手が二人が昔配下となっていた船影の忠兵衛という盗賊の娘の婚家でした。

忠兵衛は盗みはしても非道はしないという盗賊で、その掟を破った伴助と仁三郎を叩き出したのでしたが、その復讐をしてやろうというわけでした。

仁三郎はどうやってこの苦境に対するか苦悩するのでした。

一人だけなら伴助を殺してしまうことも考えたのですが、すでに山崎に知られているためそれができません。

困り果てていた仁三郎ですが、たまたま平蔵はその目標の菓子屋に買い物に入っておりそこで怪しい客を見つけて同心に調べさせていたのでした。

しかし伴助一味の盗みは進んでおり、実行の日となってしまいました。

仁三郎はしかし盗賊が勢ぞろいし店に押し入るというその場で伴助を一気に刺し殺し自分も胸を刺して自殺してしまいます。

 

「おれの弟」平蔵が久しぶりに立ち寄った料理屋橘屋忠兵衛でかつての剣術仲間の滝口丈助を見かけます。それも女連れでその女も平蔵が見知っていた、表具師今井宗仙の後妻お市でした。

丈助は貧しい御家人の息子で平蔵より年下とあり、平蔵は弟のように可愛がっていたものでした。

その後も剣の道一筋のはずでしたが、それが人妻との密会、さらに後をつけると刀の研師のところに寄るのですっかり平蔵は怪しみ探ってみることとします。

丈助の住まいを見張っていると朝早くにすっかりと身支度を整えて出かけました。

雑司が谷南蔵院の裏の空き地に来ると襷をかけ、すっかりと決闘の身支度となります。

しかしその時に彼方の木陰から矢が射かけられ丈助の胸を射抜きます。

さらに5人の侍が抜刀し駆け現れました。

平蔵や小柳たちも駆け寄り、激闘をして追い払います。

しかし丈助はすでに即死の状態でした。

その後丈助の住まいに行くと平蔵宛ての書状が残されていました。

滝口丈助が代稽古を務めていた高崎道場の当主高崎忠蔵が高齢となったため、丈助に後を譲りたいといったところ、門下であった七千石の大身旗石川筑後守の子息源三郎に反対され、源三郎は丈助に果し合いを申し入れたということです。

しかしその場に源三郎は配下を連れ、しかも弓矢も持ち込み丈助を討ちました。

その事実を知った平蔵は上司の京極備前守に訴え源三郎の処分を頼みましたが、石川筑後の幕閣での勢力からうやむやにされてしまいます。

後日、平蔵は源三郎を討ち果たし丈助の恨みを晴らします。

なお、丈助死亡の件はお市にも伝えますがその場にお市は夫を連れてやってきます。

お市が浮気の相手というのは平蔵の勘違いで、実はお市と丈助は腹違いの兄弟だったということで、平蔵が見かけた時は丈助が決闘に行くということを伝えた場だったということでした。

 

「草雲雀」同心細川峯太郎のかつての恋の相手、芝白金の茶屋の後家お長は隣の小間物屋の主人が旅商売から戻ったのに会いますが、そのあまりにも憔悴した様子にその女房の浮気を知ったと見ぬきます。

ちょうどその頃、当の細川は平蔵より会計係から探索方への配置替えを申し渡され、現在探索中の盗賊の人相書二十枚余りを暗記します。

翌日は非番とされたため、父母の墓にそのことを報告しようと墓参りに行くのですが、それがちょうどお長の茶屋の先にありました。

新妻には満足している細川ですが、かつてのお長にも未練を感じてしまいます。

ところがそのそばで話をしていた二人組の男の一人が昨日見せられた人相書そのままだったのです。

もう一人はお長の見かけた隣の男、そしてその話し相手が人相書通りの鳥羽の彦蔵でした。

隣の男もやはり盗賊で一人働きの瀬川の友次郎というものでした。

細川はその件を手紙に書き、近くの茶店の者にそれを火盗改役宅に届けさせます。

するとすぐに平蔵自らやってきて、さらに同心たちも呼び寄せますが、その時その家では異変が起こります。友次郎の女房おきぬと鳥羽の彦蔵が結託し友次郎を殺害してしまったのでした。

それに気づいた平蔵たちはすぐに討ち入り、彦蔵たちを捕らえます。

しかし、細川がかつての女を忘れられないことを見抜いた平蔵に後でこっぴどく叱れれることとなります。

 

この巻では木村忠吾の出番はほとんどなく、代わりに細川峯太郎が大活躍?でした。