昔の人は人間の思考というものが心臓で行われていると考えていたようですが、現代ではそれが脳であることを疑うものはいません。
しかし脳の働きということはそれほど理解されていないことなのかもしれません。
この本ではノルウェーの神経科学者の著者が分かりやすい語り口で脳に関わるあれこれの話題を次々と解説してくれます。
その内容は大きく区分され、「思考」「パーソナリティ」「記憶・学習」「GPS」「感じる」「知能」「マルチタスク」「文化」「摂食」「薬物依存症」と多岐にわたっています。
パーソナリティは非常に幅広いものであり、極端なものでは異常と見られるものもありますが、病気とは言えないものです。
しかし社会にとっては困った場合もあり、連続テロ実行犯が精神障害か、パーソナリティ障害かということが裁判の行方を左右することもありました。
ノルウェーでは精神障害と判定されると刑法上の罪は問えないということですが、パーソナリティー障害ならば裁判を行うことができるからです。
パーソナリティー障害には多くの種類がありますが、「反社会的パーソナリティー障害」はかつてはサイコパスと呼ばれていましたが、他人への共感の欠如というのがその大きな特徴です。
超人的な記憶力と持つが一般人がもつ能力が欠けている人がいます。
サヴァンと言うそうですが、彼らは情報のふるい分けをする左脳に障害や損傷があるのではないかという仮説があるそうです。
片目で1ページずつ、一度に本の2ページを読みすべてを詳細に記憶できる人がいました。
その人について描かれた映画「レインマン」はアカデミー賞を受賞しました。
方向感覚をつかさどる脳の部分は海馬ですが、ロンドンのタクシー運転手は徐々に海馬が発達していくそうです。
こういった脳内GPSとでもいう能力は使わなければ衰弱していきます。
携帯電話のGPS機能に頼りすぎると脳が衰えていきます。
高齢になるとアルツハイマー病のような結果が生じると主張する神経科学者もいます。
人と人とが感情をやりとりすることで、愛情ホルモンとでも言えるオキシトシンが盛んに分泌されます。
それが子供の成長に影響すると言われています。
かつて、孤児院などで育った子供が成長が遅く受け身になりやすいと言われました。
食べ物や衣類など物品は豊富に与えられていても、愛情は与えることができなかったからでした。
脳の働きというものが人間を知る上でも大きく影響しているということなのでしょう。