爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「大獄 西郷青嵐賦」葉室麟著

小説はあまり読まないのですが、先日久しぶりに会った旧友がえらく推薦していたので試しに読んでみました。

 

葉室麟さんの大獄は西郷隆盛の前半生をかなり史実に忠実に書いているものと見受けました。

こういった時代小説では歴史の真実がある一方で劇的なところに着目しそこを少しだけ脚色するところが作者の腕の見せ所といったものでしょう。

その意味ではこの作品はかなり上手に料理していると言えるかもしれません。

 

西郷隆盛の青春時代から、島津斉彬に仕えて全国に飛躍する時代、そして斉彬亡き後の不遇時代、さらに奄美大島での生活から再び戻るまでを描写しており、徳川将軍の跡継ぎを巡る紀州派と一橋派の抗争、そしてその後の安政の大獄が中心となります。

薩摩、水戸、福井など一橋派の人々と紀州派の井伊直弼などとは描き方がかなり異なり、井伊直弼一派はそうとうな悪役とされていますが、実際はそこまで差がないのではとも思います。

その辺は仕方ないところでしょうか。

 

薩摩の人々の言葉は語尾だけかもしれませんが、かなり薩摩弁を意識した描き方となっており多くの日本人にとっては少し抵抗があるのではと心配します。

私は大丈夫ですが。