AI学者の新井紀子さんという方の書いた本は衝撃的な内容でした。
sohujojo.hatenablog.com新井さんはコンピュータが大学入試を突破できるかというプロジェクトを主宰しましたが、選択式の私立大学などの問題はある程度できるとしても記述式の国立大特に東京大の入試問題は不可能という結論を導きました。
その過程で、もしかしたら人間もその問題が解けないのではと考えさらに中高生を対象として読解力調査を実施することとし、リーディングスキルテスト(RST)というものも自力で開発し、協力者を募ってテストを実施したそうです。
その結果、多くの中高生はこの基礎的読解力というものが不足しており、それは学校の教科書の理解が内容ではなく文章読解ができないために達成できないという程度のものであるということでした。
新井さんの結論は、このような基礎的読解力が不足した人々はAIに仕事を奪われるというものです。
高度な判断業務はAIにはできないことであり、それすらAIに奪われるという多くの人の予測は行き過ぎと見ていますが、「実際にはそのような業務ができない人間が多数」であり、「そういった人間ができる業務はAIに簡単に奪われる」ということでした。
新井さんは教育とは関係がなく、そういった生徒をどうすればよいかという方向には進んでいません。
しかし教育者ではなかったとはいえ、家庭教師の経験もある私にとってはそこが気になるところです。
私のかつての家庭教師の教え子はさほど成績の良い子ばかりではなく、逆に落ちこぼれしかけたような子の方が多かったのですが、そういえば簡単な問題でも問題の意味を読み取れないということがあったように感じていました。
そもそも、こういったレベルの生徒は増えているのでしょうか、減っているのでしょうか。
新井さんのテストはさほど昔から行われているものではなく、時間的な変化は不明です。
ゲームやネットに時間を費やす割合が増えて読解力も低下したという推測も可能ですが、それを言うなら少し昔にもテレビばかり、マンガばかりという子供が多かったとも言えます。
どうもこういった基礎的読解力不足の生徒の割合は大して変化していないのではないか。
そしてそれから推測すれば、読解力不足の生徒たちはそのまま大人になり社会人として存在しているのではないか。
つまり子供から大人まで、そして老人まで含め多くの人々が読解力不足なのではないかというのが現況なのかもしれません。
さて、それではこのような読解力不足には何か対策はあるのか。
家庭環境が問題か、教育現場が問題か。
何らかの方策で少しでも向上させる手はあるのか。
新井さんはRSTのテストを作る上で読解力というものの分析を行いました。
「係り受け」「照応」「同義文判定」「推論」「イメージ同定」「具体例同定」
という要素がその骨格をなしており、特に同義文判定以降はAIでは困難な人間のみが行うことができる読解力要素であると推論づけています。
具体的な内容までは詳述されていませんでしたが、想像してみると、やはりかなり高度な心理的動きを必要とするのではないかと考えられます。
その能力を向上させるための訓練ということが可能であれば教育現場で実施できるかもしれません。
生来の能力であるならその向上は困難です。
さてどちらでしょう。
私はある程度は向上可能と見ます。
ただし、訓練方法というのは確立がかなり難しいようにも感じます。
よく目にする「劣等生がぐんぐん成績向上」というのはここに秘密があるのかもしれません。
基礎的読解力がなかったために授業も教科書も理解不能だったのが、そこさえ改善すればどんどんと成績アップというのはありそうです。
どうやら読解力、ひいては知性、業務遂行能力、等々はここに障壁と関門がありそうです。
まだまだ考えて見る必要がありそうです。
(考えがまとまったらまた続く)