2013年に「和食 日本人の伝統的な食文化」が世界の無形文化遺産としてユネスコに登録されました。
本書著者の永山さんは長年日本の食文化史を研究し、みずから「長寿食研究所」というものを設立し活動しています。
これまでも食にまつわることわざなどを蒐集しまとめた本も作っているそうですが、さらに書き加え今こそ「和食が世界のヘルシーな理想食」となりつつあるということを示したいということです。
昔から食に関する言い習わしというものは数多く、中には迷信に過ぎないものも多いのではないかと思いますが、その中から現代では食品成分の働きとして解明されたものもあり、そういったものを中心にまとめたのでしょうか。
化学的な成分名称を取り上げそれでことわざを解説もしていますが、良いことばかりを挙げているようにも見えます。
食品成分のうち、良い物だけを取り上げて食品全体が魔法の品のように表現することをフードファディズムと呼ぶのですが、この本全体にそういった雰囲気が感じられます。
なお、和食の最大の欠点は塩分が多すぎることであり、それが日本人の高血圧症の多さにもつながっているのですが、それについては何の記載もありません。
味噌の栄養を持ち上げるのも良いのですが、そればかりで必要な成分を取ろうとするとそれ以上に塩分を摂取することになります。
そういった配慮はあまり見られないようです。
和食の良い点というものもかなり存在するのは事実でしょうが、まだまだ改善する点は多数あるのではないかと思います。
ただし、現状はそれすら忘れて不健康な食生活に陥っている人が多いのも間違いありません。
それを正すのに伝統的な和食へと回帰するだけで良いのか、その方向性には問題もありそうです。