爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

いわゆる「脱炭素化」技術のどこがおかしいのか。 その1

気候変動を引き起こす二酸化炭素温暖化を防ぐためと称して「脱炭素化技術」というものがあれこれと開発されています。

しかしそのほとんどは根本的な理屈が合わないものや、全く実用化不可能としか言えないものなどです。

このブログでは、そういったことをあまり詳しく説明しないまま「問題外」といった口調で切り捨ててしまっている傾向があるかもしれません。

あまりにもあほらしく感じてあえて取り上げることすら不要とも思っているからですが、詳しくご存知でない方にとっては少し不親切とも見えるかもしれません。

 

そこで、この辺で現在の「いわゆる脱炭素化技術」のどこがおかしいのか、簡単にまとめてみようと思います。

これらの技術としては大別すると次のようになります。

なお、分類は便宜的なもので見方によっては別の分け方もあるかもしれません。

また水素など重複して現れるものもあります。

 

1,発電などエネルギー生成関連

 1-1 太陽光発電

 1-2 風力発電(陸上)

 1-3 風力発電海上

 1-4 地熱発電

 1-5 バイオマス発電

 1-6 蓄電池

2,移動手段

 2-1 電動自動車(蓄電池を積んだもの)

 2-2 水素燃料電池

 2-3 水素エンジン車

3,二酸化炭素削減が主目的のもの

 3-1 水素

 3-2 アンモニア

 3-3 二酸化炭素地中貯留

 3-4 合成燃料

 

それでは始めましょう。

 

1.発電などエネルギー生成関連

1-1太陽光発電

 電力を得る目的で石炭などの火力発電に代わるものとしてすでに大幅に実施されています。

しかし多くの欠点がありもしもこの普及を強引に進めればおそらく大変な社会影響があるでしょう。

 出力としての電力の不安定さ、昼間の晴天時しか発電できないなどの実用上の問題点も大きいものです。

 しかし最大の問題点は、その装置製造に多大な資材投入とエネルギー投入が必要であることです。

 投入エネルギーの大きさに比べ出力としての電力量が小さいことは間違いなく、そのために生成する電力の価格も高くなります。

また必要な資材(リチウム、アルミ、ガラス、鉄等々)の量が莫大なものであるのも問題であり、その確保が他の産業を圧迫するのも確かですし、それ以上に問題となるのが発電装置が寿命を迎えた時の廃棄物処理です。

このままいけば大量の廃装置が世界中にあふれることになります。

 

1ー2風力発電(陸上)

 これも実用化されて多くのものが設置されています。

この発生する電力も不安定であり品質の低いものです。

さらに日本では無風の時が多く、そして台風や冬の季節風のように強風の時は装置破壊の危険性もあるなど、安定した風の吹く環境は少ないものです。

また、運転時の低周波騒音の発生、鳥類が羽根にぶつかって死亡することが多いなどの環境影響もあります。

 風力発電でも建設のための資材と投入エネルギーが出力エネルギーに比べて大きいのは問題となります。

特に巨大風車ではその保持するための塔も巨大、羽根も巨大となりその製造のための資材とエネルギーはさらに大きくなります。

また巨大風車では故障時の修理も簡単ではありません。

簡単に取り換えるというわけにもいかず、そのまま廃棄ということになる可能性もあります。

風車の老朽化での廃棄は太陽光発電の場合よりさらに問題です。

ほとんど再利用もできないもので、どうやって処理するのかも不明でしょう。

すでに風車の廃棄は始まっていますがその解体も相当な手間と費用がかかるようで、廃墟のように使われなくなった風車が立ち並ぶ姿が見えるようです。

 

1-3 風力発電海上

 陸上では土地の確保や騒音の問題などで設置場所の確保が難しいということで、海上での風力発電が進められています。

これには浅い海の海底に基礎を固定する方式と、船のような浮体式のものとがあります。

いずれにせよ陸上設置の場合よりその固定部分にさらに多くの資材が必要となりますので、投入エネルギー、資材の問題が大きくなります。

浮体式の場合はほとんど貨物船などを建設すると同様の船体を作るわけですが、貨物船などではそれを用いて多くの貨物などを運ぶという大きな付加価値を得ることができますが、風力発電ではわずかな電力が得られるのみです。

このようなものに経済価値があるとは思えないのですが、どういう計算をしているのでしょう。

 

1-4 地熱発電

 日本は火山国でありということは同時に温泉国でもあるのですが、その光景が人々の印象にも残っているためか、地熱の利用というものに対する幻想が大きいようです。

地球はその中心では高温であるのは間違いないのですが、それが地表にまで現れるのは火山周辺しかありません。

温泉は日本各地にありますが、その温度は様々で日本では温泉法で25℃以上とされていますが、ぎりぎりのところから100℃以上で噴出するところまでいろいろです。

高温の温泉が噴出するところはそれほど多いわけではありません。

そのような高温温泉ではすでに地熱発電の試験運用が始まっているところもありますが、その他の地域ではほとんど無理でしょう。

できるところではやってもらうのが良いのでしょうが、その適地は非常に少ないものでしょう。

入浴するにもぬるいような温泉程度の熱量で発電ができるわけもありません。

なお、比較的低温で発電できるバイナリー方式というものもあるようです。

これは低温で気化するペンタンや代替フロンアンモニア水などを低温の温泉(とはいっても80℃以上とか)で加熱し気化させそれを使ってタービンを回し循環させるというもののようです。

複雑な機構でしかも有機溶剤使用、ちょっと危険な気もします。

 

1-5 バイオマス発電

 これも資源量云々という方向性ではなく、例の「二酸化炭素を発生しない」という意味合いで導入されていることが多いのでしょう。

燃料としては植物であれば何でも良いのでしょうが、水分を多く含むものは不効率ですので木材から作られたバイオチップというものが使われることが多いようです。

しかし木材はそこまで成長するのに数十年もたっているものですが、それを一瞬の発電のために切り倒すことが許されるはずもありません。

日本では木材の経済的な使用ができなくなっており、必要材はほとんど輸入しているため、国内の森林には多くの木が生えていることから、これを有効利用したいという考えなのでしょうが、潜在的に多くの利用価値がある貴重な木材をただ発電のために使ってしまって良いはずもありません。

多くの電力をもしもバイオマス発電で賄おうとしていけば日本中の森林があっという間になくなってしまうことなど当然すぎるほどのものです。

なお、森林は二酸化炭素を吸収して成長するため、森林の造成を二酸化炭素排出をカバーするというマヤカシのような計算が行われています。

その森林を伐採して燃やしてしまえばまた元の木阿弥なのですが。

 

1-6 蓄電池

 電力関係ということで蓄電池はここで触れますが、もちろん電動自動車などにも使われるものであり、その需要は莫大なものです。

太陽光発電などは出力が不安定ということでいったん蓄電池に貯めてから払い出す方式が必要と言われています。

そのように多くの需要があるものの、かなりの資源を投入しなければならず価格も高いという欠点があります。

蓄電池の製造法は盛んに研究されていますが、現在は鉛電池、リチウムイオン電池NAS電池、ニッケル水素電池といったものが実用化されている主力のものです。

鉛、ニッケルは鉱物資源としては多く使われていますが、それでも限りある資源です。

リチウムは元素として存在量は多いのですが精製するのにエネルギーと費用がかかるようです。

NAS電池はナトリウムとアルミナということですので比較的余裕があるのでしょうか。

いずれにせよ大量に使用することとなった場合にはそれを作るための資源の量で制約がかかるものと思います。

またその寿命もそれほど長いものではなく、廃棄する場合の処理法や廃棄物も大きな問題となる可能性が強いものです。

このようなものを大量に使用するという社会体制がまだ整っているとは到底言えない状態でしょう。

 

簡単に説明するつもりでしたが、やはりかなり長くなるので数回に分けます。(つづく)