爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

いわゆる「脱炭素化」技術のどこがおかしいのか。 その3

ここがいわゆる「脱炭素化技術」の矛盾がもっとも激しいところです。

あまりにも二酸化炭素温暖化の危害を強調し過ぎたことにより、「二酸化炭素を排出しなければ良い」という方向に短絡してしまい、その裏でエネルギーや金属資源などを無駄使いすることについての合理的な思考ができなくなってしまいました。

さらに「運転時に二酸化炭素を出さなければ良い」という観念が広まり、その物質の製造時に化石燃料を使ったり、多くのエネルギーを費やすといった非合理な状態にも目を向けないというおかしな状況となっています。

 

 

3,二酸化炭素削減が主目的のもの

 

3-1 水素

 これが一番広まっているようです。

水素自体はエネルギーキャリアとしての使用はすでにロケット燃料でも行われておりおかしなものではないのですが、それを「脱炭素化」に結びつけた場合には矛盾が多すぎます。

今でも一応、「グリーン水素」だのブラックだブルーだと変な呼び方が横行していますが、そこには水素の製造方法が関わってきます。

以下のサイトが詳しく説明されています。

spectra.mhi.comブラックは石炭から水素を作り、グレーは天然ガスから、グリーンが水の電気分解だとか。

そして現在の状況ではブラックが20%、グレーが60%だそうです。

「脱炭素化」しなければいけないのにその原料として石炭や天然ガスを使うなどと言うのは全く矛盾だらけで、詐欺と言ってもいいようなものです。(水素を別用途に使う場合は何をしても構いません。あくまでも脱炭素という目標で行われる場合のみです)

そしてグリーンならよいかと言っても、その電力が火力発電であればこれも矛盾しています。

そこで本当のグリーン水素というのが出てくるのですが、それが太陽光発電風力発電という「再エネ電力」で作られるものだということになっています。

しかし1でも論じたようにそのような「再エネ発電」自体がほとんど自立できない技術であり、真のコストを計算すれば非常に高いものです。

その電力を使ってさらにエネルギーロスの多い電気分解などをすれば非常に高価なものとなるでしょう。

結局は理想ばかりに走り現実と乖離した砂上の楼閣と言うべきものでしかありません。

 

水素自体がこのようなものですから、これを使う水素燃料電池車や水素エンジン車といったものも同様に現実性はありません。

 

なお、「地下には水素が無尽蔵に埋まっている」などという説も紹介されています。

これがもし真実ならもうエネルギー問題は解決とでも言わんばかりのものです。

しかしこれにも「資源は集積していなければ使いようがない」という原則を忘れています。

石油や石炭が貴重な資源なのは、それが限られた地域に集積していて採掘が容易だということが大きな要素です。

地下に水素が遊離状態で存在するというのも怪しい話ですが、たとえそれが真実でもパイプを突っ込めば大量に噴き出してくる状態でなければ使用不可でしょう。

エネルギー供給に不安が募る時代になるとこういった話が次々と現れます。

メタンハイドレートもその一種でしょう。

 

3-2 アンモニア

アンモニアは様々な化学工業の原料としても重要であり、化学肥料では不可欠の物質です。

しかしこれが火力発電の燃料にということは想像もできませんでした。

アンモニア(NH3)は発熱量が小さくさらに最大の問題点はその構造からも明らかなように燃焼させると窒素酸化物が生成することです。

石炭などに微量に含まれる窒素化合物が燃焼してできる窒素酸化物程度でも大気汚染の原因となったことは記憶に新しいものです。

それを主成分が窒素などというアンモニアを燃やして大丈夫なんでしょうか。

こんなものが迷い出てきたのもすべて「燃焼時に二酸化炭素を出さない」という呪縛のせいです。

確かにアンモニアは燃やしても窒素酸化物と水になるだけです。

他には何の利点もないようですが。

 

3-3 二酸化炭素地中貯留

これは物質ではなく技術のシステムです。

二酸化炭素を排出するのは地中に埋もれていた化石燃料を掘り出して燃焼させたからだということで、出てきた二酸化炭素を地中に戻せばよいといった発想でしょうか。

しかしその技術の至る所に疑問が山積です。

まず地中にそのような都合の良い場所があるのか。

天然ガスが存在しているのだから気体状の物質でも保持できるということでしょう。

その可能性はあると思いますが、そのような適地はごくわずかしかないというのが本当のところのように思います。

ほとんどのところではガス状物質の保持はできず、そこでは拡散してしまい、条件の合ったところだけガスとして残ったということでしょう。

さらにそこに高濃度二酸化炭素を封入するというシステム自体が非常に無駄が多いもののように思います。

限られた適地に効果があるほどに二酸化炭素を封入するためには高濃度にしなければなりません。

それがどれほど高度な技術であり、運営するために多くの装置とエネルギーを必要とするか。

結局は機械屋を儲けさせるだけのようです。(これはこういった技術すべてに付きまといます)

 

 

3-4 合成燃料

化石燃料は炭素と水素を主体とする化合物であり、その燃焼を使って発電や内燃機関運転を行っているのですが、その結果その炭素と水素は二酸化炭素と水になります。

この反応を逆に進め、二酸化炭素と水素から炭化水素を作り出そうといのがこの合成燃料というものです。

www.enecho.meti.go.jpこんなものが成り立てば永久機関となるでしょう。

それがそうならないのは反応に伴いエネルギーの移動が起きるからです。

 

化石燃料の燃焼に伴いエネルギーが発生します。

CmHn+mnO2 → mCO2+nH2O + H(cal)

この反応を逆に進めるためにはエネルギーを加えなければなりません。

上記の反応式を逆の矢印で進めることになります。

つまりエネルギー的にはロスがないと仮定しても何にも生み出さないことになります。

(発生したエネルギーも使えないことになるから)

ロスのない工程などありませんから、これは必ずエネルギー的に損失となります。

 

つまり合成燃料を作るためのエネルギーというものをどこかから持ってこなければ反応は進みません。

それを再エネで賄うとでも言うのでしょうか。

限られた再エネ電力がさらに枯渇しそうです。

 

他にも次々と胡散臭い話が飛び出してきます。

また目についたら取り上げていきたいと思います。