ごく小さい生物の線虫の一種が癌患者の尿の臭いを好むという話は前から聞いていました。
それを癌患者のスクリーニングに使おうという動きもあり、それを受注して実施するという会社もその研究を行なってきた人が中心となって作られ、業務を開始しています。
(HIROTSU バイオサイエンス)
それに対しその実効性や精度などに大きな疑問があるということがあるサイト(News Picks)で連載で掲載されており、それは私も見て驚いていました。
ところがそれに対しヒロツ側が反論の文書を公開しました。
一見したところ科学的な議論を繰り広げて反駁しようという姿勢のように見えます。
HIROTSUバイオサイエンス | 線虫がん検査に関する世界最先端の線虫行動解析技術
それに対し、「ニセ医学と闘う内科医」NATROMさんはその科学的に見える文書の各所に怪しいところがあるということを指摘し、それをブログ「NATROMのブログ」に掲載していました。
natrom.hatenablog.comNATROMさんはこれまでもこういった検査に対しては慎重な姿勢を取ることを強調していましたが、企業化し安くはない価格で受注するという方向性にはかなり疑問を持っているようです。
上記のHIROTSUバイオサイエンス社のサイトの中にある「一部メディアの報道について」というプレスリリースには多くの解説が施されていますが、NATROMさんは多くの疑問点があると感じています。
その中でも「神経芽腫マススクリーニング」に言及してある部分について細かく解説しています。
神経芽腫とは神経細胞の一部ががん化する小児がんの一種で、それを乳児の尿を検査することでスクリーニングすることができるとしたのが神経芽腫マススクリーニングでした。
1985年から実施されましたが、2003年から休止(事実上中止)されています。
この検査は尿を使うということでHIROTSUの線虫がん検査とも通じるところがあるからか、上記のHIROTSUのプレスリリースでも言及されています。
そこで、会社側は神経芽腫マススクリーニングは有効であると専門家は考えている。また2003年にその全国的実施が休止したのも過剰診断が理由だったとしていますが、NATROMさんはそのいずれも誤りだとしています。
神経芽腫マススクリーニングで潜在的な患者が検出されるかどうかというのは実際にはこのスクリーニングの有効性と直接結びつくものではありません。
それによりこの小児ガンで死亡する患者を減らすことができなければ有効ではないということです。
この点について多くの研究論文が発表されていますが、有効であるというものも無効であるというものもあるようです。
ただし有効であるとした論文の研究手法には問題があるとしています。
HIROTSU社側がこの問題にこだわるのも、自社の線虫がん検査の手法と重なる部分が多いからでしょう。
もうかなりの数の検査を受注して実施しているようですが、それで陽性と診断されることでその後大変な精密検査に追い込まれている人も多いようです。
それで何も無ければ良かったねでは済まないような状況で、ガンを早期発見すれば何よりとばかりも言えないのでしょう。
頭書のHIROTSU社糾弾の記事は誰でも分かりやすいようなものでしたが、NATOROMさんの解説はさすがに専門家で隙のない議論を多くの文献を挙げながら展開していました。
HIROTSU社もこのような指摘に応えられるのでしょうか。