小林製薬の紅麹サプリを食べて腎臓疾患となり死亡者まで出たという事件で、その原因物質が青カビがつくる「プベルル酸」という物質ではないかという話が、やや唐突に出てきましたが、今のところそれを疑うといったものはあまり出てこないようです。
私も一応微生物や生化学といった方面で昔は仕事をしていましたが、プベルル酸などと言う物質名は聞いたことがなかったので驚きました。
その件につき、専門家の話として「本当にプベルル酸なのか」ということが記事になっていました。
news.yahoo.co.jp製薬化学が専門の浜田信夫さんという方の話をもとにしているようです。
浜田さんが比較しているのはアフラトキシンです。
これはカビの作り出す猛毒の物質としてよく知られているものですが、アフリカなどで多くの被害者を出すことがあります。
ただし、その摂取量はかなり多く、というのも主食であるトウモロコシなどにカビが繁殖してアフラトキシンを作り出すものの、貧しくて他の食物を買うことができずにそのまま食べることがあるからということです。
そのため、アフラトキシンの摂取量もかなり多かったはずで、それで死亡事故となるのもうなずけます。
しかしプベルル酸が紅麹サプリに含まれていたとしてもそれほど多かったとは考えられません。
その程度の存在量でしかも一日3錠の摂取、それでこのような被害をもたらしたとするとアフラトキシンの数百倍もの毒性がなければならないという推測です。
さらに、そのようなプベルル酸生産を混入(コンタミネーション)したアオカビが作るとしてもその異常に気が付かないことは不自然だともしています。
ここは私の発酵・微生物培養経験から言っても全く同意見です。
固体培養はコンタミしやすいだろうことはうなずけますが、それでも生産物質が多量となる程度にコンタミしていてそれに気が付かないということはちょっと考えにくいところです。
しかも一度だけならまだしも、何ロットも続けて同じようにコンタミさせるということ自体あり得ないと言えるほどの事態です。
どうもこのプベルル酸説は早く幕引きを図ろうという意図のように感じます。
もしも紅麹自体の変性で何らかの毒性物質を生産するようになったとすると、事は小林製薬の生産体制だけに止まらず、紅麹というもの自体への疑惑に発展します。
小林製薬の生産技術に問題を限定して収めてしまおうということではないか。
そういった疑問が生じてきます。
プベルル酸自体は以前に抗マラリア薬として検討されており、化学合成で作り出すこともできるということですから、ある程度の量を製造し十分に動物実験等を実施すればよいだけのことにも思いますが。