爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「生き物たちよ、なんでそうなった!?」五十嵐杏南著

生物の中には「どうしてそんな恰好なの」と言いたくなるようなものがあります。

だいたい、そもそも人間というものが体毛がほとんどなくなり直立二足で歩き回るという変な動物ですし、やたら動きの遅いナマケモノ、卵で生まれるカモノハシ、首の長いキリンや鼻の長いゾウなど、いろいろです。

そういった生物の進化の不思議を解説しています。

 

チョウチンアンコウは大きいのはメスで、オスは非常に小さいものです。

その中でもいくつかの種ではオスはメスの体に取りつくと組織も一体化してしまうものがあります。

そうなると精巣以外の臓器は溶け、最終的には呼吸をする精子袋に化してしまいます。

チョウチンアンコウの住む深海底ではメスと巡り合う機会などほとんどなく、もし見つけたらしがみついて離さないというのが子孫を残す最善策です。

ただし、そのような完全依存型になるのに邪魔になるのが免疫反応です。

別の生体が一緒になるといっても免疫反応があると体の異常が起きます。

しかしオスの遺伝子を調べたところ、免疫反応を起こすための遺伝子を持っていなかったそうです。

それがなしで生き残ることは難しいはずですが、今のところ生体防御機構は分かっていないようです。

 

トウガラシの辛さは格別のものですが、それを感じるのは哺乳類だけで鳥類には影響がないそうです。

植物の種は動物に食べられて広がることで生育場所を広げるという働きをします。

トウガラシの種は小さくて柔らかいので、鳥類に食べられるのがちょうどよく、哺乳類に食べられると消化されてしまいます。

そこで哺乳類に食べられないように作用するのがカプサイシノイドでした。

哺乳類は異常な暑さを感知するタンパク質を体内で合成しており、カプサイシノイドはそれに作用するので焼けるような辛みを感じます。

ところが鳥類はそのタンパク質の構造が違うためにカプサイシノイドには反応しないのだそうです。

トウガラシを食べてそのカプサイシノイドで痛い目にあった哺乳類はその後は食べないようにしたはずなのですが、人間という変な動物がそれを好んで食べるようになるとはトウガラシも期待外れ?

 

尻尾のないのが人間の特徴ですが、他の尻尾のない類人猿6種と尻尾のあるサル9種のDNAを比較した研究がありました。

するとある一つの遺伝子の変異が尻尾の形成に関係のあることがわかりました。

その変異は遠い昔にある一匹の類人猿に起き、それが広がっていったと考えられます。

これで類人猿は危険な代償を払うこととなりました。

尻尾のないことで脊髄の先天異常のリスクが高まり、人間の場合では二分脊椎症や無脳症といった異常症を引き起こし、その割合は100人に1人程度といわれています。

尻尾のあるサルではこのようなことは起こりません。

それでも尻尾のない方が何らかのメリットがあったために広まったはずですが、今のところそれが何だったのかは不明だそうです。