爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ねころんで読める ワクチン」笠井正志著

日本ではどうもワクチンというものが人気がないようですが、新型コロナウイルス感染ではそれが大きな存在となってしまいました。

しかしどうやらワクチンについて正確な知識がないという点では医療従事者の多くもそのようで、コロナワクチン接種に当たっては患者さんたちから尋ねられて困ったということもあったのかもしれません。

そんなわけで、小児感染症が専門ということでワクチンについても詳しい著者が、医療者が「ねころんで」も読めるようにやさしく解説したものです。

ある程度の知識があれば医療者以外が読んでもだいたい分かるように書いてあります。

 

予防接種とワクチンの違いといったごく基本的なところから、予防接種の意義、ワクチンはなぜ効くかなど、まあ医療者なら知っておいて欲しいという簡単なところから始まります。

しかし新型コロナウイルスワクチンで登場したmRNAワクチンというのはさすがに新顔ですからあまり知られていないことでしょう。

スパイクタンパク質をターゲットに免疫誘導させるもので、どちらかというと不活化ワクチンに似ているということですが、その後に書いてあったたとえ話が面白かった。

「免疫をつけること」を「新しい曲を覚えること」だとしたら、「その曲をライブで聞く=生ワクチン」「その曲をCDやYoutubeで聞く=不活化ワクチン」そして「その曲の楽譜を覚える=mRNAワクチン」だそうです。

 

日本ではほとんど筋肉注射が行われなかったのですが、新型コロナウイルスワクチンは筋肉注射でした。

世界的には筋肉注射の方が標準になっているようです。

1960年代に抗菌薬や解熱薬を筋肉注射して大腿四頭筋に筋拘縮症が起きたため学会がほぼ禁止としたようです。

筋注の方が免疫学的応答が良いということです。

 

ワクチン接種のためアナフィラキシーショックが起きるというのが問題となりました。

危険性のある患者は接種を避けるというのが必要なのですが、それでも皆無にはできず、起きた場合の対処を十分に訓練しておくことが接種者としては当然のことだそうです。

アナフィラキシーショックに対処できない」のは予防接種をしてはいけない施設だと厳しい意見でした。

 

医療従事者の中にもワクチン接種は嫌という人がいたようですが、著者の意見ではいかなる予防接種も強制されることはないのですが、やはり打っておいた方が良いようです。

医療機関には感染者が多数やってきますし、医療機関にかかる患者の中には免疫不全者がかなり居ることがあるということからも、やはり医療者はワクチン接種をすべきでしょう。

 

接種後の痛みが出たことで問題となり接種する人が激減したHPVワクチンですが、これで子宮頸がんなどが減らせることは確かです。

しかし著者の意見では、この感染というのは被害を受けるのは女性ですが、感染を引き起こすのは男性の責任でもあり、女性だけがワクチン接種というのは少しおかしいということです。

男性は適応がなく打つなら全額自前でしょうが、国民全員が考えるべきなのでしょう。

 

医療者だけでなく、一般人でも知っておいた方が良い内容かと思いました。