本書初版が出版されたのは東日本大震災の3か月前、それに書いたことが現実となったことに大きなショックを受けたそうです。
それからは政府の会議や調査会に参加しました。
今後も南海トラフ地震などで大きな津波被害が起きる危険性が強いため、初版に大きく手を加えてこの増補版としたそうです。
序章には「安全な津波はない」として津波の恐ろしさを強調しています。
海の波は誰でも見たことがあるのでしょうが、その波と津波との違いを理解している人は少ないようです。
そのため50cmの津波と言われてもそれほど怖がらないのですが、津波であればそれでも危険な場合があります。
第1章も続けて「津波は恐ろしい」というテーマで解説を続けていきます。
50cmの津波でも被害が出るというのは、津波は速い流速で襲ってくることがあるからです。
高さは50cmであってもその流速が毎秒2mであればもはや立ってはいられません。
しかもその津波は海底から巻き上げてきた砂や砂利を含んでいます。
そこで転倒して一緒に砂浜を引きずられてしまえば大やけどを負うことがあります。
1998年のパプアニューギニアの津波被害の場合は骨折者より圧倒的に火傷を負った人が多かったそうです。
我が国の津波警報では、高さが2mを越える場合に津波警報、3mを越える予想の場合に大津波警報が発せられます。
これには津波高さと死亡率の関係をまとめたデータがあり、2mを越えると急激に犠牲者の比率が高まるということです。
その被害を防ぐには高台に逃れるしかありません。
津波の怖さというのは被害を受けた人が語り継がなければ忘れられます。
しかし日本ではこれまで津波被害を啓発する施設というものがあまり作られていませんでした。
特に子供たちにその情報を伝えることが被害軽減につながるのでしょう。