学校でのいじめというものは、かつてのような身体的なものではなく、仲間外れにしたり無視したりといった精神的なものが主流となっています。
そしてそれにネットというものが深く関わってきているため、親や教師から見にくいものとなっているようです。
そういった「ネットいじめ」というものについて、本書編著者の佛教大学教授の原さんを中心に多くの研究者たちが調査研究を行い、その結果をまとめて一冊の本としたものです。
実際に大掛かりな児童生徒や親、教師たちへのアンケートやインタビューなども行われ、それを統計的にまとめているものもあり、そこから引き出されるものは数多くありそうです。
いじめ自体は小学校からあるのですが、やはりネットいじめとなると高校が最も多いようです。
そしてある調査ではその高校の「学力」と「ネットいじめ」の関連を見ています。
中学までは公立では学力差はない建前になっていますが、高校ではどこでも学力によって編成されています。
その偏差値とネットいじめの出現率が関係するかどうか、それを調べていました。
するとやはり、というかなんと言うか、高偏差値の進学校では比較的ネットいじめが少なく、低いほど多いという傾向が見られました。
ただし、その発生状況は複雑で、偏差値中位の学校では大きく差がありました。
地域によっては学力にかなり差がある生徒が集まる学校もあり、そういったところほどネットいじめの発生が目立つということもあるようです。
また特異的にその発生が少ないという学校もあり、そこにこの研究グループの人たちが見学して話を聞いたところ、やはり教員たちの意識として生徒の人権を大切にするということが重視されており、それが生徒にも理解されていることがいじめ発生を防いでいるということでした。
なお、この研究においては実際に児童生徒たちにアンケートなどをしているのですが、内容が内容でもあり、ストレートに「あなたはネットいじめをしたことがありますか」などと聞くわけにもいかず、その文面には相当な配慮がされているようです。
「ケータイを手放すと不安か」「レスは早い方か」「LINEはずしをするか」「既読無視をするか」といった、相手の警戒を高めないような質問を重ねて、ネットいじめの発生やその傾向を見ていくといった手法がとられています。
こういった問題に関して出版された一冊の本についても語られていますが、それが「りはめより100倍恐ろしい」というもので、木堂椎という方の書いた本です。
この「りはめ」というのは「いじ”り”」は「いじ”め”」よりという意味で、いわゆる「いじめ」より「いじり」というものの方が危険だということです。
ちょっとしたふざけと見られるような「いじり」ですが、それが大きく相手を傷つけることもあるのに、やった方がその自覚がほとんどないということでも問題でしょう。
ずっとスマホを触り続けなければいられないことを「ネット依存」と捉えられています。
これもまでも「ネット依存尺度」なるものが作られていますが、それは主に薬物依存やギャンブル依存を参考に作られたものでした。
これは現在の子どもたちのネット依存を見るには少し違うところがあります。
ゲーム依存や動画依存といったネット依存を見るようなものであり、主流であるSNSなどのコミュニケーション系の依存は別物です。
ネットに依存しているのではなく、その向こうにいる人間に依存するという、人間関係を考えていかなければならないということでしょう。
ネット社会というものが全く理解できない年寄りにとっては想像もできない社会となっているということだけは分かるような話でした。